英空母「クイーンエリザベス」が出港 訓練を経て東アジアへ航行

2021/05/02
更新: 2021/05/02

5月1日、イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」は打撃群を構成するほかの艦船とともに、母港のポーツマス港から出航した。極東アジアへの遠洋航海を前に、北海で2週間にわたる訓練を行う。年内には日本に寄港し、自衛隊と共同訓練を行う予定だ。イギリス海軍が公式に発表した。

英海軍の発表によると、空母クイーン・エリザベスは北海で行われる英国防省主導の年次国際演習「ジョイント・ウォリアー(Joint Warrior)」に参加し、練度の確認を行う。5月8日から12日間にわたる同演習では、NATO加盟国を中心に10カ国の軍から艦船31隻、潜水艦3隻、航空機150機、軍人約1万3400人が参加する。

クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群は、駆逐艦2隻やフリゲート艦2隻、潜水艦などあわせて9隻の艦船から構成されている。

艦載機については、英空軍の第617飛行隊に所属するF-35Bステルス戦闘機18機のほか、米海兵隊第211海兵戦闘攻撃飛行隊のF-35Bステルス戦闘機を10機艦載する。英空軍の第617飛行隊は「ダムバスターズ」の愛称を持つ由緒ある部隊であり、同国で初めてF-35BライトニングIIを配備した。

空母クイーン・エリザベスにとって初となる本格的な航海では、日本や韓国、シンガポールなどに寄港するほか、日本の自衛隊と合同演習を行う予定だ。

拡張を続ける中国共産党政権に英国は警戒している。英政府が3月に発表した安全保障や外交の中長期計画に関する「安保・国防・外交政策統合レビュー」のなかでは、拡張主義を掲げる中国共産党政権が力を背景にインド太平洋地域での影響力の拡大が重要視されている。

このような現状に対し、イギリス政府は同地域でのプレゼンスを高めていく考えを示している。イギリスのベン・ウォレス国防相は4月下旬、同国の空母打撃群が最後にインド太平洋地域に派遣されたのは20年前であることに言及。同地域における英国のプレゼンスの低下を指摘した。そしてクイーン・エリザベス空母打撃群を派遣することで、プレゼンスを取り戻すと発言した。

「距離の遠近を問わず、空母打撃群は同盟国そして敵対国に対し、英国が国際システムの形成において自国の役割を引き続き果たす意志があるというメッセージを送るだろう」とウォレス氏は述べた。

英空母がアジアに来航することをめぐっては、香港で人権弾圧を強め台湾に高圧的な態度をとる中国共産党政権をけん制する意味のほか、日本との協働も目的の一つとされている。英海軍の空母と自衛隊の護衛艦はいずれもF-35B戦闘機を搭載するため、運用のノウハウを共有できるとの見方がある。

また、2021年元旦には日英包括的経済連携協定(EPA)が発足し、英国との経済的つながりが強化されたほか、2013年のフィリピン台風救援活動をきっかけとして日英物品役務相互提供協定が締結され、海上自衛隊による英海軍連絡官の受け入れが継続的に行われるようになった。一部報道によれば、米英豪加NZの5カ国からなる情報共有網「ファイブ・アイズ」に日本が参加するとの議論も行われている。

(王文亮)