10月中旬、中国習近平主席が南アジア諸国を訪問した。チベット亡命者を多数受け入れるネパールでは、習氏の滞在期間中に、両国の容疑者引き渡し条約を締結する予定だとみられていたが、ネパール政府は合意を見送った。
ヒマラヤ山脈南の麓の国ネパールは、中国チベット自治区と長い国境線を有している。ネパールには、中国当局の弾圧から逃れてきた2万人のチベット人が住んでおり、ダライ・ラマ14世に会うために毎年数千人が往来する。中国政府は、ダライ・ラマ14世および同氏を精神指導者とするチベット亡命者を「分断主義」と糾弾して、亡命者に協力する関係国に圧力を加えている。
現地紙カトマンズ・ポストによると、習近平氏の来日前、警察は現地のチベット人を十数人拘束した。同紙はチベット人活動家の話として「すべての市民には政治的な意見を持つ権利がある。正しい立場を取らない場合、ネパール政府の外交に異議を申し立てることも可能だ」と伝えた。
ネパール政府は今回の習氏来訪期間、18の貿易協定や刑事捜査協力協定を締結した。しかし、亡命チベット人の中国送致を見越した「容疑者引き渡し条約」のほか、防衛協定、港湾へのアクセスの特別開放、新しく建設する国会議事堂の建設費の支援案、軍と警察を育成する防衛大学校への中国支援、国境道路建設に関する提案などを見送った。
インド紙エコノミック・タイムズによると、ネパールのバブラム前首相は、主権侵害に繋がる恐れがある提案や、インドと同様の協定の議論が進行中である提案は、政府に中国と署名しないよう促したという。
インドでモディ首相との会談を終えた後、習近平主席はネパールを訪れ、首都カトマンズでオリ首相と会談した。習氏は共同会見で「中国を分裂させようとする企ては妄想とみなされ、最後は失敗する」と強い表現「粉骨砕身」を使い、チベット亡命者をけん制した。中国主席のネパール訪問は23年ぶり。同日、今後2年間でネパールの開発援助のために560億ルピー(約530億円)を支援すると発表した。
ネパールは2017年、中国共産党政府主導の経済構想・一帯一路に参加することで合意した。インディア・トゥデイ紙によると、両国はチベット自治区からカトマンズまで繋ぐ鉄道の建設計画を進めている。オリ首相の最高側近によれば、計画の現地調査は中国の専門家によって行われている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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