米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は1月26日、米中対立が深まり新時代の軍事設備の競争が進行中だと主張した。この軍備とは、ミサイルなどの伝統的な兵器ではなく、5G網の支配を指す。報道によると、米政府は5G網をめぐる競争について「ゼロサムゲーム」、つまり勝者は一人しかなく、敗者が淘汰される戦いだと確信しているという。
NYTは政府高官、諜報当局、専門家および通信企業幹部にインタビューした。
5Gは電気普及を上回るインパクトになる、米中両国の確信
次世代通信規格5Gへの技術移行は、進化ではなく革命と例えられている。複数の専門家は、電気が社会にもたらした影響を上回ると語った。
NYTのインタビューに応えた米政府高官は、現代で核兵器を除く、最も致命的な武器となるのは電子ネットワークの制御であると述べた。さらに、この点について米国も中国の上層部も確信しており、5Gの主導権を握る国は経済、情報、軍事において他を圧すると認識している。
同紙によれば、米政府は重要な通信ネットワークに中国製品の使用を禁止する行政命令を起草しているという。
現在、日本を含め通信強化を図る多くの国が5Gインフラ建設の入札を準備している。国家の基幹インフラに影響を及ぼす巨大な契約だ。米国は、向こう6カ月が重要だと分析し、同盟国に「包囲網」を狭めるよう協力を呼び掛ける。
1月中旬、英ジェレミー・ハント外相は訪米し、5G通信網に関する安全保障政策において歩調を合わせるようトランプ政権に求められた。フィナンシャル・タイムズによると外相の帰国後、英通信大手ボーダフォンは欧州の5G網でファーウェイ機器を採用しないと発表した。
さらに、米代表団は1月中にドイツを訪れ、北大西洋条約機構(NATO)は安価の中国製品を採用すれば安全に大きな代償を支払うことになると警告したという。ドイツ経済紙は17日、同国政府は5Gインフラ建設にあたり、ファーウェイの参入を排除する方針があると報じた。
ポーランド当局は11日、中国電子技術大手で人民解放軍と密接なかかわりを持つ企業ファーウェイ(華為科技、HUAWEI)の上級幹部・王偉晶と同国の元情報当局者をスパイ容疑で逮捕したと発表した。
複数の米国政府高官は匿名でNYTに対して、ポーランドの出来事は中国共産党政権がファーウェイを利用して他国でスパイ活動を展開する典型的な事例だと語った。
170カ国で事業展開するファーウェイ、評判回復の戦略
米国とその同盟国、そして世界に広がる同社に対する警戒感を払拭すべく、ファーウェイ社幹部のみならず中国共産党政府の外交幹部が先頭に立ってイメージアップ活動を展開している。
日経新聞は27日、カナダで逮捕され保釈中のファーウェイの孟晩舟・財務最高責任者(CFO)本人による寄稿文として、2018年9月シンガポール講演のスピーチ内容を全文掲載した。それによると、「ファーウェイは世界の上位100の大学と30カ国以上の国家研究機関の学者と緊密に協力している」と書いた。
ファーウェイの携帯部門CEOは24日、北京で開催された国際的な携帯電話と通信技術の会議で、米国による排除について「米国市場がなくても2019年はわが社が世界ナンバーワンになる」と豪語した。さらに、同社がヨーロッパ企業との18件の契約を含む30件の5G商用契約を取得していると発表した。
ファーウェイの任正非CEOは17日、中国国営中央テレビの番組で同社は現在、170カ国で事業を展開しており、欧米諸国がいずれ同社製品を購入することになると発言した。「わが社しかない製品は多数あるから」
英紙テレグラフ23日付は、劉暁明・駐英中国大使の署名記事で、「ファーウェイは濡れ衣を着せられ糾弾されている」と主張した。フィナンシャル・タイムスの取材に応じた、張明・駐EU大使は「誰かが安全保障(脅威)というでっち上げ作りに余念がないようだ」と暗に米国を批判した。
NYTによると、2018年7月にカナダのオタワで開かれた米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの諜報当局が協働するUKUSA協定加盟国(ファイブ・アイズ)の会議では、ファーウェイが主要議題となり、各国は排除方針を固めたという。
(編集・佐渡道世)
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