中国政府系メディア、米地方紙にトランプ批判広告掲載 選挙介入の恐れ

2018/09/26
更新: 2018/09/26

中国政府系英字紙・チャイナデイリーは23日、米アイオワ州の地元紙にトランプ大統領批判の広告記事を掲載した。米の外国代理人登録法(FARA)に基づいて、「外国の代理人」として登録されたチャイナデイリーによる米有権者向けの宣伝は、「選挙への外国介入」に当たる恐れがある。貿易摩擦で米中関係が対立するなか、専門家は「火に油を注ぐ愚行」だと批判した。

アイオワ州新聞大手のデモイン・レジスター紙は23日、「チャイナデイリーが執筆、広告費用を負担した」とのただし書き付きで4ページにおよぶ記事を掲載した。その大半は、トランプ大統領の貿易政策についての内容で、「馬鹿げた行動だ」と批判した。他に「中国は世界の良いお手本」を題とする記事や中国のカンフーなどの内容だった。

農業が盛んなアイオワ州の大豆生産量は全米1位を誇っている。中国は昨年、輸入した9554万トンの大豆のうち、約3割が米国産だ。中国当局は4月、トランプ政権の対中貿易制裁に対抗して、米国産大豆に対して25%の追加関税を課すと発表した。米政府は7月下旬、貿易戦の影響を受ける農家に対して、最大120億ドル(約1兆3440億円)の支援を実施すると公表した。

中国当局がアイオワ州の有権者を対象に広告を掲載したのは、11月の中間選挙が背景にあることが原因だとみられる。2016年の大統領選で、アイオワ州など中西部農民はトランプ氏の支持母体でもあった。

アイオワ州は、米国のなかでも共和党と民主党が互角の戦いを展開する「スイング・ステート」として知られている。選挙のたびに勝利政党が変わるため、その動きが常に注目されている。11月の中間選挙でも再び激しい攻防戦が予想される。

中国メディアは今年7月、米議会専門紙ロール・コールにも同様の宣伝記事を載せた。国営テレビ局中国中央電視CCTVの英語放送チャンネルCGTNも7月にウェブサイトで、米中貿易戦争が「アメリカの農民の利益を損なった」とトランプ批判のアニメを掲載した。今回の記事は特定の州の地元紙に掲載され、より有権者を意識したものとなった。トランプ支持層を切り崩したい中国当局の狙いがあるとみられる。

大紀元コメンテーターの唐浩氏は、チャイナデイリーの広告記事は、選挙介入の行為にあたると指摘した。

トランプ大統領は今月12日、外国の政府や企業、個人が米国の選挙に干渉・介入したと判断された場合、制裁措置を科するとの大統領令に署名した。対象となれば米国内の資産が凍結され、米金融機関へのアクセスも制限されるという。

米主要メディアの報道によると、同大統領令は選挙介入に関して、投票機や有権者情報登録データベースを含む選挙インフラへのハッキング行為や、プロパガンダ、虚偽情報の流布など選挙の行方に影響を与える行為と定義している。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は8月19日、米ABCニュースに対して、米国の選挙に介入する恐れのある国として、ロシアのほかに「中国、北朝鮮、イラン」と発言した。

唐氏は、今回の宣伝記事によって、米国民が中国の浸透工作をより明確に認識し、むしろ今後トランプ政権の対中制裁措置の展開に有利だとの見方を示した。「火に油を注ぐ愚行だ」と切り捨てた。

現在、チャイナデイリー英字版のほかに、中国政府系メディアの人民日報海外版と新民晩報が米国で「外国の代理人」として登録されている。

(翻訳編集・張哲)