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トランプ大統領とFRBの対立

2025/04/28
更新: 2025/04/28

国の通貨管理におけるFRB(連邦準備制度理事会)の能力に疑問を投げかけた民衆運動は、数十年にわたって拡大しており、数え切れないほどの書籍や記事が出版され、何かが根本的に間違っていることを示す証拠が積み重なっている。

トランプ政権は、FRBに対して公然と批判を行い、(今はやや弱まっているが)さらには議長を解任するという脅しまでした。FRBは新たな時代に入った。もはや、FRBは「触れてはならない話題」ではなくなった。もうその時が来たということだ。

FRBは1913年に創設された。当時のアメリカの政治と知的文化を理解すれば、その発想も理解できるだろう。アメリカは過去数十年にわたり、照明、輸送、冶金、エネルギー、通信、そして航空における驚異的な技術革新を特徴とする驚異的な経済成長を経験した。これらすべてが一度に起こり、生活水準の劇的な向上をもたらした。

当時の大きな疑問は、「なぜこれらすべてが一度に起きたのか?」ということだった。自由、貿易、資本の蓄積に関しては各々の答えがある。より単純で、あまり洗練されてはいないものの分かりやすく、多くの有識者が支持していた説明は、「科学に裏打ちされた優れた工学のおかげ」というものだった。都市が空に浮かび上がり、飛行機が頭上を飛び、暗闇が光に変わると、技術者や科学者は栄光に浸った。

当時の支配的な価値観は、「資源、権限、優れた計画さえあれば、専門家は何でも解決できる」というものだった。銀行業についても同様だった。何十年にもわたって、銀行の破綻、景気循環、歪んだ投資シグナル、そして混乱を経験してきた。特に1907年の金融恐慌は、新たな制度の必要性を訴える口実となった。

解決策は、明白に思えた。最も優秀で、経験豊富で、「先見の明」を持つ人々を一つの部屋に集めて、ドイツやイギリスのような中央銀行を作ればいい。そうすれば、通貨、銀行業、経済運営に合理性、優れた技術、そして科学を導入できるだろう、という発想だった。

FRBは準政府機関として、また官民パートナーシップとして誕生しており、国内すべての銀行を決済システムの一部として招き入れる仕組みだった。政府は、銀行に公的債務の保証を条件に独占権を与え、そして専門家たちが責任を負い、通貨発行、金利、そして景気循環を管理する。

書類上では、すべてが順調に見えた。彼らは事業の安定を促進し、危機時にも銀行の営業を維持し、雇用創出を促進し、インフレを抑制するだろう。新しいシステムの構造は、完璧に見えた。州レベルで分権化されつつも、ニューヨーク、そして後にワシントンD.C.に集中化されて行った。何が問題になるというのだろうか?

致命的な欠陥は、FRBの恩人である連邦政府との関係にあった。FRBは、銀行カルテルを維持する代わりに、要請があれば即座に行動を起こす義務を負っていた。

事実上、政府は印刷機を手に入れたのであり、これはまさに破滅への処方箋だった。誰もそうは言わなかったが、まさにそれが意味するところだった。FRBは、金利を低く抑え、金融システムの流動性を維持し、銀行破綻を防ぎ、政府がどんなに突飛な政策を思い描いても、それを効果的に資金供給するよう、絶え間ない政治的圧力に直面することになったのだ。

こうしてFRBの最初の主要な任務が始まった。それは、後に第一次世界大戦と呼ばれることになるヨーロッパ紛争へのアメリカの介入資金だった。印刷機がフル稼働し、アメリカだけでなくヨーロッパ各国政府にとっても戦争を可能にした。

これが、最初の「中央銀行による戦争」だった。印刷の力を得た政府には、戦争を早期に終わらせる動機が薄れ、戦争を拡大させる誘惑が強まった。そのため、第一次世界大戦は「総力戦」となり、多くの国で民間人も徴兵され、全面的に巻き込まれることになった。

戦争後、米ドルも含む、多くの通貨が破壊された。これは、これから先に起こることの前兆だった。FRBは、景気循環を抑え、インフレを防ぐと約束していたが、現実はその真逆だった。それが何十年も続いた。根本的な理由は明らかだ。以前の制度は預金者のために機能していたが、新しい制度は主に政府とFRB自身のために動いていた。

100年以上が経った今、全体像ははっきりしている。ドルの購買力は壊滅的に落ちた。1913年の1ドルは、今では3セントの価値しかない。中世スペインの大インフレですら、ここまでの水準には達していなかった。

データ出典:連邦準備経済データ(FRED)、セントルイス連邦準備銀行/チャート作成:Jeffrey A. Tucker

FRBはその権限を乱用し、政府は、銀行制度と通貨制度を利用して、巨大で抑えがたい国家の成長と固定化を促してきた。

FRBの創設者たちは、このような結果をまったく予期していなかった。彼らは金融と銀行の熟練した専門家であり、投機狂乱の波から生じる周期的な危機を伴う分散型銀行システムの緊急事態よりも、自分たちの方がうまく対応できると確信していた。しかし、システムを完璧にしようとした結果、彼らはとてつもない混乱を生み出してしまったのだ。

問題はインフレだけではない。金利を中央集権的に操作することによって生まれる不安定さこそが深刻だ。景気循環はFRBの設立以来、より深刻化し、労働市場への影響はより深刻になった。

FRB以前は、構造的失業の問題について、真剣に議論する人はほとんどいなかった。やるべき仕事が常にあり、人にお金を払って頼むことができたからだ。FRBの創設、特に1929年以降は、失業が現代経済の慢性的な問題のひとつとして加わった。

リチャード・ニクソンがアメリカ合衆国を金本位制から離脱させ、ドルを世界通貨とする協定が結ばれて以来、FRBにはもう一つの特徴が明らかになった。ドルはあらゆる国際貿易の決済手段となり、世界中の政府は、ドル建て資産を喜んで保有した。貿易を研究する人なら誰でも知っている事実、最も強い通貨を持つ国は、生産国としても輸出国としても常に劣勢に立たされると言うだろうと。他の条件が同じであれば、自国通貨安によって、生産は他の国の方が有利になるからだ。

これには解決策がある。それは、国内の購買力を高め、貿易相手国のコスト構造が逆方向に動くにつれて、生産コストを下げ、貿易相手国のコストと同水準にすることである。これが決済の方法だ。

FRBはそうはしなかった。むしろ、ドルの地位を濫用し、福祉国家と軍事機構への資金供給を継続的に行うことを容​​認した。その結果、債務と赤字は永久に積み上がり、今や繁栄を根本的に脅かしている。金融危機の数は伝説的だ。

現在に話を一気に進めよう。ドナルド・トランプ大統領は、21世紀において最も率直に、そして的確に現状を見抜いた政治家として際立った。彼は、アメリカが中国の生産品を借金まみれで買い続けるだけの国である限り、長期的に繁栄できるはずがないと語った。アメリカは製造業国家としての地位を取り戻す必要があり、関税こそがその道だと彼は述べた。

金融市場は、彼の計画に冷ややかだった。当初、なぜそんなに懐疑的なのか理解できずにいたトランプ氏は、最終的に問題の本質はFRBそのものにあると判断した。彼はFRBに金利引き下げを要求したが、FRBは「それはリスクが高い」と反論した。FRBはひどいインフレを克服したばかりなのに、なぜ国は量的緩和をさらに実施して、再びインフレのリスクを負う必要があるのだろうか?

ジェローム・パウエル氏は良い点をいくつか指摘しているが、ここには、信頼性の欠如がある。FRBは前回の利上げにあまりに時間がかかりすぎた。前回のトランプ大統領就任時にはゼロ金利だったが、今回は利下げに時間がかかりすぎるとトランプ大統領は考えた。しかし、もっと根本的な質問をしよう。 なぜ市場原理に委ねるのではなく、FRBに委ねる必要があるのか?

トランプの考えや要求には疑問の余地があるが、彼は答えを求められる問いを世に投げかける存在だ。なぜFRBがこれほどの権力を持つべきなのか? 中央銀行と中央政府のこの共依存関係とは一体何なのか? 腐敗と不適切な運営に陥らないでいられるはずがなぜあるのか? 1世紀以上の経験を経て、FRB創設当初の大きな誤りを再考すべき時が来ているのだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。