[ニューヨーク/ロンドン/シンガポール 15日 ロイター] – 原油市場は中東情勢の悪化などを背景に先物相場が約3年半ぶりの高値を付け、年内に90ドルまで上昇するとの予想すらある。ただ、足元の基礎的諸条件をより良く反映する現物相場は低迷し、先物との価格差が開いており、市場は近く調整に見舞われるのではないかと危惧する声も聞かれる。
原油はこの数週間、トランプ米大統領がイラン核合意破棄を打ち出したことなどで上昇。北海ブレント先物<LCOc1>が一時79ドル台と2014年11月以来の高値を付け、米WTI原油先物<CLc1>も72ドルに迫った。
パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のコモディティ・ポートフォリオ・マネジャー、グレッグ・シャレノー氏は、原油はイランからの供給が細れば需給が一段と引き締まり、先物は近いうちに80ドルを突破すると予想した。
ブレントが10月末までに90ドルを付けると見込むオプション取引の建玉は2130万バレル相当と過去最高を記録。WTIが6月半ばまでに85ドルを付けると見込むオプションも1万4000枚強と過去最高だ。
ICAPのエネルギー先物ブローカー、スコット・シェルトン氏は、原油高を見込むポジションが組まれたのは地政学的な情勢の不安定化だけでなく強い需要が原因だと指摘する。
しかし現物市場は様相が先物とは異なり、油価の先行きに懐疑的だ。トレーダーによると、米国の原油輸出が日量200万バレルを超えたため一部の市場は需給が飽和状態で、指標原油の価格は調整の機が熟しているという。
中国系製油所のトレーダーは「先物はファンダメンタルズとのかい離が大きい。20ドルの調整があっても驚かない」と話す。
油質が米国産と近く、欧州や中南米で競合するナイジェリアやアゼルバイジャン産の原油は米国産との競争激化で販売が落ち込んでいる。
現物は先物の急伸を尻目に価格が低迷。ウラル原油の北海ブレントに対するディスカウントは7年ぶりの水準に拡大し、カザフCPCブレンドもブレントとの価格差が2012年半ば以来の水準に広がった。
また米市場では主要油種が、パイプラインの輸送能力の不足によって供給が阻まれたことが嫌われて価格が下がり、指標に対するディスカウントが3年ぶりの水準に開いた。
中国の製油所が定期的なメンテナンス作業を終えれば供給過多は解消すると自信を示す市場関係者もいる。ある米原油トレーダーは「メンテナンス作業が終了すれば日量300万バレルの需要が新たに生まれる」と期待を寄せる一方、それが北海ブレントを80ドル以上に押し上げるのに十分かどうかは「予断を許さない」と話した。
(Devika Krishna Kumar、Libby George、Florence Tan記者)
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