<在日中国人の目>震災日記

2011/04/08
更新: 2011/04/08

【大紀元日本4月8日】3月11日から続く余震と、それによる地震酔いのため、身体はまだ困惑しているが、頭はすでにあの大震災を過去という部類に片付けようとしている。しかしこの災害は、「生きること」について改めて考えさせ、日常の愛しさに気づかせてくれた。そして日本にいる中国人は、第2の故郷とする「日本」という国の姿を、再認識する。以下は東京在住の建築士・夏一凡さん(53)が震災後につづった日記の抄録である。

    * * * * *

3月11日 金曜日 晴れ

午後、強い揺れが起きた。すべてのものが激しく揺れ動いた。本棚にあった本が床一面に落ち、パソコンのディスプレイも倒れた。それを立てようとしたら、揺れがまた来た。テーブルの下に潜り、収まるのを待った。こんな状況が2、3回続いた。

携帯がつながらない。ガスが自動的に止まった。しかし、電気水道、インターネットとテレビは通常通りだ。テレビが、東北でマグニチュード8.9の大地震が起きたと報じた。仙台は震度7、東京23区は震度5強、私のいる多摩市は震度5だという。地震で津波が発生し、新幹線や電車などの交通網が止まった。

こんな大きな地震を、初めて経験した。初めて「死」に近づき、初めて人間の脆さと無力さを感じ、初めて自分が歩いた道を反省する衝動に駆られた。私の脳裏に、ある思いがよぎった。1つ、また1つと、災難に見舞われた後、財産や命は消え去るものの、唯一永遠に残るものは「精神」であろう。これこそが、勤勉でひたむきに妥協のない日本文明を作ったのではないか、と。

3月12日 土曜日 晴れ

余震は頻繁に起きるが、街は思いのほか静かだ。

テレビに映る被災地の状況を直視できない。すでに数百人が死亡し、1万人以上が行方不明になっているという。津波は非情すぎる。東京から240キロ離れた福島第一原発で爆発が起きた。核爆発ではないのを知り、少しほっとした。しかし、これから電力供給がどうなるかが心配だ。

3月13日 日曜日 晴れ

マグニチュードは9.0に修正された。

株式急落。日銀が18兆円を供給。福島第一原発の事故は、「レベル4に暫定」と報じられた。菅直人首相は、今回の大震災を「戦後最大の危機」と位置づけた。

人々はパンを買いに、列を作っていた。子供たちは外でのん気に遊んでいる。私は買いだめするつもりはない。地震は突発した出来事で、長期にわたって日用品の供給に響くはずはない、と思ったから。

3月14日 月曜日 晴れ

福島原発でまた爆発が起きた。電力供給は不足しているため、計画停電が実施されるという。石油は販売制限され、ガソリンスタンドのある所では数キロの渋滞ができていた。

母と通話した。東京ではもう何も買えないのではないか、と。みんな「搶購(われ先に買い占める、『搶』は『奪う』を意味する)」しているのではないか、と。私は、「食品とガソリンは不足しているが、列に並べば買えないことはない」と答えた。また、「『搶購』は日本と中国とでは意味が違う」ということも教えてあげた。中国では文字通りの「奪って買う」を意味し、日本では「並んで買う」を意味する、ということを。

3月15日 火曜日 晴れ

原発の状況が深刻化。発電所から半径20キロ圏内は避難指示が出され、20~30キロ圏内は屋内退避の指示が出された。

中国でもしこんな事故が起きたら、どうなるか。政府の対応は、実は容易に想像が付く。情報封鎖に続き、データのねつ造、真相を探ろうとする者への弾圧、というように物事が進むだろう。

3月16日 水曜日 晴れ

被災地に雪。食品もエネルギーも住居もままならない被災者たちにとって、ひどい状況だ。私は日本赤十字に10万円を募金し、せめてもの支援の意を表した。それは、客人としてではなく、この国に住む一員として。

天皇陛下から被災者へのビデオメッセージが放送された。人々の平安を祈り、国民に希望を捨てず、労わり合って辛い時を乗り越えるよう、呼びかけられた。

3月17日 木曜日 曇り

福島原発の状況に、世界が注目する。

今回の震災は日本へのダメージが深刻だ。そんな中、石原都知事は大震災が「天罰」だと発言した。彼こそ政治家だ。尊敬に値する。同時に、この発言に対する日本国民の理性的な反応にも、私は敬服した。

ハリウッド女優のシャロン・ストーンが四川大震災のとき、「中国への因果応報」と発言したことに、中国全土の良知も勇気もない政治家と、自らの頭脳で思考しない国民が糾合し、ここぞとばかりに国を挙げての糾弾劇を繰り広げた。この茶番に、私は悲しみと憐憫を覚えた。

3月18日 金曜日 晴れ

原発事故は、一向に安定する気配を見せない。レベル5に改定されたが、放射線量が減少したことは何よりだ。

中国では今、塩の買い占め騒動が起こっていると聞いた。ニュースの見方について、中国人と他の民主主義国の人とでは全く異なる。放射能汚染に関する報道は、日本がおおむね事実に基づき、国民も基本的に政府を信じているため、わりと冷静に行動することができる。しかし、政府に騙されつづける中国人は、政府が公開する事実に必ず裏があると考え、しかも、その裏は必ず自分に有害だと判断する。そのため、中国人はニュースを見るが、決してそれを信じない。そして、放射能漏れのニュースに対する独自の判断は今回の塩の買い占め騒動を作り上げた。

もっと滑稽なことがある。塩の買い占め騒動の対応に、外交部のあの姜瑜報道官は、国民に「慌てるな」と呼びかける一方、同時に、日本政府に正確な放射能情報を早く提供するよう要求したという。まるで中国人の塩の買い占め騒乱は、日本政府の「嘘」に由来するかのように憚かる。この手は卑劣だが、日本に騒乱の責任を宛がうのに非常に有効だった。

私は忘れていない。まさにこの姜瑜は、「中国ジャスミン集会」の取材を試みる海外メディアらが暴行されたことに対し、「法律を盾に使うな」と暴言を発していたことを。日本に情報提供を要求した発言と合わせて、あの横柄跋扈(ばっこ)な態度と一体化し、姜瑜は、真実や法律を蔑視する自らの姿を世にさらけ出した。

3月19日 土曜日 晴れ

原発は少し落ち着いた。WHOは日本への旅行は安全だ、と太鼓判を押してくれた。

震災後初めて都心に出かけた。食品不足はだいぶ緩和された。新大久保の中国人向けの店にも行った。値上がりもなく、すべてが通常通りだった。企業などは経済的責任を背負うと同時に、社会的責任も要求される。多くの日本企業が今回の震災で、飲み水・食品・休憩場所などを無料提供していることは、まさしく社会的責任を果たしたもので、その間接的な効果は近い将来、経済的利益にも現れてくるだろう。

3月20日 日曜日 晴れ

桜の開花がもうそこまで来ている。

さて、復興が始まる。

(翻訳編集・張凜音)
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