農林水産省は22日、米食品医薬品局(FDA)が東京電力福島第一原子力発電所の事故発生時から続けていた、米や牛肉を含む、日本産食品に対する輸入規制を全面撤廃したと発表した。菅義偉首相は「被災地の人々が待ち望んできたもの。今後の復興にも大きく役立つ」と歓迎の意を表明した。
米国はこれまで、県単位で輸入停止措置を講じていたが、これらを撤廃し、22日から輸出可能となる。輸入制限対象は、東北、甲信越、関東地域の14県で生産された合計100種類の農産物に及んでいた。
福島第一原発の事故以来、日本の農業従事者は国内外の消費者の安心感を回復するために、放射能検査証明書や産地証明書を記載するなどして尽力してきた。一部には風評被害の影響が残るものの、徐々に解消されつつある。
米国は第3位の日本産農林水産物および食品の輸出相手国で、2020年の輸出額は1188億円。農林水産省は、米国以外の輸入規制国の解除も目指す。現在もなお、香港や中国など14カ国・地域が輸入規制を行なっている。
22日朝、菅首相はツイッターで、4月の日米首脳会談でも、バイデン大統領に直接規制の撤廃を働きかけてきたことを強調し、今回の決定を「大変感慨深く思う」と述べた。
日本は、農林水産物食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円に達成する目標を掲げている。菅首相は「引き続き、各国・地域の輸入規制の撤廃に向け、政府一丸となって取り組んでいかねばならない」と意気込みを語った。
農林水産省によると、EUもまた規制を大幅緩和する。EUは20日、日本産食品の輸入規制を緩和すると発表。これまで、日本産の農産物をEUに輸出するためには、放射性物質検査証明書や産地証明書の発行が必要だったが、10月10日からは検査証書は不要となり、産地証書の発行枚数は規制対象品目のうち7割程度が削減される見通し。
今回、米国の規制撤廃は、菅首相の訪米直前に発表された。首相は、23日から26日まで訪米し、日米豪印首脳会合(通称クワッド)に臨む。政府は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)対策など地域課題を首脳間で議論し、ルールに基づく透明性ある地域構想「自由で開かれたインド太平洋」を推進すると発表している。
(佐渡道世)
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