中国経済の現状と展望 その四

2006/02/08
更新: 2006/02/08

【大紀元日本2月8日】程暁農:1985年、中国人民大学大学院修士課程経済学研究科修了後、中国全人代常務委員会弁公庁研究室を経て、経済体制改革研究所に勤務、経済体制改革研究所主任、副研究員を歴任、前趙紫陽首相が主導した改革における中枢の一人として活躍。1989年の天安門事件後、ドイツ経済研究所、プリンストン大学客員研究員を経て、同大学において社会学博士を取得。《当代中国研究》の編集責任者。

8%の成長率はゼロ成長と変わらない

中国経済を考える際、多くの人は、十数年間8%の成長を続けてきたというイメージを持っている。しかし、現実にはこの高度成長の下で、考えられない現象が起こっているのである。中国大陸の物価指数は過去数年間ずっと低迷しており、デフレに悩まされ、深刻な内需不足に陥っている。

では、8%の成長率をどのように認識すればいいのか。中国国家発展改革委員会、マクロ経済研究院の王建氏は次のように語った。「8%の成長率は高いと思っている方がいるかもしれないが、実際には経済は成長したが、デフレ現象によって縮んでいる。それは世界中どこの国、地域にも無い現象であり、経済学の論理として全く説明できないことだ」。

実は中国経済については、景気がいいか否かは単なる成長率からは判断しにくい。ほかの経済要素が大きく関わっているのである。例えば、消費者物価指数、企業の在庫状況、企業の発注数の変化、企業の利潤率などの要素から、客観的に経済状況を読み取ることができる。それでは、これらの要素と成長率の関係を検証していきたい。私の研究では、中国経済の場合、成長率が8%を下回った際、企業の平均利潤率はゼロに近くなり、企業の在庫は大きく上昇し始める。そして、それと同時に消費者物価指数は低下する傾向が見られる。つまり、中国の場合、成長率が8%以下になれば経済状況は不景気となっているわけで、8%は中国経済にとって好景気と低成長の分岐点とも言える。

こうした現象は、台湾大学の呉恵林教授の研究でも指摘されている。呉教授は台湾とアメリカの経済を対象に研究してきた。呉教授の研究では、台湾の場合、インフレ率はゼロ、企業の平均利潤率もゼロという状況で、成長率が約4%になっていることが分かった。一方、アメリカの1920年代から1980年代にかけての統計データを見ると、インフレ率が極めて低い時、実際の失業率は自然失業率に近づくことが示されており、その時の成長率は約2%になっていた。また、中国の場合、8%の成長が言われているが、実際にはゼロ成長と変わらないのである。それは経済成長の効率の悪さを示している。

ご存知のように、近年、中国経済の発展に伴って環境破壊のスピードが年々加速している。世界銀行の調査によると、世界で最も環境汚染がひどい都市のベスト10のなかに、中国の都市が6つも入っており、毎年、40万人が空気汚染による病気で亡くなると推定されている。ある意味では、中国の経済発展は過大な資源消費と環境破壊をもたらしたと言えよう。

中国経済の成長率は8%にせよ、「水増し」分を取り除いて、6%なり4%にせよ、物価指数、在庫量、企業の平均利潤率から見ると、低成長あるいはゼロ成長と考えてもいいと思われる。何清漣氏の研究では、中国人の賃金は、改革前及び80年代に比べても低くなっている。その理由として、この賃金には、食事、簡単な衣類及び生活用品といった生活費のみが含まれ、住居費医療費年金費教育費はすべて含まれていないと指摘している。それは長期的には内需不足につながり、物価指数の低迷をもたらしたのである。

現在の中国経済を支えているのは、外資からの直接投資、外資による貿易輸出、過度な公共事業投資の三つであると考えられる。中国の貿易依存度は既に80%に達している。これは他の先進国や発展途上国の水準を大きく上回っており、世界中で貿易依存度が最も高い国となったことを示している。公共事業投資は、過去10年間ずっと行われているが、経済に与えるプラスの影響はとても少なく、今後続けていくのはますます厳しくなっている。

(続く)