米政府は、国連システム全体で影響力を追求する中国政府に異議を唱えてきた。
論評
米国は9月25日、パンデミックへの備えに関する国連の政治宣言への支持を拒否した。これは、トランプ政権が国際的な保健機関との関係を断つ一連の動きの最新の措置となった。
同政権はすでに世界保健機関(WHO)から脱退し、WHOパンデミック協定の交渉を停止するとともに、国際保健規則の改正を拒否していた。脱退は1月22日に発効した。政権はこれらの決定を説明する際、WHOに対する中国の影響力を繰り返し理由に挙げた。
米国が去ったことで、中国共産党(中共)政府は利益を得る可能性がある。1月に学術誌「Globalization and Health」に掲載された研究は、米国の脱退後、「中国はWHOの最大の分担金拠出国になる」と指摘した。
研究の著者らは清華大学とマギル大学に所属している。両大学とも、中共政府に関連する機関とのつながりが記録されている。清華大学は同大学の共産党委員会の指導下で運営されている。
マギル大学は、中国教育省との協力関係や、中共政府との教育・研究上の連携を拡大する方針を文書で示している。同大学の研究者らは、中共軍に属する中国の国防科技大学の科学者らと科学論文を共同執筆したこともある。
世界の保健分野の専門家10人へのインタビューに基づき、研究の著者らは「中国は、WHO内の支配的な大国として米国に正式に取って代わろうとはしていない」と結論づけた。その代わり、中共政府は「組織内で自国にとってより有利な立場を積極的に追求している」と記した。
中国の財政的な立場に関する研究者らの主張は正確である。米国はWHOの最大の資金提供国だった。米国の脱退により、中共政府は分担金拠出国の中で2位から1位となり、WHOに最も多くの分担金を支払う加盟国になる。しかし、中共政府は失われた米国の資金を補っているわけではない。中共政府の年間分担金は、2025年の8760万ドルから、2026年には約1億3780万ドルに増える予定だ。
中共政府はさらに、5年間で5億ドルを追加拠出すると約束した。これらを合わせた年間平均額は、トランプ政権によると米国が2020年に支払っていた年間4億5千万ドルのおよそ半分に当たる。WHOが使える資金は減る一方、中共政府は米政府が支払っていた額の一部で影響力を高めることになる。
中共は指導的な役割で米国に取って代わろうとしていないという研究者らの主張は、証拠や近年の歴史によって裏づけられていない。中共政府は、国際機関を主導する野心を公然と表明している。
2017年2月、中共指導者の習近平は、中国は「より公正で合理的な新たな秩序に向け、国際社会を引き続き導くべきだ」と述べた。同年10月、第19回党大会への報告では、今世紀半ばまでに「中国は総合的な国力と国際的な影響力で世界を主導する国になる」との目標を掲げた。2018年の外交工作会議では、中国は「グローバル・ガバナンス体制の改革を主導することに積極的に関与すべきだ」と述べた。
新型コロナウイルスのパンデミック中、中共は感染拡大に関する情報を抑え込む一方、中国を世界の保健分野の指導的な存在として宣伝した。WHOの2020年2月の合同調査団報告書は、中共政府による移動制限と隔離措置を称賛し、他国に対して中国の手法を実施する準備を進めるよう促した。

2020年5月の世界保健総会で、習近平は2年間で20億ドルを拠出すると表明し、中国製ワクチンを世界の公共財にすると約束した。国務院の文書は、中国の経験を共有すると約束し、「人類衛生健康共同体」を提唱した。
2020年9月、習近平は中国がパンデミック対応と経済回復で世界を主導していると主張し、これらの成果は中共の指導と社会主義体制の優位性によるものだとした。翌年、国務院新聞弁公室は、米国で感染拡大が制御不能になったのは米政府の対応が原因だと非難した。
2025年9月、習近平は天津で開かれた上海協力機構首脳会議で「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」を提案した。その1か月後、党の2026~2030年の5か年計画案は、中国の「国際的な発言力を全面的に高める」ことを求めた。
人事もこの戦略の一部である。2016年、習近平は、中国の「ルールを作り、議題を設定する能力」を高め、「グローバル・ガバナンスに関わる高度な人材」を育成するよう求めた。
WHOでは、中国が香港出身のマーガレット・チャン氏を推薦し、同氏は2007~2017年に事務局長を務めた。中国の国営メディアによると、国連の職員に占める中国人の割合はわずか2.3%であり、新設されたグローバル・ガバナンスの学校が、国際機関の職に就く中国人の卒業生を育成している。
国連が職員を削減する中、中国の外交官らは、自国民向けの職を増やすよう要求している。国連のある当局者は、中国側が2番目に大きい拠出国であることを理由に、「上級ポストについて働きかけている」と述べた。2026年の研究は、WHOで中国の影響力が高まる要因の1つとして「人員配置」を挙げた。
米政府は、国連システム全体で影響力を追求する中共政府に異議を唱えてきた。2020年1月、国務省は「国連システム内で中華人民共和国などの悪意ある影響力に対抗する」ことを任務に含む特使を任命した。
3月、米下院の中共に関する特別委員会は、中共政府が「国外で中国の利益を推進できる国連の上級ポストに、自国民を戦略的に配置してきた」との見解を示した。ジョン・ムーレナー委員長は、中共政府が「重要なポストに自国の人員を据え、米国に対抗する取り組みに資金を提供している」と述べた。
中共政府の発言と行動は、WHOを含む国際機関を主導する野心を示している。米国の脱退は、米政府が提供していた資金を補わずとも、中共政府がその野心を追求する余地を広げる可能性がある。
しかし、米国がWHOから脱退することで、米国民はWHO内部の中共による悪意ある影響力から守られる一方、欧州やその他の地域は依然としてその被害を受ける可能性がある。

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