中国共産党当局はこのほど、中央軍事委員会副主席の張又俠と軍事委員会委員の劉振立の解任を正式に発表した。習近平の軍内「側近中の側近」とみられていた鍾紹軍の解任も同時に公告された。専門家は「人民解放軍には軍全体を束ねられる実力者がもはや存在せず、習近平は権力を持ちながら軍を動かせない状況に陥っており、軍による『ソフトな抵抗』に直面するだろう」と分析している。
全人代常務委が解任決議を採択
先月28日、中共第14期全国人民代表大会常務委員会は決議を採択し、張又俠の中央軍事委員会副主席職を解任、劉振立の軍事委員会委員職を解任するとともに、両名の全国人大代表資格を剥奪した。
張又俠はこれまで習近平の盟友であり、共産党内で最も権勢を誇る将軍と目されてきた。劉振立は軍事委員会聯合参謀部参謀長を兼任し、軍の作戦立案と統合作戦指揮を担ってきた。
2023年3月に発足した現中央軍事委員会は当初7人で構成されていたが、今回の粛清によって習近平と張升民の2人のみが残る異常事態となった。
今年1月24日、中共国防部は張又俠と劉振立が「重大な規律・法律違反」の疑いで調査対象になったと発表。その後、両名が「軍事委主席責任制を著しく踏みにじり破壊した」と異例の調子で指弾した。
「台湾海峡開戦への反対が粛清の真因」 軍事専門家が分析
時事評論家のマーク氏は「これほど多くの将官が解任されている理由は二つある。政治的な忠誠心の欠如と、台湾海峡での開戦への反対だ。張又俠のような人物は台湾有事に断固反対だった。軍内での威信があり、習近平が権力掌握の初期に軍の安定化で大きく貢献したため、習近平は長らく処断を先延ばしにし、要職に据えてきた」と述べた。
同氏はまた、朝鮮戦争やベトナム戦争の例を挙げ「政治的に必要な時に戦争は起きる。死者の数や勝敗は独裁者にとって主要な判断基準ではない。習近平も政治的危機に直面した時や必要と判断した時に戦争を起こすだろう。そのために障害を除去している」と指摘した。
「習近平の目と耳」鍾紹軍も失脚
今回、同日付で全国人大代表資格を剥奪されたのは鍾紹軍と原戦略支援部隊司令官の巨乾生も含まれる。
鍾紹軍は、習近平が浙江省・上海・中央で職務を担っていた時代に長く身辺秘書を務めた側近中の側近だ。習近平の権力掌握後、軍歴ゼロにもかかわらず2013年に軍事委員会弁公庁主任に抜擢された異例の経歴を持つ。2024年4月には国防大学政治委員に異動していた。
時事評論家の唐靖遠氏は「鍾紹軍の失脚は昨年10月の四中全会後、張又俠が習近平を事実上の傀儡にしようとした動きのピーク時期と一致している。鍾紹軍が標的になったのは、まさに彼が習近平の軍内監察役だったからだ。習近平が軍に送り込んだ『目と耳』として機能していた」と分析した。
唐氏はさらに「張又俠は習近平が取り立てた上将クラスをほぼ一掃した。現在、解放軍では前代未聞の事態が起きており、各戦区司令官・政治委員、各軍種司令官・政委の9割以上が中将の『代理』によって占められている」と述べた。
習近平が2012年に権力を掌握して以降、解放軍は二度の大規模粛清を経験している。第一波(2012〜2017年)では軍委前副主席の郭伯雄(かく・はくゆう)、徐才厚(じょ・さいこう)を含む約157人の将軍が失脚。米国の有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の集計によると、2022年から2026年2月の第二波粛清では、上将・中将の2階級だけで101人の高位将官が公式に解任・粛清された。
習近平「権力はあれど軍は動かせず」
マーク氏は「江沢民以降の総書記は軍の現場経験を持たず、江は腐敗を黙認することで軍の服従を買った。郭伯雄や徐才厚がいかに腐敗していようとも、彼らが育てた派閥は令に従う集団だった」と歴史的経緯を説明した。
そのうえで「習近平は今、本当の意味で軍全体を統率できる大物軍閥を一人も持っていない。これが習近平の最大のジレンマだ」と断言。「習近平は軍に対する権力掌握を急ぐあまり、旧31集団軍出身者を異例の速さで昇進させ、軍の規律を踏み荒らした。しかし軍内で本当に威信のある実力者を育てることができず、固有の信頼関係と上意下達の指揮系統を破壊した」と指摘した。
マーク氏は「習近平は権力を持っているかもしれないが、軍を動かせない。軍は怠業、手を抜くなどあらゆる形でソフトな抵抗を選択し得る。これこそが今後の解放軍が抱える最大の爆弾だ」と警告した。
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