カナダ 米国に「同額」の報復関税を発表

2026/08/27
更新: 2026/08/27

オタワ(カナダ政府)は、今回の関税措置について、ホワイトハウスに政治的圧力をかけることを狙った戦略的なものだとしている。

カナダは、米国による関税措置への対抗として、数百品目の米国製品に対し、総額276億カナダドル(約199億米ドル)規模の「同額」の報復関税を課すと発表した。

カナダのフランソワフィリップ・シャンパーニュ財務相が8月25日の記者会見で発表した新たな関税措置は、9月8日に発効する。対象は水産物から家具まで幅広い米国製品に及び、輸入コストが上昇することになる。

シャンパーニュ氏は「米国の新たな関税は、カナダ全土の労働者、企業、地域社会に現実的な影響を及ぼす。カナダは対応しなければならない。そこで本日、われわれは均衡の取れた、対象を絞った戦略的な方法で対応する」と述べた。

また、関税の影響を受ける企業に対し、連邦政府が75億カナダドルの支援を行うことも約束した。

今回の発表に先立ち、オタワとワシントンの通商協議は8月21日に決裂した。これを受け、米国は8月22日から、カナダから米国への輸出品200億米ドル相当に50%の関税を課した。この米国の関税は、カナダの対米輸出のおよそ5%に影響し、電子機器、酒類、乳製品、紙製品、プラスチック製品、家具など幅広い品目が対象となっている。

シャンパーニュ氏によると、報復関税は15%、25%、50%の3段階で導入され、特定の乳製品、化粧品、一部の木材製品には最高となる50%の関税が適用される。

米国製の鉄鋼・アルミニウム製品に対する報復関税も、これまでの25%から50%へ引き上げられる。現在、カナダ産の鉄鋼とアルミニウムには、米国によって50%の分野別関税が課されている。

カナダ政府は、報復関税の対象となる品目の詳細なリストを公表している。

シャンパーニュ氏は、報復関税の対象となる製品の「大部分」は、カナダ製品で代替できると述べた。

カナダは8月22日、報復関税を導入する方針を発表していた。一方、トランプ米大統領は8月24日、2027年からカナダ製の乗用車、トラック、自動車部品に新たに50%の関税を課すと表明した。現在、カナダ製自動車には米国によって25%の関税が課されている。

ホワイトハウスは8月25日の声明で、「カナダは数十年にわたり米国から不当に利益を得てきた」と主張し、トランプ氏は「もはやそれを許すつもりはない」とした。

さらにホワイトハウスは、「先週、米国はカナダに対し、鉄鋼、アルミニウム、自動車、木材などの関税を大幅に引き下げ、世界のどの国よりも優遇された市場アクセスを提示した。しかしカナダは、協力ではなく、不合理な要求、合意内容の後退、そして全面的な拒否を選んだ」と述べた。

 

「政治的圧力」

カナダのメラニー・ジョリー産業相は、カナダが報復関税の対象としている品目は戦略的に選ばれたものであり、国内企業を米国企業との競争から守ることに加え、ワシントンに政治的圧力をかける狙いがあると述べた。

ジョリー氏は記者会見で、「米国の特定の州に影響を与える製品も対象としている。われわれは政治的圧力をかけるため、賢明かつ戦略的に対応している」と述べた。

Minister of Industry Melanie Joly speaks as Minister of Finance and National Revenue Francois-Philippe Champagne looks on, during a news conference on Canada's response to U.S. tariffs, at a roofing company in Ottawa, on Aug. 25, 2026. (The Canadian Press/Justin Tang)
2026年8月25日、オタワの屋根材会社で開かれた米国の関税措置への対応に関する記者会見で発言するメラニー・ジョリー産業相。隣ではフランソワフィリップ・シャンパーニュ財務・歳入相が見守っている。The Canadian Press/Justin Tang

またジョリー氏は、貿易摩擦が激化する中、カナダ国民に対して国産品を購入するよう呼びかけた。

「カナダ製品を選ぶことは、今この時点で米国に圧力をかけるだけでなく、雇用を守ることにもつながる」とジョリー氏は述べた。「それこそ皆さんにできることであり、現在起きていることに対する抵抗の動きを、そこから始めることができる」

カナダのマーク・カーニー首相は8月24日の記者会見で、米国経済はカナダよりはるかに規模が大きいため、「同額の報復措置を実施するのは難しい」と述べ、その代わりに政府として「より対象を絞った措置」を取る方針を示した。

オンタリオ州のダグ・フォード州首相が提案しているように、カナダから米国へのエネルギーや重要鉱物の輸出制限も含まれるのかと問われると、カーニー氏は「前向きなアプローチ」を取りたいとした上で、「さらに対応する必要があるなら、その時に検討する」と述べた。

米政府は、8月22日に発動した新たな50%の関税について、カナダの乳製品に対する供給管理制度、各州による米国産酒類の販売禁止、米国製自動車に対する関税への対応だとしている。

これに対しオタワは、供給管理制度を維持する方針を示している。また、米国製自動車への関税については、米国がカナダ製自動車に課した関税への対抗措置であり、米国側の関税こそ北米自由貿易協定に違反していると主張している。通商協議が決裂する前には、カーニー氏の要請を受け、各州首相が米国産酒類の販売禁止措置を撤廃することで合意していた。

8月21日に通商協議が決裂した後、カーニー氏はその理由について、米国側が土壇場で条件を変更し、カナダ製の中型・大型トラックを関税軽減の対象から除外したことや、カナダのフランス語保護法に米国が異議を唱えたこと、さらにホワイトハウスがカナダによる他国との通商協定締結に制限を設けようとしたことを挙げた。

一方、米政府はこの説明に反論している。最後の段階で約束から後退したのはオタワ側だと主張するとともに、フランス語保護法をめぐる米国側の立場についてのカーニー氏の説明も否定し、それは「政治的」なものだとしている。

 

支援策

ジョリー産業相によると、カナダ政府は貿易戦争の影響を受ける労働者や企業を支援するため、75億カナダドル規模の救済策を導入する。特に中小企業への支援に重点を置く。

支援策には、影響を受けた企業向けの融資・資金調達制度が盛り込まれるほか、労働者が雇用保険(EI)をより柔軟に利用できるようにする措置も含まれる。

資金のうち15億カナダドルは「地域関税対応イニシアチブ」を通じて拠出され、各地域の開発機関を通じて、返済不要の資金や流動性支援として提供される。また、5億カナダドルはカナダ事業開発銀行(BDC)を通じ、企業の当面の資金繰りや運転資金のための融資に充てられる。

ジョリー氏によると、さらに20億カナダドルが新設の「カナダ・ストロング多角化基金」に充てられる。同基金は、すぐに着手できる設備維持・更新プロジェクトを加速させ、工場の設備転換や新たな海外市場の開拓を支援する。

また、35億カナダドルが緊急支援資金や雇用保険の延長措置に充てられ、影響を受けた労働者が所得支援を受けやすくする。

対象となる雇用主は、雇用保険のワークシェアリング制度や雇用維持プログラムを実施する際の研修・事務費用を賄うため、従業員1人当たり最大1000カナダドルの支援も受けることができる。

ジョリー氏は、「国内経済を強化し、必要なものを自国で生産し、『カナダ製品を買う、カナダ人を雇う、カナダでつくる』ことを促進することで、われわれは勝利する」と述べた。

カナダ保守党のピエール・ポワリエーヴル党首は8月25日、米国の関税に対抗するため政府や他党と協力する考えを示す一方、自由党政権に対し、議会を再開するとともに、カーニー首相が8月21日に拒否したとされる合意案の詳細を公表するよう求めた。

また、カナダの経済成長を支えるため、政府に減税を改めて要求した。具体的には、ガソリン税の一時停止や産業向け炭素税の撤廃などを挙げた。

ポワリエーヴル氏は、「米国が関税を引き上げるなら、われわれはカナダ国民の税負担を引き下げなければならない」と述べた。