中国で、残虐な犬の虐待事件に抗議し、動物保護法の制定を求めた市民の自宅に警察が訪れ、ネットへの投稿をやめるよう求める事態が起きている。
発端は6月28日、広東省掲陽(けいよう)市で起きた事件だ。14歳未満の少年4人が、授乳中だった野良犬と3匹の子犬を棒で何度も殴るなどして虐待。母犬には火をつけ、4匹すべてを死なせた。
少年らはその様子を撮影し、ネットに投稿した。被害に遭った母犬の名前は「ワンワン」。その後、ワンワンと子犬を悼む動きが中国全土へ広がっていった。
残虐な映像が拡散すると、中国のSNSには「動物虐待を処罰する法律を作るべきだ」「保護者にも責任を負わせるべきだ」といった声が相次いだ。
少年らはいずれも14歳未満だったため刑事責任を問われなかった。中国には現在、動物虐待そのものを包括的に禁じる全国的な法律はない。このため事件は、動物保護をめぐる法整備を求める大きな動きへと発展した。
追悼は中国全土 そして海外へ
ワンワンと子犬を悼む動きはネットだけにとどまらなかった。
不完全な集計では、中国31の省級行政区にある241か所の大型ビジョンなどに追悼広告を掲出したという。
遼寧省大連市では、少年サッカーチームの子供たちが「命を大切に、動物に優しく」と書かれたポスターの前で写真を撮り、ワンワンを追悼した。
ところが、こうした動きが全国へ広がるにつれ、当局は取り締まりを強め始めた。
ワンワンを悼み、動物保護法の制定を求める内容をネットに投稿した市民のもとに警察が訪れ、「今後ネットで勝手なことを言わないように」と警告したと訴える動画が、SNSで拡散している。
別の女性も、ワンワンを支援する動画をネットで共有した後、午前3時ごろ警察が自宅に入り、スマートフォンを調べられたと訴えている。
杭州市の商業施設では、ワンワンを追悼する大型ポスターを撤去し、ネット上の関連投稿を相次いで削除した。
さらに、ネット上に流出した瀋陽市当局の内部文書では、この動きは海外が利用する「政治的リスク」につながるとして、商業施設の大型ビジョンなどを調べるよう求めていた。

「ワンワンを忘れないで(Remember Wangwang)」海外にも広がる
当局による取り締まりが続く一方、ワンワンを悼む動きは形を変えて続いている。
8月6日には四川省成都市の空港で、ワンワンと子犬の絵に「ワンワンを忘れないで(Remember Wangwang)」と書かれたバッグを持って歩く女性の姿が撮影された。
活動は海外にも広がった。アメリカ、日本、カナダ、台湾、オーストラリアなどで追悼や抗議を行ない、7月にはニューヨーク・タイムズスクエアの大型ビジョンにもワンワンと子犬の姿を映し出した。
アメリカの動物保護団体「Lady Freethinker」は、少年らへの心理的なケアや保護者の責任追及、反動物虐待法の制定などを求める署名活動を開始。8月6日までに7万人以上が賛同した。
中国では20年以上前から、残虐な動物虐待事件が起きるたびに法整備を求める声が上がってきた。しかし現在も全国的な反動物虐待法は成立していない。
今回さらに注目しているのは、犬を虐待したことだけではない。
「動物を虐待しないでほしい」「命を守る法律を作ってほしい」と声を上げた市民に対し、投稿や広告の削除だけでなく、警察が自宅まで訪れる事態になったことである。
4匹の犬の虐待死から始まった事件は、いまや動物保護を超えた問題へと広がっている。
「動物を虐待するな」と訴えることまで、なぜ取り締まりの対象になるのか。中国当局の対応が、新たな疑問を投げかけている。


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