7月1日、51歳の中国籍男性・林凡林が、米国ハワイ州ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港で入国手続き中に逮捕された。米当局は、ビザ申請時に中国共産党籍や軍歴を申告しなかったとして、ビザ詐欺などの疑いで捜査している。
中国籍男性がホノルル空港で逮捕された経緯
林凡林は、10年有効のB-1/B-2ビザを所持していた。米国への入国手続きを進めていたところ、税関でその場で身柄を拘束された。
米司法当局によると、林凡林はビザ申請時、自身の職業を北京の企業の総経理と記載し、過去に中国外文局教育訓練センター副主任を務めたことがあると申告していた。また、北京体育大学で体育教育を専攻したと説明し、渡航目的は「文化交流」としていた。
一方、申請書では、これまでの兵役経験、専門技能や武器訓練の有無、中国共産党員であるかどうかについて、いずれも「いいえ」と回答していたという。
しかし、入国時の審査で米税関・国境警備局の職員が本人を呼び止め、詳しく調べたところ、携帯電話の中から人民解放軍の退役証明書が見つかった。そこには、1994年に入隊し、2011年に退役したこと、退役時の階級が中佐であったことなどが記されていた。
林凡林はその後の聴取で、軍の教育機関に在籍していたことや、現在も中国共産党員であることを認めたという。
米当局は、ビザ申請の際に軍歴を記載しなかった理由について、審査に影響することを懸念したためだと説明したとしている。検察は、ビザおよび文書詐欺の罪で連邦刑事訴追を進めている。
過去にもあった類似事案と米国の警戒強化
米当局は、同様の事案は過去にもあったとしている。2020年には、人民解放軍の中尉だった女性が、ビザ詐欺の疑いで起訴された。米国では、軍歴や共産党との関係を隠したまま入国を申請したケースへの警戒を強めている。
今回の事件について、検察は保釈を認めないよう裁判所に求めている。ビザおよび文書詐欺は連邦重罪に当たり、有罪となれば最長10年の禁錮刑が科される可能性がある。
FBIの対情報活動と中国関連摘発の動き
この事件が明らかになったのと同じ時期に、FBI長官のカシュ・パテル氏は、SNSのXで対情報活動の実績を公表した。パテル氏によると、この1年以上でFBIは米国内で各国の情報要員113人を逮捕・摘発し、そのうち62人が中国関係者だったという。
パテル氏は、こうした対情報活動によって、外国勢力による秘密工作を抑え込んだと強調した。
上院決議と米国の対中政策への影響
米議会では6月16日、共和党のリック・スコット上院議員が提出した決議第444号が上院で全会一致で可決された。
決議案では、中国共産党を世界の安定と平和への重大な脅威と位置づけた上で、COVID-19の起源問題やフェンタニルの拡散、スパイ活動、台湾への圧力、ウイグル族への人権侵害、強制労働、香港の自由の制限などを列挙している。また、米政府に対し、関与したとされる中国共産党幹部への資産凍結やビザ発給拒否などの制裁を進めるよう求めている。
ただ、この決議は法的拘束力を持つ法律ではなく、個別のビザ審査を自動的に左右するものではない。
それでも、米議会で中国共産党を直接「犯罪組織」と呼ぶ決議が可決されたことは異例であり、今後の対中政策や審査強化の象徴的な動きと受け止められている。
入国審査で党籍・軍歴が重視される理由
米国の移民法には、共産党などの党員の入国を原則として認めない規定がある。ただ、実際の運用では、これまで厳格な適用は限定的だったとされる。
グローバル脱党サービスセンターの汪志遠主席は、今回の動きについて、単なる移民政策の見直しではなく、安全保障を重視した運用強化だと指摘している。中共との関係は、米国やカナダなどで、移民や入国、就労審査の重要な要素になっているという。
汪氏はまた、米国シアトルの空港で同時期に20人以上の中国人学者の入国が拒否されたことや、カナダで中国籍の女性の永住権申請が却下されたことにも言及した。
今回の林凡林氏の事件は、米当局が入国審査や安全保障上の審査で、軍歴や党籍をどのように扱うかを示す事例の一つとなっている。
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