フランス「略奪した文化財であれば返します」。
これに対し、中国のネットでは「いや、お願いだから返さないで!」という思いもよらない反応が広がっている。
今年5月、フランスは新たな「文化財返還法」を施行した。これを受け、パリにあるフランス国立ギメ東洋美術館の館長は、「略奪されたことを示す確かな証拠があれば、24時間以内に元の国へ返還すべきだ」と述べた。同館の収蔵品の約3分の1は中国の文化財だという。
本来なら歓迎されそうなこの方針だが、中国のSNSでは「返さないでほしい」という声が相次いだ。
「返還された翌日には、海外のオークションに出ていても驚かない」
「そのままフランスで保管してほしい。文化財を守ってくれ。機会があれば本物を見に行くから」
「中国へ戻ったら、本物はどうせ売られる。私たちが見ることになるのは偽物だけだ」
こうした反応は海外のXでも広く共感を呼び、多くのユーザーが「その通りだ」「海外にある方が安全だ」と賛同した。
文化財を中国へ戻せば守られるどころか、失われてしまうのではないか。そんな不信感が、中国国内だけでなく海外の中国人社会にも広がっている。
背景にあるのは、中国国内で相次いだ文化財流出疑惑だ。
昨年12月、中国を代表する博物館の一つ、南京博物院で、寄贈された貴重な古書画が市場へ流出していた疑惑が発覚した。
さらに、南京博物院の元職員も実名で内部告発し、前院長が収蔵品を盗み出したり、一部の貴重な書画を共産党幹部らに贈っていたと主張。元職員は、こうした行為によって数千点に上る国宝級文化財が流出・損傷したとしている。
問題は、中国を代表する博物館である故宮博物院でも起きていた。香港の収集家・呉歓氏は、一族が故宮へ無償で寄贈した241点の文化財のうち、後の確認で数十点が消えていたことを明らかにした。
こうした事件が相次いだことで、中国では「文化財は戻ってきても適切に管理されない」「海外の博物館にある方が安全だ」という不信感が広がっている。
米議会図書館の中国文化財研究者、蔣品超氏は、「中国の博物館は権力と金銭に左右されている。この体制が変わらない限り、文化財の流出は今後も形を変えて繰り返される」と指摘する。
本来、自国の文化財が戻ることは歓迎されるはずだ。しかし今、中国では「返さないでほしい」と自国民が願っている。その声は、文化財そのものではなく、それを守るはずの制度への深い不信を映し出している。

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