高市早苗首相は6月30日、これまでの延長線上にない新たな経済財政運営への抜本的な転換を図る方針を明らかにした。
最大の焦点は、長年にわたる投資不足の流れを断ち切り、過度な緊縮財政から脱却する点だとしている。高市首相は「責任ある積極財政」の考え方のもと、「危機管理投資」と「成長投資」を大胆かつ戦略的に進める方針を打ち出した。
その推進力として、民間投資を引き出し、政府予算の予見可能性を高めるため、通常の歳出とは別枠となる「『強く豊かな日本』投資枠」を創設するなど、予算の作り方を根本から改め、財政運営の目標には「債務残高対GDP比の安定的低下」を中核に位置づけ、市場の信認確保にも配慮する姿勢を示した。
高市首相は、47都道府県のどこに住んでも、安全で必要な医療・福祉・質の高い教育を受けられ、働く場所がある社会を実現するためには「強い地域経済」が重要だとした。
その実現の鍵となるのが「産業クラスター」の形成である。産業クラスターとは、特定の分野で関連する企業や研究機関などが地理的に集積し、互いに連携しながら新たな付加価値やイノベーションを生み出す集合体を指す。
政府の「地域未来戦略」では、主に二つのアプローチで産業クラスター形成を推進する。一つは「戦略産業クラスター」で、熊本の半導体工場であるTSMCや、北海道の次世代半導体工場であるラピダスのように、国が重視する分野で大企業などの大規模投資を呼び水に関連企業や人材、研究機関などを周辺に集める形で戦略分野における企業の大規模投資を中心として形成される。
もう一つは「地域産業クラスター」である。知事の主導により、複数自治体の連携や中堅企業への支援など、政府の施策を戦略的に活用しながら地場産業の成長を目指すものだ。
政府は、こうした大小の産業クラスターを日本列島に戦略的に形成することで、地方に大規模な投資を呼び込み、働く場所の創出と、それを支える人材育成のエコシステムを生み出すとしている。
高市首相は「日本成長戦略」と「地域未来戦略」を通じて国内投資を促し、それが賃上げ、消費拡大、企業収益の拡大につながる「投資と賃上げの好循環」の加速を目指すとした。この新たな経済財政運営を「中長期経済財政計画」と位置づけ、2040年度までに国内民間設備投資230兆円、GDPが1100兆円に迫る規模、経済成長率については、できるだけ早期に実質1%超、名目3%超を定着させる目標も掲げた。
国内民間設備投資については、経団連からは250兆円というさらに野心的な目標も表明されている。
賃金動向については「ガソリン暫定税率の廃止」などの政策効果で物価上昇を緩やかに抑え、実質賃金上昇率は前年比2%程度のプラスで推移していると説明。春季労使交渉での5%台の賃上げという成果も踏まえ、事業者に丸投げせず、「継続的に賃上げできる環境」を国が整備していくと強調した。
高市内閣は、新たな経済財政運営の方向性を明確に示す「骨太方針」の原案について、与党との最終調整を進め、来月中旬の閣議決定を目指す。今後は経済財政諮問会議の下で毎年度進捗を点検し、「強い経済」と「財政の持続可能性」の一体的な実現に全力で取り組む方針だ。
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