英首相公用車に中国製追跡装置か 部品にSIMカード 情報流出の懸念高まる

2026/06/16
更新: 2026/06/16

英メディアの報道によると、イギリス首相の公用車内から中国製の追跡装置を発見、中国国内へデータを送信し続けていたことが明らかになった。多くの国会議員は最近の公聴会で初めてこの事実を知らされたと報じており、今回の事件を受けて、中国製部品に依存するサプライチェーンの安全リスクに対する懸念が再び高まっている。

激動の政界を狙ったスパイ工作か 出荷時に仕込まれた通信部品

英紙「デイリー・メール」によると、中国駐在の経験を持つ元イギリス外交官のチャールズ・パットン氏が、英下院の商業・貿易委員会に出席し、この事実を証言した。パットン氏によると、2022年の時点で首相の公用車に搭載されていたセルラーモジュールを通じて、中国へデータを送信していたという。

当時の英政界は、1年間でボリス・ジョンソン氏、リズ・トラス氏、リシ・スナク氏の三人が相次いで首相に就任する激動の時期にあった。現時点で、どの首相が主な標的だったのかは特定されていない。

報道によると、英情報機関が政府公用車を対象に実施した安全検査の際、この装置を発見した。中国のサプライヤーが納品した部品の一部に、出荷段階であらかじめSIMカードが組み込まれており、これにより車両の移動データなどを中国側へ転送できる仕組みになっていた模様だ。

これに対し、中共当局は一連の指摘を否定し、「事実無根のデマだ」と主張している。

機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」加盟国に衝撃

台湾シンクタンク、国防安全研究院の沈明室研究員は、今回の事態について次のように分析している。

「イギリスは、アメリカや日本とも連携する機密情報共有の枠組み『ファイブ・アイズ』の主要メンバーであるにもかかわらず、防諜への警戒対策に落ち度があった。中国市場からの経済的利益を優先するあまり、国家指導者の動静を監視されるリスクへの想定が甘かったのではないか」

沈氏は、一国のリーダーの行動ルートやスケジュールが長期にわたって把握されていた場合、その地政学的なリスクは一般的な個人情報の漏洩事件を遥かに超えていると指摘する。現時点でこれらのデータが具体的な実力行使に悪用された証拠はないものの、各国政府に大きな衝撃を与えている。

さらにパットン氏は公聴会で、こうした通信部品はすでに社会のあらゆる電子機器や車両に普及していると言及し、「もし供給元が遠隔操作でこれらの車両を一斉に機能停止させようと思えば、技術的に不可能ではない」と、サイバーセキュリティ上の脆弱性を警告した。

「経済」から「安全保障」へシフトするデリスクの概念

実際、近年ではファーウェイの5G通信設備をめぐる論争から、中国製の港湾用クレーンに不正な追加通信装置を発見した事案、さらにはハイクビジョンなどの監視カメラ機器がもたらすデータ安全上の懸念に至るまで、西側諸国における中国の技術製品に対する警戒感は継続的に高まっている。

沈氏は「ネットワークの構築やデータの伝送が可能な設備であれば、基本的にはすべて、そのデータを北京や中国本土にあるデータセンターへと転送する機能を備えている可能性がある。つまり、この浸透工作は『あらゆる隙間に入り込むものだと言える。イギリスがもし今後も中国製品の各種リスクに対して軽視を続けるのであれば、彼らの安全防衛策は不合格と言わざるを得ない」と指摘した。

大紀元のコラムニストである王赫氏によると、これに類する安全保障上の警告は実際には以前から繰り返し発生していた。しかし、多くの西側諸国がリスクを認識してから実際の防衛行動に移るまでの速度は、脅威が拡大するペースにつねに追いついていないという。

王赫氏は、「中国共産党の本質は非常に危険で、ならず者的な政権だ。しかし、多くの国はこの点をまだ十分に認識していない。すでに認識している国でも、具体的な行動に移るまでに時間がかかりすぎており、対応は十分に迅速とはいえない。現実の情勢を見れば、この問題がすでに極めて差し迫っていることは明らかだ。トランプ大統領は訪中から帰国した際に、中共から贈られた製品をすべて廃棄し、相手側に付け入る隙を与えなかった。当時のトランプ政権の基準に照らせば、現在のイギリスを含む多くの国々の対応や防衛策は極めて遅い」との見解を示した。

同氏はまた、中国が世界市場に工業製品を大量に輸出していることが、各国にかつてない情報安全保障上の課題を突きつけていると指摘した。

「昨年の中国の貿易黒字は1兆2千億ドル、約180兆円を超えた。これは歴史上例を見ない規模だ。この事実は、世界が中国の工業製品に強く依存していることを示している。したがって、西側諸国が掲げる『デリスク』、つまりリスク低減は、単なるサプライチェーン上の調達リスクにとどまらない。より重要なのは、情報安全保障上のリスクである。デリスクという概念は今や、単なる経済概念ではなく、総合的かつ戦略的な概念として位置付けられている」

首相公用車からの追跡装置発見という事案が、組織的なスパイ工作の一環であるかについては今後のさらなる調査が必要だが、中国製ハイテク部品に潜む情報浸透のリスクは、日本を含む民主主義国家にとって回避できない重大な課題となっている。