スコット・ベッセント財務長官は22日、米上院歳出委員会小委員会の予算公聴会で「連邦準備制度(Fed、連邦準備理事会)または財務省が提供する通貨スワップ制度の目的は、ドル資金市場の秩序を維持し、米国資産の無秩序な売却を防ぐことにある。このスワップ取り決めはアラブ首長国連邦(UAE)と米国双方に利益をもたらす。一部のアジアの同盟国を含む複数の国からも同様の要請が寄せられている」と述べた。
ドルの地位強化、人民元国際化に打撃
ベッセント財務長官は24日、X(旧ツイッター)への投稿で、湾岸諸国をはじめアジアの同盟国を含む多くの国々と、数年来にわたりドル通貨スワップ協定の締結について協議してきたと明らかにした。永続的な通貨スワップ協定を拡大できれば、湾岸地域およびアジアにおける新型ドル資金センター設立への重要な一歩になると述べた。
政治経済評論家・呉嘉隆氏は、新唐人テレビの番組「新聞大破解」で、「これは真の大局的な一手であり、金融面だけでなく地政学と結びついている。中共への対抗、各地域における中共の影響力、貿易・金融面での影響力への対抗が含まれている」と指摘した。呉嘉隆氏は台湾の著名なマクロ経済学者で、マクロ経済分析、金融政策、地政学経済学を専門とする。
ドル通貨スワップとは、米国が合意した為替レートで外国の中央銀行にドルを供給し、相手方が自国通貨を担保として差し入れ、満期時に同一レートで交換するものだ。呉嘉隆氏はアルゼンチンを例に挙げて説明した。2025年10月、深刻な資金不足に直面したアルゼンチンに対し、トランプ政権は通貨スワップ機制を通じて200億ドルの支援を提供し、ペソの為替レートを支えた。現在、アルゼンチンはすでに資金を返済している。ベッセント財務長官は2026年1月9日のX投稿で「強力な米国の同盟国を安定させ、米国民に数千万ドルの利益をもたらした。これは完璧な『アメリカ・ファースト』の取引だ」と記している。
呉嘉隆氏は、「たとえばドル建て債務を抱えながら返済に十分なドルを持たない国は、通貨スワップ協定を通じて自国通貨をドルに換えて急場をしのぐことができる。米国がこれらの国々の資金難を和らげ、金融危機を乗り越えさせることになる。結果として、ドル建て債務の返済圧力を抱える多くの国が、米国から直接融資を受けるルートを手に入れる。最終的には、多くの国がドルへの信認を保ち、人民元を使おうとしなくなる」と解説した。
呉嘉隆氏はさらに「例えばサウジアラビアが中国とのエネルギー取引の一部を人民元で決済した場合、困難に直面したとき誰が助けてくれるのか。しかしこの通貨スワップ協定があれば、必要なときに米国が助けてくれる。こうなれば皆がドルをより多く使うことを選ぶ」と述べた。ドルの使用が増えれば自ずとドルの地位が守られ、脱ドル化や人民元国際化への挑戦も意味を失うと指摘した。
国債問題と中東同盟国との関係強化を結びつけ
呉嘉隆氏は、米国経済の最重要課題は国債であり、現在の利払い額は1兆ドルを超え、国防予算をも上回っていると指摘した。国債残高はすでに38兆ドルに達しており、トランプ第2期中には40兆~42兆ドルに達する可能性があり、これほど大きな元本に対しては、金利が低くても支払利息は極めて膨大になると述べた。
呉嘉隆氏によると、現在、米国債には以下の資金調達ルートがある。
第一は各国政府だ。米中関係が良好だった時期には、中共の余剰貯蓄の多くが米国債の購入に充てられていた。現在は日本が最大の米国債保有国となっている。余剰貯蓄で米国債を購入できる国としては中東諸国がある。呉嘉隆氏は、米国が抱える経済面の最優先課題が債務圧力だとした上で「米国は大量の国債を発行し、旧債を新債で償還しようとしており、湾岸諸国の余剰資金を米国に還流させて米国債を支えることを目指している。米国債の売れ行きが悪化すれば金利が上昇し、財務省の資金調達が困難になるからだ」と説明した。
第二はドル建てステーブルコインの発行だ。2025年7月、米国は「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」を成立させ、決済型ステーブルコインを規制の枠内に置くことで、ドル建てステーブルコインの市場発展を促進し、米国債需要の喚起につなげることとした。
このほか米国は、1件500万ドルの「ゴールドカード(黄金グリーンカード)」の販売を開始し、関税収入による資金調達策も検討中だ。
呉嘉隆氏は「トランプ氏は就任以来あらゆる施策を債務処理と結びつけており、今まさに中東諸国との通貨スワップ協定の締結を計画している。中東諸国は石油の売却で得た大量のドル、いわゆるオイルダラーとして膨大な貯蓄・余剰を保有している。米国はこれらの余剰資金を国債市場に誘導して米国債を支えることを狙っており、そのために中東諸国との通貨スワップ協定締結を目指している。そのためにはまず、中東諸国のドルへの信認を確立する必要があり、そうして初めてこの資金が米国に還流し米国債を買ってくれる。トランプ氏は昨年、その点をすでに実現した」と述べた。
呉嘉隆氏は、ドルの流動性への信認確立に加え、トランプ第2期政権の最初の外遊先が中東、すなわちサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦だった点も指摘した。
「トランプ氏は彼らに武器とAI産業を提供した。湾岸諸国はもともと石油産業だけに依存しない経済転換を望んでいる。石油化学産業は一定程度進んでいるが、製造業や科技産業などへの転換をより強く望んでいた。そこへトランプ氏が最先端のAIを取引材料として持ち込んだことで、これらの国々は大いに喜び、サウジが1兆ドル、カタールが1兆2千億ドル、アラブ首長国連邦はマイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾンなどの米国企業に対し1兆4千億ドルの投資を約束し、多くのインフラを整備することになった」と述べた。
呉嘉隆氏は「中東諸国は今や、ドルは信頼でき、頼りになる、米国は信任できる、トランプ政権は信任できると認識している。このため、これらの国々もドルとの長期的で安定した関係を維持しようとし、万一の際には米国に支援を求められるとして、手元の余剰資金を米国債の購入に回すことを喜んで受け入れている」と語った。
アジアに新型ドルセンターを設立し中共の勢力圏に浸透
呉嘉隆氏は、中東諸国とは異なり、アジアの一部の国々や中南米諸国の多くは外貨不足に悩んでおり、以前のドル建て債務を返済するのに十分な貿易黒字を持たず、金融危機に直面する可能性があると述べた。特に中共の「一帯一路」の債務の罠に陥っている国々に対しても、米国はこの通貨スワップ協定を通じて支援し、資金繰り問題の解決に当たることができる。これは当然、民心を掌握する手段であり、グローバルサウス諸国における中共の取り込み工作への対抗でもあると指摘した。
呉嘉隆氏は最後に「米中対立には貿易問題、技術規制の問題、そして現在のエネルギー安全保障の問題があるが、最終的には通貨戦争と金融の切り札を避けては通れない。金融とは最後にして最大の手段だ。湾岸諸国およびアジアの同盟国と連携して新型ドル資金センターを構築することは、金融面にとどまらず地政学と一体となった、最後の最大かつ決定的な一手となる」と締めくくった。
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