中共が狙う海底通信網 深海ケーブル切断技術に世界が警戒

2026/04/22
更新: 2026/04/22

中国共産党(中共)当局の官製メディア「新華網」は、中共自然資源部の発表として、調査船「海洋地質2号」が4月11日、今年初の深海調査任務を終えたと報じた。任務には、「深海用水中電気油圧アクチュエーター」を使い、水深3500メートルの深海で海底ケーブルを切断する作業が含まれていた。

官製メディアは、「これほど深い海域で海底ケーブルを切断する能力を国家として公に示したのは世界で初めてだ」と強調した。潜航可能な深さは、現在の海底通信インフラの平均敷設深度のおよそ2倍に当たるとしている。

報道によると、この装置は、アメリカの制裁対象となっている中共船舶科学研究センターと、その傘下の深海有人装備国家重点実験室が開発した。

この技術の公表は、国際社会の強い関心を集めている。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは4月15日、当局の説明として、この装置について「厳重に保護された海底の通信ケーブルや送電ケーブルを切断でき、海洋をめぐる国際的な力関係を揺るがす可能性がある」と伝えた。

米軍事メディア「19FortyFive」に寄稿した米ジャーナリストのスティーブン・シルバー氏は、中共がこの装置を海中サルベージや海底採掘などの民生用と説明している一方、専門家の間では「軍民両用」を想定した技術との見方が強いと指摘した。

海底ケーブル切断が台湾とグアムに及ぼす懸念

シルバー氏は、この技術が米軍のインド太平洋地域における戦略に直接影響を及ぼす可能性があると警告した。グアムはのアメリカのインド太平洋戦略における重要拠点で、島内には12本以上の光ファイバー海底ケーブルが敷設され、グーグルなどの民間企業や米軍の通信を支えている。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、北京がこうした装置を使って戦略拠点周辺の海底ケーブルを切断すれば、地政学的な危機の際に世界の通信網に深刻な混乱をもたらすおそれがあると報じた。

台湾にとっては、さらに切実な問題とされる。

米シンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員で、台湾の許毓仁元立法委員は、3月初めに米議会の米中経済安全保障調査委員会(USCC)の公聴会で、武力衝突時における海底ケーブルの重要性について説明した。

許氏は、世界の大陸間インターネット通信の97~99%を海底ケーブルが担っていると述べた。そのうえで、中共軍の文書を引用し、台湾海峡で衝突が起きた場合、台湾侵攻に先立って海底ケーブル関連インフラが攻撃対象となる可能性が高いと指摘した。

また、スペースXの低軌道衛星通信網「スターリンク」はウクライナで一定の役割を果たしたものの、台湾では大きな制約があると説明した。

通信調査会社TeleGeographyの調査責任者ティモシー・ストロング氏は、2025年11月の別のサイバー安全保障に関する公聴会で、衛星通信は重要任務における緊急時のバックアップとしては有効でも、通信容量や費用対効果の面で光ファイバーには及ばないと説明した。その理由として、「通信容量当たりのコストは、ケーブルの方が衛星より2800倍安い」と述べた。

さらに許氏は、中共軍が台湾のすべての海底ケーブルを切断しなくても、バシー海峡付近にある3つの主要なケーブル群を正確に切断すれば、理論上は台湾の通信容量を99%低下させることが可能だと警告した。

こうした「デジタル封鎖」が起きれば、軍の指揮統制の混乱や金融市場の機能停止、住民の不安拡大につながり、台湾と国際社会の間の情報伝達も妨げられるおそれがあるという。

ジョージ・メイソン大学メルカタス・センターが入手した中共のデータには、台湾の複数の戦略拠点や多数の海底ケーブル陸揚げ局が記載されており、中共が広範な情報収集を進めていたことがうかがえる。

許氏の証言によると、中共は海底ケーブルを破壊する技術を、戦時を想定した体系的な能力として強化してきた。軍関連機関は10年以上にわたり関連特許を出願しており、2013年には深海光ファイバーケーブルの切断・回収装置、2022年には切断後のケーブル両端を固定する技術、2025年には水中切断装置と曳航式切断システムの特許を申請した。

さらに、中共船舶科学研究センターは2025年初め、水深4千メートルで稼働できる電動切断装置の設計案を公表した。2025年半ばには、中共当局が新型の海底ケーブル切断船も公開した。報道によると、この船には直径6インチ、毎分1600回転のダイヤモンドコーティング研削ホイールが搭載され、水深4千メートルでも強化外装を貫通できるという。

こうした一連の装備は現在、北京が世界の通信や国際秩序を混乱させる新たな戦争手段になり得るとの見方を招いている。

中露連携による海底ケーブル破壊に警戒

中共が専用の海底ケーブル切断船に加え、民間船を使ったグレーゾーンでの破壊工作にも関与しているとの見方が強まっている。米戦略国際問題研究所(CSIS)の2025年の報告書は、海底ケーブルが意図的な破壊や盗聴の標的となる新たな攻防の舞台になっていると指摘した。

報告書は中露の連携にも警戒感を示した。2024年末から2025年初めにかけて、中国籍の「順興39号」とロシア運航の「ワシリー・シュクシン号」が台湾周辺や海底ケーブル陸揚げ地点の近くを航行し、偵察していた可能性があるとされた。2024年11月には、中国船籍の「伊鵬3号」がバルト海でいかりを引きずり、フィンランドとドイツ、スウェーデンとリトアニアを結ぶ重要な海底ケーブル2本を切断した事案が世界に衝撃を与えた。

CSISは、こうした手法が中共に関与を否定しやすくさせる一方、台湾有事を念頭に置いた運用経験の蓄積にもつながっている可能性があるとみている。

一方、中共は「デジタル・シルクロード」構想のもと、海底ケーブル市場でも勢力を広げている。かつてファーウェイ傘下だった華海通信は世界4位の海底ケーブル建設企業に成長し、中国の主要光ファイバー企業4社の市場シェアは計35%を超えるとされる。中共は海底ケーブルを独自に建設・敷設できる技術を備えており、盗聴や有事の破壊工作に使われるとの懸念も強まっている。

こうした脅威を受け、許氏は、米議会に対し、制裁強化や国際ルールの見直し、監視網の整備、修理船調達への支援などを提言した。

CSISの専門家は、広大な海域での監視には限界があるとして、政府と民間の連携を強化し、同盟国との共同パトロールや監視衛星への支援、海底ケーブルへのセンサー設置などを通じて、破壊行為に対する抑止力を強める必要があると提言した。

米議会では2025年、台湾の重要通信インフラを守るための「台湾海底ケーブル強靱化イニシアチブ法案」も提出された。法案には、監視システムの整備や不審船の監視強化に加え、破壊行為に関与した個人や団体への資産凍結、入国禁止などの制裁が盛り込まれている。

ジョン・カーティス上院議員は、「北京は台湾を孤立させる手段を強めており、その中には海底ケーブルの破壊も含まれる」と述べ、法案は、アメリカが台湾や同盟国と連携してインフラと主権、自由を守る姿勢を示すものだと強調した。

程木蘭