米海軍フォード級空母がイラン攻撃で活躍。SEWIP Block IIIとヌルカデコイのソフトキル能力でマッハ3ミサイルを電子妨害・欺瞞。360度防御の仕組みを徹底解説。
2月28日、米国とイスラエルはイランに対して軍事攻撃を開始し、イラン最高指導者ハメネイ師を含む40名以上の高官を殺害した。米軍は大規模な海空軍力を投入してイランの兵器施設を攻撃し、3月2日、米中央軍は最新かつ最大の航空母艦「フォード」がすでに戦闘に参加していることを明らかにした。
米海軍の2個の空母打撃群がイラン近海で「オペレーション・エピック・フューリー(史詩の怒り作戦)」に加わった。その中で、世界最大・最新鋭の空母「フォード」は特に注目を集めている。同艦は電子戦能力を活用し、ミサイルの接近前にその誘導を妨害することも可能である。
空母「フォード」の排水量は10万トン、全長は337メートルに達する。移動式空軍基地として75機以上の航空機を搭載でき、この巨大な投資を守るためには、多層的で高度な防御システムが欠かせない。
「フォード」空母は電子戦システムと能動型ミサイルデコイ「ヌルカ(Nulka)」を併用し、来襲ミサイルを無力化する。これらのソフトキル(非破壊)システムは、敵のレーダー誘導装置を撹乱させ、脅威を艦船から完全に逸らすことができる。

マッハ3級対艦ミサイルへの脅威対応
現代の対艦ミサイルはマッハ3を超える超音速で飛行する。この速度では物理的防御システムの反応時間はわずか数秒しかなく、従来の迎撃手段は急速に限界に直面している。
ソフトキル能力とは、物理的な弾体を使用せずにミサイルを無力化する手段である。空母はミサイルを直接撃ち落とすのではなく、電子的な妨害でその機能を失わせる。この方法により、ミサイルの飛行軌道を変更させ、安全に海上へ墜落させることができる。
360度ミサイル検知・精密ビーム攻撃
「フォード」空母には「水上艦電子戦改善計画(SEWIP)」Block IIIが搭載されている。このシステムは艦周囲360度の電波放射を検出し、敵ミサイル発射の瞬間にその周波数を特定することができる。
SEWIPは能動電子走査アレイ(AESA)アンテナによる電子反撃を実施する。その中核となるのは、数千本におよぶ高密度な電波ビームを来襲ミサイルに直接照射する能力である。これらの定向エネルギーパルスは、ミサイル内部の誘導コンピューターを過負荷状態にし、機能を停止させる。

対艦ミサイルを完全に無力化
エネルギービームを受けたミサイルは、レーダー誘導装置が完全に機能を失う。その結果、ミサイルは全長337メートルの空母へのロックオンを失い、進路を外れる。これにより、脅威は実際の攻撃範囲に達する前に排除される。
ヌルカデコイの実力:10分空中欺瞞でミサイル逸らし
もし電子妨害が失敗した場合、空母は能動型ミサイルデコイ「ヌルカ」を発射する。これらの高度な装置は最大10分間空中に静止し、大型軍艦のレーダー信号を模倣する。ミサイルはデコイ(おとり)を追跡し、空母から離れた方向へ飛行を続ける。
「ヌルカ」電子デコイ発射システムは通常二連装構成で設置される。設置スペースが小さいため、艦体の大規模な改修は不要である。小型のミサイルフリゲートから大型の原子力空母まで搭載可能であり、米海軍はこの新型電子防御手段を重視している。すでに数千セットが調達され、各種大型艦に装備されている。
「ヌルカ」の初の実戦使用は2016年10月9日、米海軍駆逐艦「メイソン」(DDG-87)がイエメン沿岸でフーシ派武装勢力から発射された2発の対艦ミサイル攻撃を受けた際である。「メイソン」は複数の「ヌルカ」デコイを迅速に発射し、ミサイルを欺いて自艦から逸らすことに成功した。
統合されたセンサー・ネットワーク
空母は協調作戦ネットワークを通じてデータを共有する。このシステムは艦載センサー、周囲の駆逐艦、さらには早期警戒機を連接し、統一された戦術情報を構築する。それにより、数百キロ離れた脅威をも追跡することが可能となる。
原子力300MW出力が支える持続電子妨害
これらの大規模な電子戦システムを稼働させるには、膨大なエネルギーが必要である。「フォード」空母には2基のA1B型原子炉が搭載され、発電量は300メガワットに達する。これは旧世代艦のほぼ3倍に相当し、電子妨害アレイを継続稼働させるに十分な出力である。
フォード級空母1隻あたりの建造コストは約130億〜133億ドル(約1兆9,500億〜2兆円)に上り、米海軍はもとより世界でも最も高価な航空母艦である。その理由は、電磁式カタパルト(EMALS)や先進型アレスティング・ギア(AAG)など、数多くの最先端技術を採用しているためである。
しかし、この巨額の投資は、敵対海域において4500人の乗組員の生存を保証し、空母が持つソフトキル能力によって、世界のどの海域においても高度な安全性を確保することを可能にしている。
比較すると、前世代の「ニミッツ級」空母1隻の建造費は約45億ドル(約6700億円)にすぎない。「フォード」空母は今後数十年にわたり、米海軍の中核的な海上打撃戦力であり続けるとみられている。
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