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日本 国連人事で中共に対抗 過去最多979人が要職に

2025/12/19
更新: 2025/12/19

日本が国連での影響力強化に動いている。国連機関で働く日本人職員は2024年末時点で過去最多の979人となり、政府が掲げる「5年以内に1千人」の目標に迫った。

一方で、中国共産党(中共)出身職員は主要国連機関のトップやナンバー2ポストを次々と掌握し、国連での存在感を急速に拡大している。日本は人事面から国連での主導権回復と、中共の影響力に対抗する構図だ。

日本政府は2021年に5か年計画を策定し、自国の専門家をこの巨大な国際機関の重要ポストに就かせることを目指している。これは、中共が国連を利用して他国への影響力を拡大している現状への対抗策である。

ドイツの国際放送「ドイチェ・ヴェレ」は12月18日、日本外務省が9日に発表した内容を報じた。それによると、2024年末時点で国連機関に勤務する日本人職員は計979人となり、1990年の統計開始以来、過去最高を記録した。この数字は、2021年に日本政府が掲げた「5年以内に1千人の国連職員を目指す」という目標に迫っている。

また、国連機関で要職に就く日本人の割合も増加しており、94人の日本人職員が副部長級以上のポストを務めている。

中共出身職員が急増 主要国連機関トップを掌握

一方、国連公式サイトのデータによれば、国連で働く中共出身の職員は2009年の794人から、2023年には1647人へと倍増している。

2021年初頭の時点で、中共出身者はすでに国連食糧農業機関(FAO)、国際電気通信連合(ITU)、国際民間航空機関(ICAO)など4つの国連機関のトップを務めていた。国連の下には15の主要国際機関が存在するが、そのうち9機関ではナンバー2の職に中共の職員が就いていた。

専門家「日本は国連で中共に反撃」

一部の日本の専門家は次のように指摘している。中共は多額の援助を通じて発展途上国を取り込みつつ、軍事力を急速に強化している。また、国連などの多国間組織を通じた外交活動によって、他国への影響力を拡大しているという。

東京の国際基督教大学(ICU)国際関係学教授スティーブン・ナギ(Stephen Nagy)氏は「ドイチェ・ヴェレ」の取材に対し、「北京は常に機会をうかがい、最も重要な複数の国連委員会に自国の人材を送り込んでいる」と語った。

ナギ氏はさらに、「国連職員は本来、国連のために働くべきだが、多くの人々が中共の職員は中共の利益促進に忙しく、北京に対する措置を妨害しているのではないかと懸念している」と述べた。

「日本はいま、実行可能な唯一の方法で国連で北京に反撃している」と同氏は強調した。

「日本がこうした行動を取っているのは、国連における自国の主導的地位が低下していると明確に感じており、存在感を高めて国連の実効性を取り戻す必要があると判断しているためだ」と話した。

日本メディアが早期に警鐘 「国連を中共に握らせるな」

中共が国連の要職を次々と掌握していく傾向については、5年前からすでに日本のメディアが注意を喚起していた。

2020年、『日経アジア・レビュー』は論評を掲載し、「中共に国連機関の主導権を握らせてはならない。西側諸国と日本は、北京が自らの型にはめて世界を作り替えるのを止めなければならない」と警告した。

記事は次のように指摘している。「アメリカも自国の候補を世界銀行に送り込み、ヨーロッパ人が国際通貨基金(IMF)の専務理事を務めている。それならなぜ中共が自らの候補を出してはいけないのか、と疑問視する人もいるかもしれない。しかし、明確な違いがある。西側諸国の政府は民主的に選ばれるが、中国はそうではない。中国は一党独裁の共産主義国家であり、その政策決定と実施には透明性が欠けている。こうした専制的な価値観を国連機関に持ち込むことは重大な懸念を招く」と記事は述べている。

アメリカも懸念を表明 元アメリカ国連大使とシンクタンクの警告

この点で日本は孤立していない。アメリカをはじめとする西側諸国もすでに、中共が国連を利用して自国の地政学的目的を推進し、国連の中立性を損なっていることを認識している。

元アメリカ国連大使ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)氏は公開の場で、「北京は国連安全保障理事会の常任理事国としての地位を利用し、正当かつ道徳的な措置を妨害している」と批判した。

さらに同氏は、「中国が静かに、上から下まで国連を腐敗させつつあることも深刻だ。北京はほぼすべての国連機関を支配下に置こうとしており、その行動は悪意に満ち、しばしば破滅的である」と述べた。

アメリカのシンクタンク「民主主義防衛基金(Foundation for the Defense of Democracies、FDD)」は2021年の報告書で、アメリカ国務省と連邦議会に対し、「各国連機関ごとに改革案を提示し、アメリカ主導の国際秩序を再構築すべきだ」と提言している。

林燕