論評
このシリーズ「中国の対日攻撃的レトリックは、実際の軍事力と一致しない」では、中国と日本の軍事力を比較し、実際の衝突が起きた場合、中国人民解放軍(中共軍)の深刻な弱点が露呈し得ることを示している。第1部はこちら。
東シナ海で想定される空中戦
中国共産党(中共)の対日姿勢はより攻撃的になっているが、軍事バランスを踏まえると、現実の衝突に発展する可能性は低い。中共軍の能力と内部問題がその理由である。
もし東シナ海で紛争が始まれば、初期段階は空中戦になる。中共のJ-20と日本のF-35が向かい合い、双方が早期探知と長距離での交戦を重視する展開となる。
表面上は中共が第5世代戦闘機の保有数で優位に立つ。しかし実際には、日本とアメリカのほうが、センサー網、早期警戒機、空中給油機、電子戦能力を高度に統合して運用している。
先に脅威を察知し、情報共有を確実に行い、より長く空中にとどまれる側が主導権を握る。このすべての点で、日本はアメリカの支援とともに優勢である。
中共のJ-20には明確な制約がある。側面と後方からのステルス性が弱く、近接戦闘用の機関砲を持たず、長射程の対艦ミサイルを内部搭載できない。これが海上作戦での役割を制限している。
J-20に次ぐ主力であるJ-16戦闘機とロシア製Su-30は対艦兵器を搭載できるが、そのミサイルは旧式で性能にもばらつきがある。一方、日本のF-2戦闘機は国産の高速・長射程対艦ミサイルASM-3を搭載し、長距離から艦艇を攻撃できる能力を有する。
たとえ中共が東シナ海上空に多数の航空機を送り込み、制空権争いを維持したとしても、日本の艦艇を効果的に攻撃する能力は依然として不足している。
中共空軍は、大規模かつ継続的な航空作戦を支える空中給油機が足りず、訓練水準にもばらつきがある。戦闘機・爆撃機・早期警戒機の連携運用もまだ成熟していない。
中共はミサイルを誇示するが 自信は乏しい
中共の長距離爆撃機戦力は、見かけ上は戦力の幅を広げているが、実際には限界が大きい。
H-6爆撃機は、中共が宣伝映像で強調する空中発射型ミサイルYJ-21を搭載できる。しかし、ロケット軍の大規模な粛清や、ミサイル計画全体で続発する品質問題により、中共が「切り札」として宣伝してきたシステムの信頼性は疑われている。
中共が多数の新型対艦ミサイルを並べて見せるのは、実力ではなく不安の現れとみるべきだ。
9月には、YJ-15、YJ-17、YJ-19、YJ-20といった新型を一度に公開し、旧式のロシア設計ベースのミサイルからは注意をそらしていた。
多数の新型を同時投入するのは自信の表れではない。それはむしろ、中共軍自身が「どれが実際に使えるのか」を判断できていないことを示唆している。
仮に中共がこれらの新型対艦ミサイルを日本に向けて発射したとしても、あるいはDF-26弾道ミサイルを日本本土に撃ち込んだとしても、その真の性能はすぐに明らかになる。もし大半が迎撃されれば、イランによるイスラエル攻撃の例と同じく、中共が誇示してきた兵器の威信は失われる。
日本の防空体制は成熟している。
日本は約30基のPAC-3部隊を保有し、イージス艦にはSM-3、SM-6が搭載されている。いずれも実戦で実績がある。日本の防衛産業は高度で、最近では国産PAC-3迎撃弾をアメリカに供与したほどだ。
対照的に、中共のミサイルは実戦で性能を証明したことがない。
中共が強調する長距離ロケット砲戦力はさらに信頼性が低い。台湾を脅かすことはできても、日本本土に精度を保って到達する能力はない。「日本近海の島礁作戦」で使えるかのような主張は非現実的であり、日本領土への攻撃を軽々しく語るその姿勢自体が、アメリカの軍事介入を招くことになる。
中共は日米同盟を挑発するリスクを取れない
これが核心である。日本への攻撃は日米同盟の発動につながる。
アメリカは衛星情報、電子戦支援、標的データ、ミサイル防衛の強化を提供する。中共の測位システム「北斗」を妨害し、精密攻撃を阻害することも可能である。
もし中共が日本の米軍基地を攻撃すれば、アメリカは報復する正当な理由を得ることになり、その反撃は東シナ海の範囲を超える可能性が高い。中共はそれを理解している。
中共軍は腐敗と内部混乱に揺れている。数十人の将官が解任され、調達をめぐる不祥事や装備の品質問題により、主要システムへの信頼性が疑われている。中国の軍事紙でさえ最近は「失敗を受け入れる必要」や「重要技術は買うことも借りることもできない」といった表現を用いており、通常では隠される弱点を認めざるを得ない状況にある。
このような状況下で、中共が日本に「正面からの打撃を加える」と主張しても、実際には準備というより警告の色合いが強い。
中共の幹部は国内外の圧力に直面しており、軍事力の誇示が、たとえ誇張を含んでいても、国内の支持を固めるための手段になっている。
いま中共軍に広がる腐敗は、清朝末期のものを上回るとの指摘もある。もし中共が戦争に踏み切れば、指揮官の戦場離脱や兵士の離反といった、深刻な事態に陥るリスクがある。
要するに、中共軍の弱点が露呈し、アメリカの介入を引き起こすような実際の衝突を、中共が選ぶ可能性は低い。

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