中国の通販で、メンズ服にまさかの「灰皿」がぶら下がるという異様な光景がついに見られ始めた。
陶器製や金属製の灰皿がタグ代わりに取り付けられ、外すには破損を伴い、付けたまま外出すれば目立ちすぎて恥ずかしい。いわば「着て返す客」を止めるために、店側が苦悩の末に編み出した物理的な防御策である。
なぜここまで極端な対策が必要なのか。それは、中国の通販で「数日着て外出してから返品する」という行為が横行しているからである。写真だけ撮って返す、イベントで1日だけ着て返すなど、悪用が止まらない。
その結果、店側は灰皿だけでなく、ファスナー丸ごと鍵で固定する方式など、常識外れの対策を次々と導入するようになった。信頼ではなく「外せない仕組み」が商品の安全を守る手段になっている。



中国の通販には、「受け取ってから7日以内なら理由を問わず返品できる」という制度がある。本来は消費者保護のための仕組みである。しかしこれが長年悪用され、服の返品率は男物で30〜40%、女物では50〜60%、ライブ配信販売では80%を超えるという異常な水準に達している。
特に婦人服では「10着買って9着返品」が珍しくなく、返品された商品には化粧汚れや着用痕が残り、再販売できないケースも多い。
広州のある店では、セールで仕入れた500万元分のうち400万元が返品され、着用痕が多く廃棄せざるを得ず、最終的に80万元(約1760万円)の損失を抱えた。業者の倒産は珍しくない。
問題は一般消費者にとどまらない。返品制度の悪用が教育現場にまで広がった例もある。遼寧省瀋陽市では、教師が生徒に「運動会で使ったら返品すれば良い」と指示し、60人以上がスカートを汚れたまま一斉返品する事件が起きた。この集団返品事件は「モラル崩壊の象徴」として大きな批判を呼んだ。

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