自民党は21日、政府・与党で決定した総合経済対策について記者会見を行い、物価高から国民生活を守ることを最優先に据えた対策を示した上で、成長投資や防衛力強化を柱とする大型政策パッケージを公表した。対策の規模は一般会計で17兆7千億円程度、減税や特別会計を含めた「真水」は21兆3千億円となり、財政投融資を加えた国の財政措置は総額25兆5千億円に達する。
首相は記者会見で「国民の不安を希望に変えるべく、あらゆる政策手段を総動員して強い経済を実現する」と述べ、迅速な物価対策と中長期の成長戦略を一体で進める姿勢を強調している。
財源については税収の上振れや税外収入を活用するが、なお不足する分は国債発行で対応する。ただし補正後の国債発行額は前年度の42兆1千億円を下回る見通しであり、財政の持続可能性に配慮したとしている。
対策の第一の柱となる物価高対応では、ガソリン税の暫定税率を本年12月31日、軽油引取税を来年4月1日に廃止する方針を示した。
補助金の活用を通じて価格を引き下げる考えで、減税効果は総額1兆円、世帯当たりでは年間約1万2千円の負担軽減を見込む。加えて、電気・ガス料金については来年1月から3月までの3か月間、平均で世帯当たり7千円程度を軽減する支援を行う。
「103万円の壁」への対応としては、1.2兆円規模の所得減税を実施し、納税者一人当たり2万〜4万円の軽減が年末調整に反映される。また、物価動向を踏まえた基礎控除の引き上げについても2026年度の税制改正で検討を進める。
さらに、重点支援地方交付金を拡充し2兆円を計上することで、地域の実情に応じた生活支援や物価高対応を後押しする。このほか、子供一人当たり2万円を支給する「物価高対応子育て応援手当」を新たに盛り込んだ。
医療・介護分野では、赤字経営の施設を中心に報酬改定を待たず処遇改善を前倒しで実施する。医療機関の従事者にはプラス3%、介護従事者には月1万円をそれぞれ半年分引き上げる。診療材料費の支援や病院の建て替え、病床数の適正化など、経営改善策も併せて講じる。
第2の柱となる危機管理投資・成長投資では、GX(グリーントランスフォーメーション)、AI、半導体など既存の資金枠組みに加え、経済安全保障上重要と位置付ける17分野への支援に着手する。複数年度にわたる事業の予見可能性を確保し、民間投資を喚起する考えを示した。
第3の柱として、防衛力と外交力の強化を掲げた。国際情勢の緊迫化を踏まえ、人的基盤の拡充や任務遂行環境の整備を進めることで、防衛力の抜本的強化を加速させる。
国家安全保障戦略が示す対GDP比2%水準に相当する11兆円を2025年度中に確保するため、当初予算と合わせて1.1兆円を追加で措置する方針を明らかにした。
このほか、自然災害や物価高の再燃、クマ被害の拡大など予期せぬ事態への備えとして、予備費を追加で確保する。首相は会見で「補正予算案を編成し臨時国会に提出する。迅速に成立させ、暮らしや地域を確実に支えていく」と述べ、理解と協力を求めた。
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