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脱中国依存進む トヨタなど日本大手3社 インドで新工場建設へ

2025/11/06
更新: 2025/11/06

中国への依存を減らし、グローバルな供給網を再構築する動きが進む中、トヨタ自動車、本田技研工業、スズキの日本大手3社がインドへの大型投資を加速させている。3社は数十億ドル規模を投じて新たな自動車生産ラインや工場を整備する計画で、インドがアジアの次世代製造拠点として存在感を高めている。

ロイター通信によると、世界最大の自動車メーカーであるトヨタと、インドで約4割のシェアを持つスズキは、それぞれ合わせて総額110億ドル規模の投資を発表。世界第3位の自動車市場であるインドにおいて、製造および輸出能力の強化を図るとしている。さらに先週、ホンダもEVの新型車をインドで生産・輸出する計画を明らかにした。

業界関係者によれば、インドの低コストな労働力、豊富な人材、そしてモディ政権による投資優遇策が、日系メーカーが中国から製造拠点を移す主な要因となっている。

競争回避と政策の追い風

インド市場は中国製EVの参入をほとんど認めていない。トヨタやスズキなど日本勢はBYDなど中国メーカーとの激しい価格競争を回避できている。また、インド政府による中国資本への投資制限も、日本企業にとって間接的な追い風となっている。このため、上海汽車集団傘下のMGモーターやBYDなど中国ブランドは、インドでの事業拡大が難しい状況にある。

一方、中国国内ではEVメーカー間の過酷な価格競争が続き、収益確保が難しくなっている。さらに中国メーカーは東南アジアなど海外市場への進出を加速させ、日本勢のシェアを脅かしている。

ただし、インド市場でも競争は激化している。地元メーカーのタタ・モーターズやマヒンドラ&マヒンドラはSUVのラインアップ拡充を進め、市場シェア争いが一層熾烈になっている。

インドに熱視線 中国は冷え込み

データによると、日本からインドの交通・運輸分野(自動車産業を含む)への直接投資額は、2021〜24年の間に7倍以上に急増し、2024年には2940億円(約20億ドル)に達した。

一方で、同期間における日本の対中直接投資は大幅に減少。中国の交通・運輸分野への投資は83%減の460億円にとどまっている。

インド政府は、外国製造業の誘致を通じてインド経済の年平均8%成長を維持することを目指しており、日系自動車メーカーの動きはこの方針と一致している。

日本勢の現地化戦略

トヨタ 現地サプライチェーンの強化

トヨタの佐藤恒治社長は「インド市場は極めて重要で、今後も確実に成長していく」と強調。2030年までに15車種の新型・改良モデルを投入する計画を明らかにした。総額30億ドル以上を投じて生産能力を拡大し、最終的には年100万台超の体制を整える見通しだ。また、日印両国の部品メーカーと連携し、ハイブリッド車関連部品の現地生産も強化する。

ホンダ、スズキ 輸出拠点として拡大

ホンダにとってインドは二輪車事業の最大市場であり、三部敏宏社長は四輪車事業の拡大にも注力する方針を示した。新型EVゼロシリーズの生産・輸出拠点の一つとして、インドを中核に据える計画だ。

スズキは80億ドルを投じ、インドでの年間生産能力を400万台に引き上げる。現地子会社マルチ・スズキ・インディアはすでにインド最大の自動車メーカーであり、同国最大の輸出企業でもある。

アナリストの見方

S&Pグローバル・モビリティのアナリストは、「インドが近隣諸国に対して取る保護主義的な政策は、日本の自動車メーカーにとって結果的に有利に働いている」と指摘。
「そのため、各社はインドでの投資拡大を新たな成長機会とみなしている」と述べた。

李言