10月7日夜、中国南部を東西に貫く主要幹線、広州—昆明高速道路(G80広昆高速)で崩落事故が発生した。広西チワン族自治区の百色(ばいせい)市付近で、長さ約30メートル、深さ2メートルを超える大きな陥没が確認され、道路は完全に封鎖された。
官製メディアは「連日の大雨で川の水位が上がり、地面がゆるんだ」と説明した。とまあ、つまりはいつものように「雨のせい」である。だが世論は冷ややかだ。誰もそんな説明を真に受けない。「周囲は無事なのに高速だけ崩れるのはおかしい」「どうせまた手抜き工事だろう」皮肉と怒りの声が民間で渦巻いた。
実は「天候のせい」は、中国当局のお決まりの説明だ。
2023年7月、黒竜江省チチハル市では中学校の体育館の屋根が突然崩れ落ち、女子バレーボール部の生徒19人が下敷きとなり、11人が死亡した。当局は「屋根の上に置かれた資材が雨を吸って重くなったため」と説明した。そのわずか数か月後の同年11月、同じ黒竜江省のジャムス市でも体育館の屋根がそっくり抜け落ち、3人が死亡。当局は今度は「雪が溶けて再び凍り、重さで屋根に負荷がかかった」と発表した。
雨のせい、雪のせい、つまりは、いつだって「天候のせい」である。だが、そうした言い訳の裏には、長年放置されてきた構造的な欠陥がある。
中国では昔から、橋や道路、建物の崩落が繰り返され、そのたびに「豪雨」や「地質の問題」と片づけられてきた。だが現場では鉄筋の少なさや粗悪なコンクリートが目立ち、手抜き工事の実態が浮かび上がる。
短期間で利益を上げるために資材を削り、検査を形だけで済ませる「おから工事」は、いまや世界に名を轟かす中国発の名物産業となった。金銭至上主義が社会の隅々まで浸透し、他人の安全よりも自分の利益が優先される。その帰結が、正にいま目の前の崩れ落ちた道路かもしれない。
もちろん官製メディアはそうは認めない。だが国民はみな知っている。本能でそう疑わざるを得ないほど、「おから工事」はこの国にありふれている。


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