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中国・北京で消費が著しく低下 党メディアが呼びかけも効果見られず

2025/10/08
更新: 2025/10/08

中国共産党政権の統計によれば、中国の主要都市では消費の低迷が続いており、中でも北京では急速な落ち込みが顕著となっている。こうした状況のなか、中共の機関紙『人民日報』は10月の連休期間中、5日連続で署名入りの記事を掲載し、国民に経済への信頼回復を呼びかけた。

しかし、専門家はこうした呼びかけだけで現実を変えることは難しく、経済悪化の進行とともに官民の対立が一層深まるおそれがあると指摘している。

9月30日から10月4日にかけて、人民日報は重要報道を載せる紙面に「鍾才文」名義の記事を連日掲載した。記事では、景気の悪化を感じる一部の企業や個人に対し、「国内の経済全体を否定すべきではない」と訴えている。

「鍾才文」という署名が人民日報に登場するのは、通常、重要な経済政策や理論を解説するものであり、共産党の公式な立場を示すものとされている。

党メディアが連日呼びかけを続けている背景には、中国経済の低迷と、民間における消費信頼の持続的な下落がある。

今年8月には若年層の失業率が再び過去最高を更新。中共当局は年初に「消費喚起特別行動計画」を打ち出し、一部の物品販売では一定の効果が見られたものの、サービス消費は減速し、高級品市場も冷え込みを見せている。

中共当局が発表する統計によれば、8月の社会消費品小売総額は前年同月比3.4%増となった。1月から8月の累計でも前年同期比4.6%増を記録しているが、パンデミック前の2019年同期の8.0%増と比べると、回復力の鈍さが際立つ。

全国平均と比べると、北京の消費は特に落ち込みが深い。

北京市統計局によると、8月の社会消費品小売総額は前年同月比で11.4%減、1〜8月累計でも5.1%減となった。これは、市当局が自動車や家電を対象に「旧品下取り・新品購入」補助政策を実施しているにもかかわらず生じた現象である。

一方、上海市では8月の消費がやや持ち直したが、1月から8月までの累計では前年同期比3.7%増にとどまり、全国平均を依然下回っている。

米国の経済学者デイヴィー・ウォン氏は、こうした現象の背後には複数の要因が重なっていると分析する。同氏によれば、「第一に、信頼と期待の喪失が挙げられる。住宅価格の下落によって住民の資産価値が減少し、いわゆる『資産効果の逆転』が消費意欲を押し下げている」という。

ウォン氏は、「第二に、雇用と所得への圧力だ。多くの業界が低迷し、解雇や賃金削減が進むなかで可処分所得が減少し、消費がさらに縮小している。第三に、地域や都市構造の違いも無視できない。一線都市はコストが高く、資源が集中しているため政策の影響を受けやすいが、内陸部や二・三線都市は消費耐性が弱く、回復力に欠けている」と指摘している。

中国経済は、習近平政権が2012年に発足して以降、成長の鈍化が続いている。2018年の米中貿易戦争を経て、パンデミック期には厳格な「ゼロコロナ」封鎖政策が実施され、不動産および教育産業への締め付けも強まった。その結果、経済の落ち込みはさらに深刻化した。

2日付の人民日報の記事は、「転換が遅れている伝統産業や企業、従業者は生活が厳しくなる可能性がある」と認めつつも、「木を見て森を見ず」になってはならないと強調した。

これに対し、経済学者ウォン氏は「官製メディアによる呼びかけや政策メッセージの発信は、市場心理を安定させ、負の感情の拡散を防ぐ意図がある。しかし場合によっては、それが真実の隠蔽や不安の抑圧と受け取られ、逆効果を招くこともある」と指摘している。

人民日報の記事はさらに、中共の指導力と「集中して大事を成す能力」こそが、中国経済を安定的に成長させる優位性であると主張している。

一方、大紀元のコラムニスト王赫氏は、中共がすでに「タキトゥスの罠」に陥っており、経済の下向きとともに官民対立が中国社会の主要な矛盾となりつつあると分析している。

王氏は、「かつての急速な経済成長は多くの矛盾を覆い隠してきたが、経済が停滞すれば国民の所得は減少し、生活が困窮する」と指摘。その上で、「中共の財政配分は権力エリート層に偏っており、それが官民間の亀裂をさらに深めている」と語った。

さらに王氏は、社会的対立の激化が党内権力闘争を刺激し、経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす。これはソ連崩壊前にも見られた現象であり、中国の状況はソ連とは異なるものの、現状が続けば「ソ連型の展開」が中国でも起こり得ると警告している。