上海市の名門校「上海交通大学附属中学嘉定分校」で8月14日、高1の女子生徒・欧陽雅文さん(15)が死亡した。欧陽さんは1週間にわたって行われていた軍事訓練の最中に倒れ、心臓が停止したとされる。
当時の気温は40度近くに達し、気象台は高温警報を発令していた。にもかかわらず生徒たちは炎天下で極限状態の訓練を強いられ、その結果、悲劇を招いた。
事故後、予定されていた文芸発表会は急きょ中止となり、学校側は「設備の不具合」と説明した。しかし内部では生徒死亡の事実が広まり、翌15日にはSNSに断片的な情報が流出。しかし直後に関連情報はすべて削除され、言論は封じられた。
さらに学校幹部は生徒に「外部に話すな」と威嚇していたことも明らかになった。亡くなった生徒の友人は、SNSで「真っ先に隠蔽に走るような学校は、教育の名に値しないし、人を教え育てる資格もない」と痛烈に批判し、強い怒りをぶつけている。
外に立っているだけでも熱中症になりかねない猛暑の中、なぜ体力の限界に挑む訓練を強いられるのか。本紙の取材に応じた市民の多くは「あえて極限状態に追い込み、自己意思を停止させ、命令に無条件で従う駒にするためだ」と口をそろえる。
上海市民の柳さんは「一人っ子世代の甘やかされて育った子どもをそんな環境に置けば事故は必然。独裁体制は子どもに服従の習慣を植え付け、人間性を殺している」と批判。文化業界に携わる金さんも「軍事訓練は人々から思考を奪い、従属を徹底的に植え付ける仕組みだ」と断じた。
中国では過去にも、夏の軍事訓練中に死亡事故が繰り返されてきた。2024年8月には山東省と河南省で高校生が相次いで熱中症で命を落とし、2023年には広東省で大学生が教官の無理な指導のもと死亡した。こうした悲劇にもかかわらず制度は改められず、「軍事訓練」を大義名分とした、生徒に無条件の服従を植えつける仕組みが維持されている。
命を顧みず服従を優先する統治は、教育の現場に取り返しのつかない歪みを残すだろう。


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