中国広東省佛山市で、蚊が媒介するウイルス「チクングニア熱」が急速に拡大し、7月末時点で市内の感染者は4,000人を超えたと公式発表された。ただし、実際の感染状況については不透明なままである。
発熱や発疹、関節痛などの症状を伴うこのウイルスは、北京や上海でも感染が確認されており、中国全土で警戒強化中だ。

感染拡大を受けて当局は、全住民を対象に血液を用いたPCR検査(核酸検査)を実施中で、市内の各医療機関前では、検査を受けるために並ぶ市民の長い列が確認され、防疫作業員が路上や公共スペースで消毒液を撒く様子も各地で見られた。

SNSには「また新型コロナが始まったかのようだ」「中共が再び都市封鎖型の防疫措置を始めるのでは」といった、市民の戸惑いや不安の声があふれた。
こうした中、佛山当局は、蚊の発生源を調査するとして、各家庭への立ち入りを開始したが、住民が不在の住宅でも鍵を破壊して強制的に侵入し、拒否した世帯には電力を停止、「ブラックリスト」に登録するという措置も取られた。市民からは「通知も書類もなしに鍵を壊された」「もはや法も理屈も通じない」といった怒りの声が噴出した。

7月31日から、さらに佛山市政府は「7日間蚊の撲滅キャンペーン」を開始し、住民に対し、毎日2回の蚊駆除作業や蚊帳の設置、蚊取り線香の使用、水生植物の廃棄などを義務付けた。行政主導で市民を一斉動員するこの防疫方針は、毛沢東時代の「除四害(ねずみ・蚊・ハエ・スズメ撲滅運動)」を思わせるもので、「70年前のやり方がまた復活した」と冷ややかな反応が広がった。

こうした影響は佛山市外にも広がり、最近佛山を訪れた場合や、あるいは身分証の住所が佛山というだけで、他都市のホテルで宿泊を拒否されたり、病院でデング熱の検査を強制されたという報告が相次いだ。
SNS上には「佛山に行った人のリスト」まで出回っており、「まるでコロナ初期の『私は武漢から来た』を再現しているようだ」との声も多い。この言葉は当時、隔離や差別の対象となった市民を象徴し、SNSでは「最も効果的に人を遠ざける一言」と皮肉られた。
(蚊の駆除と消毒作業を行う防疫作業員。2025年7月下旬、中国広東省佛山市)
新型コロナの記憶が癒えぬ中、中国社会に再び「強権防疫」が覆いかぶさろうとしているが、人々が本当に恐れているのは、蚊そのものではなく、それを理由に繰り返される「人間による支配」なのかもしれない。
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