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中国自動車業界で過当競争が深刻化 利益率の低迷招く

2025/07/15
更新: 2025/07/15

中国共産党は、新エネルギー車(EVなど)の世界販売台数が1位となり、輸出台数も日本を超えたと誇示している。しかし、その「輝かしい瞬間」の裏で、重慶市元市長の黄奇帆氏は、中国の経済メディア「貝殻財経(Shell Finance)」が主催する2025年の貝殻財経年会で、「中国の自動車3千万台を売って得た利益は、トヨタ1社の利益に及ばない」と明かした。専門家は、中国自動車業界では深刻で過度な内部競争(内巻)が起きており、1台あたりの利益がとても低く、「話題にはなるが儲からない」状態だと指摘している。 

黄奇帆氏は「2025年6月までの中国自動車製造業の利益率はわずか5%であり、3千万台の販売による利益は、日本のトヨタが900万台売った時の利益よりも低い」と述べた。

トヨタ自動車は2025年度(2024年4月~2025年3月)の決算見通しで、純利益が前年度比34.9%減の約1550億人民元(3兆1千億円)と予測した。2024年度の純利益は約2337億人民元(4兆7650億円)に達した。

DearAuto(子供向けの電動乗用玩具などを展開しているブランドで、自動車に関するレビューや情報発信もSNSや動画サイトで行っている)の統計によると、中国の上場乗用車メーカー18社のうち、2024年に黒字だった13社の純利益合計は約1226億人民元(2兆5268億円)にとどまった。赤字の5社も含めると、全体の純利益は900億元(1兆8549億円)に満たず、トヨタの年間利益の40%にも達していない。

1台あたりの利益で比べると、2025年度のトヨタ(レクサスを含む)の世界販売台数は1040万台と予想され、1台あたりの利益は約2.29万人民元(47.2万円)である。一方、中国の大手メーカーBYDの1台あたり利益はわずか0.94万元(19.4万円)に過ぎない。

中国自動車業界の内巻が深刻化

経済学者の任沢平氏も「中国車メーカーは話題にはなるが儲からない」と2024年時点で指摘していた。2023年には中国が世界最大の自動車生産・販売・輸出国となり、それぞれ3016万台、3009万台、522万台を記録し、日本(輸出442万台)を抜いて世界一となった。

2024年上半期、中国の上場自動車メーカー18社の利益合計は488億人民元(1兆58億円)だった。一方、トヨタは1社で1253億人民元(2兆5824億円)、フォルクスワーゲンは795億人民元(1兆6385億円)、GMは421億人民元(8677億円)の純利益を上げている。

中国自動車業界の内巻が激化する中、1台あたりの利益は非常に低い。理想汽車(Li Auto)は2023年に1台あたり3万元(62万円)の純利益だったが、2024年上半期には9千元(18万5千円)にまで下落した。BYDも1万元(20万6千円)から0.98万元(20万2千円)に減少し、上汽、長安、北汽、広汽の1台あたり純利益は2千~3千元(4万1千~6万2千円)の間で推移している。新興メーカーの多くは「1台作るごとに赤字」という状況である。

南方科技大学の劉科教授は、「中国自動車業界は深刻な過剰生産に陥っている。2023年の生産台数は約3800万台で世界の3分の1を占めるが、稼働率は60%程度にとどまる。2024年には中国の新エネルギー車メーカーが100社を超えたが、大半が赤字で、業界全体の利益率は5%に満たない。トヨタは2023年だけで約300億ドル(4兆4400億円)の純利益を上げている」と指摘している。

劉科氏はさらに「資源の浪費も深刻で、中国には多くの自動車工業団地が建設されたが、稼働率が低く、設備は使われておらず、労働者も手持ち無沙汰だ。政府はGDPを伸ばすために企業に補助金を出し、土地もほぼ無償で提供しているため、企業は無計画に工場を拡張したが、受注が追いつかず、在庫が山積みとなり、価値を生み出せていない。内巻が激しく、価格競争で利益が出ず、小規模ブランドは破産に追い込まれる。2023年には少なくとも5~6社が倒産し、従業員が解雇され、サプライヤーも代金を回収できていない」と述べている。

中国社会問題専門家の夏一凡氏は大紀元の取材に対し、「新エネルギー車の現状は中国経済全体の氷山の一角に過ぎない。粗製濫造で、技術・管理水準も低く、生産量は多いが利益は低い。話題にはなるが儲からないのは、悪質な競争による低収益が原因であり、業界の将来は暗い」と語っている。

張鐘元