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穀物収穫量を最大50%減少 中国共産党流の農業テロリズム

2025/06/23
更新: 2025/06/23

論評

米司法省は、中国籍の訪問研究者、簡雲清(ジャン・ユンチン)と劉遵勇(リュウ・ズンヨン)の2人を、アメリカに致命的な真菌「フザリウム・グラミネアルム」を密かに持ち込んだとして逮捕・起訴した。この真菌は、アメリカの穀物生産に壊滅的な被害をもたらす可能性がある。

アメリカ国民は、この2人の研究者がアメリカ法を故意に破っただけでなく、中国共産党(中共)の指示を受けて行動した可能性を理解すべきだ。簡は中共の党員とされ、劉は簡の依頼でこの病原体を密輸したことを認めている。

彼らは単なる悪徳な科学者ではなく、組織的な目的を持っていた可能性が高い。

この事件は、中共が「超限戦」と呼ばれる戦略を通じてアメリカを徐々に弱体化させようとする計画の最前線を示している。

『超限戦(Unrestricted Warfare)』は、1999年に中国の二人の大佐、喬良と王湘穂によって著された影響力のある書籍である。この本では、全面的な軍事衝突を避けつつ、あらゆる手段でアメリカを弱体化・打倒する戦略が提唱されている。

彼らが挙げた戦争手段には、経済戦、サイバー戦、心理戦、生物戦、そして農業戦までもが含まれている。

簡と劉による真菌の密輸は、この超限戦の教科書的な実例だろう。フザリウム・グラミネアルムは、小麦、大麦、トウモロコシなどの穀物に「穂枯病(ほがれびょう)」を引き起こす。この病害は収穫量を最大50%減少させるだけでなく、穀物を人間や家畜に有害なカビ毒(マイコトキシン)で汚染する。世界で最も破壊的な植物病原体の一つであり、毎年数十億ドルの農作物の損失を引き起こしている。

米司法省がこの真菌を「農作物を標的とする潜在的農業テロ兵器」と呼ぶのも当然だ。中国が生物兵器プログラムを保有している可能性も考えられる。コロナを思い出してほしい。遺伝子操作で高病原性に改変されたフザリウムがアメリカ中西部に密かに拡散された場合、小麦、大豆、トウモロコシの生産が壊滅的な打撃を受けるだろう。

アメリカは世界の穀倉地帯の一つだ。小麦とトウモロコシの主要輸出国として、国内だけでなく世界の食糧供給を支えている。

主要な小麦とトウモロコシの輸出国であるアメリカが、中共による農業テロで農業が壊滅した場合、国内の食料価格高騰や危機だけでなく、アメリカ産穀物に依存する国々で食糧市場の混乱や社会不安を引き起こす可能性がある。中共は、こうした混乱を自国の権力と影響力拡大の機会と捉えている。

中国は過去の飢饉の歴史から食糧安全保障の重要性を学び、敵対国に対して食糧安全保障を武器化する動機を持ってきた。これが、中国がアメリカで数十万エーカーもの農地を買い漁っている理由の一つだ。(もう一つの理由は、これらの農地の多くが機密性の高い軍事施設の近くにあることだ)

同様に懸念されるのは、中国がアメリカの食品加工産業にも大きな株式を取得していることだ。中国企業WHグループは、世界最大の豚肉生産企業スミスフィールド・フーズを買収している。このような動きは、中国がアメリカの食料供給の一部を掌握する潜在的可能性を秘めており、『超限戦』の著者が示唆するように、混乱を引き起こすために利用される可能性がある。

中共は常にアメリカの脆弱性を探っている。そして、アメリカの「金色の穀物が波打つ広大な農地」が無防備で攻撃しやすい標的であることを理解している。

私たちもそのことにまったく気づいていなかったわけではない。すでに2015年には、米中経済安全保障調査委員会の報告書が、中国が生物剤を含む手段でアメリカの農業を標的にする可能性を模索していると警告していた。

今回のフザリウム密輸事件は、その警告が現実となったことを示している。

よく考えてみてほしい。もし、ある国を飢えさせることができたり、食料輸入に依存させることができるなら、その国を屈服させるのに一発の銃弾すら必要ないのだ。

コロナパンデミック中、中共はマスク、人工呼吸器、個人防護具のグローバルサプライチェーンを操作し、輸出制限や政治的圧力を通じて他国に影響力を及ぼした。食糧でも同様のシナリオを想像してみてほしい。

中国は長年穀物を備蓄してきた。中国は世界の小麦備蓄の50%以上を保有していると推定されており、アメリカ農業が打撃を受けた場合、自国の輸出で市場を支配し、アメリカに譲歩を強いる可能性がある。

今回のフザリウム密輸事件は、警鐘であると同時に、単なる孤立した事例ではなく、より広範な戦略の一部だ。

北京は長期戦を仕かけており、勝利を目指している。アメリカは食糧供給網の安全保障を強化し、中共による農地や食品企業の所有を制限し、農業バイオセキュリティへの投資を増やすべきだ。農業テロを国家安全保障上の脅威として真剣に扱わなければならない。

農業テロは中共の兵器庫の中の一つの手段に過ぎない。

そのより大きな目標は、アメリカ経済の弱体化や食糧供給の混乱にとどまらず、アメリカに変わって世界の覇権を握ることだ。

習近平が語る「中華民族の偉大なる復興」とは、2049年の中華人民共和国建国100周年までにアメリカを凌駕する「中国共産党の計画」を指している。
 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
人口問題研究所(Population Research Institute)理事長。著書に『Bully of Asia(中国の夢はなぜ世界秩序にとっての新たな脅威か)』など。元全米科学財団の研究員。生物海洋学、東アジア研究、文化人類学の上級学位を取得。スタンフォード大学では著名な遺伝学者ルイジ・カヴァッリ=スフォルツァ博士のもとで人類生物学を学んだ経歴を持つ。米国を代表する中国専門家の一人であり、1979年には全米科学財団から選出され、米国人社会学者として初めて中国での実地調査を行った。