「あの光景、自分の母と重なって涙が出た。やめてくれ!」
中国・江蘇省の大学で女性清掃員が学生の荷物をたった一人で運ばされる姿に、ネット上では悲鳴と怒りが巻き起こっている。
問題が発生したのは江蘇省南京市の三江学院で、夏休みを前に寮の改装を理由にして、学生に退去通告が出されたが、当初学校が約束していた引っ越し業者は現れず、実際に荷物を運んでいたのはたった一人の中年女性清掃員だった。
4階から繰り返し重たい荷物を担ぎ下ろすその姿を見て、学生たちは動画を撮影しSNSに投稿し、「非人道的すぎる」「目を覆いたくなる光景…」「高い学費を取っておいて引っ越し業者一つ雇えないのか」と怒りの声が一気に拡散し、事件は瞬く間に炎上した。
これに追い打ちをかけたのは、学校の公開資料に記されていた「荷物搬出費:37万元(約750万円)」という項目だった。「その金はどこへ行った? まさかおばちゃんが全部もらったとは思えない」との疑念が広がり、事態はさらに過熱した。
この事態に、大学側は6月20日、「業者に委託してあった、清掃員1人が全てを担った事実はない」と慌てて否定して火消しを図るが「いいやこの目で見た。全部おばちゃんが1人で運んでいた」と学生たちは一歩も引かない。
さらに、問題の清掃員が「廃棄されたトイレ」を寝床にしていたとの新たな証言が加わり、波紋は引っ越し問題から人権と労働の問題へと拡大した。

教育とは、知識を教える場である前に、人間の尊厳を学ぶ場所であるべきだ──。だが、現実には、最も声の小さい者にすべてを押しつけ、見て見ぬふりをするシステムがまかり通っていた。
「母を思い出した」と涙した学生たちは、この経験をきっと一生忘れないだろう。そしてこの事件は、彼ら自身が社会に出たときに、どう人を扱うか、その根本的な姿勢を問う人生の授業として刻まれたに違いない。
「母を思い出して涙が出た」と言ったその気持ちを、どうか人生の節目で思い出してほしい。自分の母を守りたければ、誰かの母を犠牲にする社会の構造に、加担してはならない。
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