日本と欧州連合(EU)は8日、都内で閣僚級の「日EUハイレベル経済対話」を開催し、中国製品の過剰な流入に対して共同で対応する方針を確認する見通しとなった。会談には日本の岩屋毅外相、武藤容治経済産業相、EUのマレシュ・シェフチョビチ欧州委員会貿易・経済安全保障担当兼機関間関係・透明性担当委員が出席する。背景には、米国が導入した新たな関税政策により、アジアや欧州市場への中国製品の流入が加速し、各国経済に悪影響を及ぼす懸念が高まっていることがある。
米国は2025年4月、すべての輸入品に10%の関税を課す「相互関税」政策を発表し、特に中国製品には追加の関税措置も導入した。これにより、中国から米国への輸出が減少し、行き場を失った中国製品が日本やEUなど他の市場に大量に流れ込むリスクが指摘されている。特に電気自動車(EV)などの分野では、中国製品の供給が需要を大きく上回る状況となり、国内産業への打撃が懸念されている。
日EUハイレベル経済対話は、2018年に設立されて以来、経済分野での連携や課題解決を話し合う枠組みであり、今回で6回目の開催となる。今回はシェフチョビチ欧州委員が大阪・関西万博に出席するため来日した機会を利用して実施される。
米国の関税政策は、世界の貿易構造に大きな変化をもたらしている。アジア経済研究所などの分析によれば、米国の高関税政策により北米の貿易量が大幅に減少し、アジアや欧州にも間接的な悪影響が及ぶとされる。特に米国市場への輸出依存度が高い国ほど打撃が大きいが、日本やEUのように輸出先が分散している国でも、自動車など特定産業への影響は避けられないとの指摘がある。
EU側も米国の関税政策に強い懸念を示しており、米国から締め出された製品が域内に流入することでデフレ圧力や産業競争力の低下を招く恐れがあるとみている。欧州委員会は、米国との交渉を続ける一方で、域内市場の保護や競争力強化策の必要性を訴えている。
今回の日EU会談では、こうした国際的な経済環境の変化を受け、両者が中国製品の過剰流入対策で連携を強化し、産業基盤の維持や公正な競争環境の確保を目指す方針が確認される見通しである。
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