複数のメディアによると、中国・北京で8日、日本人の美容師3人が中国共産党(中共)当局に拘束された。容疑は「不法就労」であり、現地の美容室で就労ビザの範囲を超えて働いていた可能性があると言う。日本大使館は、既に本人らの安否確認を行い、支援を進めている。
拘束が行われたのは、北京市内の美容室で、関係者によれば、3人はいずれも中国の美容師資格を持たず、必要な許可を得ないまま施術にあたっていたとみられる。
中国で外国人が合法的に働くには、Zビザ(就労ビザ)と雇用主による労働許可証の取得が義務付けられていた。業種によっては、追加の国家資格が必要とされることもあり、これらの法令に違反した場合は、拘束や罰金などの処分を受ける可能性があった。中国では、美容師は国家資格が必要な職種であり、外国人もその対象となる。日本で取得した美容師免許は、中国では効力を持たず、無資格で業務を行えば違法と見なされ、罰則の対象である。
今回の事件を受けて、日本大使館は、在留邦人に対し、「現地の法律を十分に理解し、ビザの種類や業務内容が法的に許容された範囲内にあるかを確認するように」と注意を呼びかけた。ただし、拘束された3人の具体的な状況や処分内容については、10日時点で明らかにされておらず、解放の見通しも立っていない。
中国ではここ数年、日本人が拘束される事例が相次いでいて、2023年にはアステラス製薬の社員がスパイ容疑で拘束され、日中関係に緊張が走った。今回のケースは経済活動に関するものであるが、こうした事案が繰り返されれば、日本人の現地進出や観光活動に影響を及ぼす恐れもある。
中共当局は近年、外国人による不法就労や無資格営業への監視と取り締まりを強化しており、今回の拘束もその一環とみられる。実際、2025年2月下旬にも日本料理店関係者や美容師など日本人3人が、同様の容疑で2週間拘束される事例があった。
今後の焦点は、今回拘束された3人がどのような処分を受けるかである。単なるビザ違反であれば罰金や国外退去で済む可能性もあるが、対応が長引けば外交問題に発展するリスクもある。
海外で活躍の場を広げる日本人にとって、技術力と同様に、現地の法律や制度への正しい理解が不可欠である。「知らなかった」では済まされない現実が、改めて浮き彫りとなった。
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