ロンドンのヒースロー空港は21日、電力を供給する変電所で火災が発生し、深刻な停電に見舞われた。この影響で空港は終日閉鎖すると発表した。数百の便が影響を受けている。今回の事態は「近年で最も深刻な交通の混乱の一つ」とも報じられる。
空港はX上で、「変電所の火災により深刻な停電が発生した。安全確保のため、空港は21日午後11時59分まで閉鎖される」と発表した。
報道機関向けの声明では「今後数日間にわたり、フライトの遅延や混乱が予想される。再開の見通しが立つまでは、空港には来ないように」と呼びかけている。現在、電力の復旧時期は未定である。
ロンドン消防局によれば、火災は空港から数キロ離れたヘイズ地区の変電所で発生し、原因は調査中である。現場には数十人の消防隊員が出動し、150人を救助・避難させた。電力会社「スコティッシュ・アンド・サザン・エレクトリシティ・ネットワークス(SSEN)」によると、1万6千世帯以上が停電しているという。
SNS上には、火災の炎と黒煙が空高く上がる様子を映した動画が投稿されている。
ロンドン消防局のパット・ゴールボーン副局長は「朝の通勤時間帯に向けて混乱がさらに拡大する可能性がある。周辺地域には可能な限り近づかないよう」市民に呼びかけた。
空港側は「多くの利用者にご不便をおかけしているが、現在、全力で復旧作業を進めている」とコメントしている。
ヒースロー空港は2024年、年間8390万人が利用し、世界で4番目に旅客数が多かった。ロンドン中心部から西へ約22キロに位置し、5つのターミナルを持つ欧州最大級のハブ空港で、通常はほぼ99% の稼働率で運行しており、世界中の大手航空会社にとって欠かせない空港である。
航空アナリストのジェフリー・トーマス氏はCNNに対し、「ヒースローでは毎日約25万人が利用し、約1300便が運航している。現在もアメリカやアジア、中東からの便が上空を飛行中だ」と述べた。
空港の公式サイトでは、21日朝の時点で多くの便が欠航または他空港に目的地を変更しており、一部の便は「到着予定」と表示されたままである。
こうした便は、近隣空港への着陸や出発地への引き返しを余儀なくされる可能性がある。
トーマス氏は「短距離の国内線であれば引き返しも可能だが、長距離の国際便はそれが難しい」と指摘する。ロンドン周辺にはガトウィック空港やスタンステッド空港といった代替の空港もあるが、すでに受け入れ能力の限界に近いと見られており、便によってはさらに遠方の都市に着陸せざるを得ない状況も考えられる。
また、これらの空港は主に格安航空会社(LCC)を中心に運用されており、急増する旅客の受け入れには対応しきれない可能性もあるという。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。