スコット・ベッセント米財務長官は3月2日、ウクライナとの経済協定について「現時点で交渉のテーブルにはない」との認識を示した。これは、2月28日にホワイトハウスで行われたトランプ大統領とゼレンスキー大統領との会談が激しい口論に発展し、協定の締結が見送られたことを受けた発言だ。
アメリカとウクライナは、ウクライナ国内の希土類鉱物資源の共同開発に向けた協定を交渉していた。この協定は、アメリカがウクライナの鉱物開発に投資し、約5千億ドル(約75兆円)相当の鉱床へのアクセスを得るという内容だった。
しかし、2月28日にホワイトハウスで行われた会談で、ゼレンスキー大統領は「アメリカからの安全保障上の保証がなければ停戦には応じられない」と主張。また、「ロシアのプーチン大統領はこれまでに25回も停戦合意を破っており、和平協定を守るとは到底信じられない」と述べ、ロシアへの強い不信感を示した。
これに対し、JD・ヴァンス副大統領は「ゼレンスキー大統領がホワイトハウスでアメリカメディアの前で交渉を持ち出したのは失礼だ」と批判し、こうした議論は非公開で行うべきだったと指摘した。
さらに、トランプ氏とヴァンス氏は、「ロシアの侵攻が始まった2022年2月以降、アメリカは3年間にわたってウクライナを支援してきたにもかかわらず、ゼレンスキー大統領は十分な感謝を示していない」と非難した。
会談は議論が激化する中で打ち切られ、ホワイトハウスは合意の締結を中止した。さらに、ゼレンスキー氏には退去を求めた。
ゼレンスキー氏は3月1日、Xで、「ウクライナは鉱物協定の署名に向けて準備ができている」と投稿した。この協定は「将来的なロシアの侵攻に対する安全保障の第一歩となる」との認識を示した。
しかし、同大統領は「この協定だけでは不十分だ」と強調。「安全保障の保証なしの停戦はウクライナにとって危険であり、戦争は3年に及んでいる。ウクライナ国民は、アメリカが支援を継続することを確信したい」と訴えた。
アメリカ政府「平和合意なしでは経済協定は困難」
ベッセント氏は、ゼレンスキー氏がホワイトハウスで示した姿勢について、「ロシアとの交渉に前向きではない」と指摘。アメリカが進める戦争終結への取り組みと対立しているとの見方を示した。
3月2日、ベッセント氏はCBSニュースの取材で、「ロシアとの戦争を終結させる和平合意なしに、経済協定を締結することはできない」と発言。「ゼレンスキー大統領が交渉に応じる意思があるかを見極める必要がある」とし、「戦争継続を望むなら、経済協定を結んでも意味がない。トランプ大統領は和平合意を優先している」と述べた。
また、ウクライナとの経済協定が引き続き検討されるかについては、「現時点では交渉の対象ではない」と明言した。
トランプ大統領「平和を望めばホワイトハウスへ再招待」
トランプ氏は、ゼレンスキー氏が戦争終結への意思を示せば、ホワイトハウスへの再招待を検討する考えを示唆した。
トランプ氏は3月1日、記者団に「彼は『平和を望む。もう戦争は続けたくない』と言うべきだ。ウクライナ国民は犠牲になっている。ゼレンスキー大統領には交渉の主導権がないことを理解すべきだ」と述べた。
一方、ゼレンスキー氏は3月2日、アメリカとの関係について「今回の交渉が関係悪化につながることはない」との認識を示した。
「両国の関係は今後も続くと考えている」と述べ、交渉の進め方については、「こうした議論はすべて公開されるべきではない。今回の交渉形式は、両国の関係に特別なプラスの影響はもたらさなかった」と語った。
ゼレンスキー氏は、2月28日のFOXニュースのインタビューで、ホワイトハウスでのやり取りについて謝罪する考えがないことを明言。「私はトランプ大統領を尊敬し、アメリカ国民を尊敬している」と述べ、「我々は率直かつ誠実であるべきで、特に誤ったことをしたとは思わない」と付け加えた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。