石破茂首相は20日、埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故を受け、インフラ全体の老朽化対策の検討を進めるよう中野洋昌国土交通相に指示した。この動きは、日本全国で進行するインフラの老朽化問題に対する政府の本格的な取り組みの始まりを示唆している。
首相官邸で行われた中野国交相との会談で、石破首相は事故の原因究明を急ぐとともに、下水道管に限らずインフラ全体の老朽化対策の検討を指示した。中野国交相は、21日に国土交通省で再発防止策を検討する有識者委員会の初会合を開くと説明した。
石破首相は「インフラを整備してから50年ぐらいになる。『一気にこういうことがあちこちで起きたらどうしよう』という心理的な不安は、多くの国民が持っている」と述べ、インフラの老朽化対策の重要性を強調した。また、今年6月をめどにまとめる国土強靱化の実施中期計画に必要な対策を盛り込むよう求めた。
同日、石破首相は埼玉県の大野元裕知事とも面会し、陥没事故に関する緊急要望書を受け取った。首相は「財政的な支援についても総務省に指示をした」と述べ、技術と財政両面での支援を約束した。
大野知事は面会後「下水道が日本全体で老朽化しているところも多い。根本的にどう点検し、更新するかというところまで踏み込んでほしい」と語り、国に対策を求めた。
この一連の動きは、1月28日に発生した八潮市の道路陥没事故を契機としている。事故発生から3週間以上が経過した現在も、陥没した穴に転落したトラックの運転手の捜索が続いており、事態の深刻さを物語っている。
専門家は、今回の事故の原因として下水道管の老朽化と腐食、軟弱な地盤、交通荷重の3つの要因が複雑に絡み合っていると分析している。
政府のこの対応は、全国的に進行するインフラの老朽化問題に対する本格的な取り組みの始まりを示すものであり、今後の具体的な対策の展開が注目される。
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