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トランプ氏就任1か月 大規模な政策改革 公約実行へ大きく前進

2025/02/21
更新: 2025/02/21

トランプ氏がホワイトハウスの指揮を再び執り、次々と大統領令を発令することで、新政権の方向性を明確に打ち出した。就任後最初の30日間で、連邦政府を全面的に再編し、大きな変革を進めている。

国境警備の強化、関税の導入、連邦職員の削減、外交政策の見直しなど、トランプ氏は前例のないスピードで公約を実行している。

ニューヘイブン大学の会計・税務・法学の准教授であるジェームズ・モース氏は大紀元に「これは前例のないこと。こんなことを見たことがない。これは優れた経営者が行うべきことだ。これまで見てきた中で最も優れた計画の一つだ」と語った。

しかし、全員がこうした動きを支持するわけではない。民主党員の一部は、トランプ氏の野心的な政策に反対し、すでに70件以上の訴訟が起こされており、大統領令の実施を遅らせたり阻止したりする動きが進んでいる。

批判者たちは、新政権の取り組みが混乱を生み、国家を危機へと押しやっていると主張している。

しかし、世論調査のデータによると、反対意見の多くはメディアや党派的な政治家からのものであり、一般市民の間ではそれほど広がっていないことが示されている。最近のCBSの世論調査では、多くのアメリカ人がトランプ氏に対して概ね好意的な評価を示し、彼を「タフ」「エネルギッシュ」「集中力がある」「効果的」と評している。

また、テスラとスペースXの創業者であるイーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)は、すでに連邦予算を少なくとも550億ドル削減している。この省は反対派からの批判の的となる一方、支持者からはさらなる詳細を待ち望む声が上がっている。

トランプ1期目政権と違い、2期目の序盤では国民による組織的な反対運動はほとんど見られない。

トランプ氏は選挙戦で公約した課題を優先し、最初の施策として外国貿易、不法移民、多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムの見直しなどに焦点を当てている。

不法移民の急激な減少

ほとんど報道されていないが、アメリカへの不法移民が急激に減少しているという重要な動向がある。

トランプ大統領は就任初日、国境管理を強化し、犯罪歴のある不法移民の送還を目的とした10の大統領令を発令した。これにより、不法入国者の数は大幅に減少し、バイデン政権時のピーク時には1日1万1千人以上だったのが、300人未満にまで落ち込んだ。

トランプ政権の国境担当責任者であるトム・ホーマン氏は、これほど低い不法入国者数を自身のキャリアの中で見たことがないと述べている。

ホーマン氏は2月17日に、Xに「過去24時間で、アメリカ国境警備隊が南西部国境全体で遭遇した移民はわずか229人だった。私は1984年に国境警備隊員として働き始めたが、こんなに低い数字は記憶にない。トランプ大統領は安全な国境を約束し、それを実現している」と投稿した。

トランプ大統領は「キャッチ・アンド・リリース(不法移民を拘束した後、審理まで釈放する)」政策を廃止した。移民研究センター(CIS)の政策研究ディレクターであるジェシカ・ヴォーン氏によると、これが過去1か月間で不法移民を抑制する最も効果的な施策だった。

ヴォーン氏は大紀元に対し「もう一つの大きな対策は、国内での不法移民取り締まりの強化だった」と述べた。

移民たちは、不法入国しても摘発されて強制送還される可能性が非常に高いことを認識している。

「不法入国が容認されないと聞いて、実際に見ると、密輸組織に人生の貯金を託してまでアメリカに来ようとは思わなくなる。彼らはそれほどの危険を冒す価値がないと理解する」とヴォーン氏は語った。

トランプ氏は就任初日、移民が米国への入国申請を行えるCBP Oneアプリの運用を停止した。他にも、メキシコ、エルサルバドル、コロンビア、ベネズエラ、パナマといった国々と協力し、不法移民を抑制するための外交努力を強化した。

例えば、トランプ氏が25%関税を示唆したことを受け、メキシコ政府は不法移民対策と麻薬密輸取り締まりのために、米墨国境に追加で1万人の兵士を配置することに合意した。

トランプ氏はまた、キューバのグアンタナモ湾に、最大3万の不法移民を収容する施設を開設するよう指示した。

加えて、司法省は、連邦政府の移民取締りを「妨害」し「抵抗」する「聖域都市(サンクチュアリ・シティ)」に対し、法的措置を講じる方針を示した。

それでも、トランプ大統領の国境対策には国民の支持が集まっている。CBSの最新世論調査によると、トランプ氏の大規模強制送還計画を支持するアメリカ人は59%、米墨国境への米軍配備を支持する人は64%にのぼる。

国民の大半は、バイデン政権時代のような国境危機が再び起こることを望んでいないのは明らかだ。とはいえ、トランプ大統領は、これらの施策を恒久的なものとするために議会の支持が不可欠だ。彼の政策を実行するための資金を確保し、ヴォーン氏が言うように「抜け穴を塞ぐ」ことで、将来の政権が国境政策を逆転させることを防ぐ必要がある。

政府縮小への取り組み

トランプ政権が進める連邦政府のスリム化と無駄の削減が、大きな注目を集めている。1月20日、トランプ大統領は政府効率化省(DOGE)を設立する大統領令に署名し、行政の大幅な見直しに着手した。

「政府を小さく、効率的で、効果的かつ低コストにしなければならない」とトランプ大統領は2月12日に述べ「その重要性を多くの人が理解していない」と強調した。DOGEは不要な契約やリースを見直し、ほぼ毎日のように新たな削減策を発表している。

「私たちが発見したものは衝撃的だった。何十億ドルもの無駄遣いや詐欺、不正が横行していた」とトランプ大統領は述べ「誰もここまでひどいとは思っていなかった」と批判した。

削減対象となった政府支出の例

  • 2千万ドル:イラク向けの『セサミストリート』スピンオフ番組
  • 1800万ドル超:ポリティコなどのメディア購読費
  • 790万ドル:スリランカのジャーナリスト向けジェンダー中立表現の研修費

DOGEの目的と財政改革

DOGEの支持者は、この取り組みを「官僚機構に支配された政府を民主的な機能に戻す改革」だと評価している。

さらに、マスク氏は財政赤字削減と並行しながら、政府支出を2兆ドル削減する方針を示した。米財務省のデータによるとこれは、2024年度の連邦財政赤字に匹敵する額だ。

「アメリカが国家として支払い能力を維持することは不可欠だ」だとマスク氏は主張している。

政府支出の削減によりアメリカの総額36.2兆ドルを超える国債の一部返済にも充てる計画だ。

「ここで求められているのは常識的な支出管理だ」とマスク氏は述べ「国民は大規模な政府改革を求め、それを実現しようとしている」と語った。

社会保障制度の調査

DOGEは社会保障制度の記録にもメスを入れている。特に問題視されているのは、100歳以上とされる受給者が約2100万人も登録されている点だ。

しかし、米国勢調査局によると100歳以上の人口は8万9千人未満であり、登録情報との大きな乖離が指摘されている。

さらに、死亡日が記録されていない受給者の中には、200年以上前に生まれたとされる2700人超の名前がリストに含まれているという。

また、政府のデータベースに登録されている総受給者数は、実際の米国人口を5千万人も上回っている。

マスク氏は2月17日に「これは歴史上最大の詐欺かもしれない」と投稿した。

DOGEに対する批判

DOGEの取り組みに対して、一部の民主党議員からは「憲法上の危機」との批判が上がっている。行政権の過剰行使による議会権限の制限を懸念している。

民主党のジョン・ラーソン下院議員は2月9日にXで「個人情報の流出を心配しなくて済むべきだ」と投稿し「マスクの介入を阻止しなければならない」と主張した。

また、マスク氏が率いる企業が近年、政府から数十億ドル規模の契約を受けていることを理由に、利益相反の可能性を指摘する声もある。

しかし、トランプ大統領はこれらの疑惑を全面的に否定し「マスク氏の活動は政権が監督しており、利益相反は厳しく禁止されている」と説明している。

法的争いと政界の反発

DOGEの取り組みに対し、14州の司法長官が「上院の承認を受けていないマスク氏の権限は違法」として提訴した。

また、マンハッタン連邦地裁の判事は、DOGEによる一部の調査を一時停止する仮差し止め命令を出した。

これに対し、トランプ大統領はさらなる調査の必要性を主張し「汚職の実態を調べることを裁判所が止めようとしているのは信じがたい。もし問題があるなら、判事自身についても調査する必要があるかもしれない」と述べた。

相互関税計画

トランプ氏は2月13日「公平性のため」として、アメリカのすべての貿易相手国に対し「相互関税(Reciprocal Tariff)」を導入する方針を発表した。国ごとに異なる関税を設定する計画で、早ければ4月にも実施される可能性がある。

「相互関税」は、公正な競争環境を確立するための主要な政策とされる。

2月10日には、すべての鉄鋼とアルミニウムに対する関税を25%に引き上げ、中国からの輸入品には10%の追加関税を課す措置が導入された。

トランプ氏は2月17日「アメリカは長年、多くの国を経済的に支援してきた。今こそ、それを思い出してもらうべきだ」と投稿した。

「貿易において、公平性のため『相互関税』を導入する。各国がアメリカに課している関税と同額をアメリカも課す。—それ以上でも、それ以下でもない!」

補助金などの関税以外の貿易障壁も考慮されるため、実施プロセスは複雑になるが、トランプ氏は「公平な関税措置になる」と自信を示している。

関税強化による供給網や物価への影響を懸念する声もある。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のクリストファー・タン教授は「製造業を復活させ、アメリカの雇用を創出するというトランプ大統領の目標が有権者の間で強く共感されていることを認めつつも、これらの関税の実施は「問題を引き起こす可能性がある」と警告している。

こうした関税が価格上昇につながるかどうかをめぐっては全国的な議論が巻き起こっている。

オクラホマ州立大学のスンデレシュ・ヘラグ教授は、多くの企業は関税を交渉戦術と捉えているとしている。

同氏は大紀元に、企業のリーダーたちは、関税が最終的に引き下げられると予想していると指摘した。

CBSの世論調査では、関税強化による物価上昇を懸念する声が多いことが示された。欧州、カナダ、メキシコへの関税強化は国民の間で不人気で、新たな輸入関税が価格上昇につながると考える人は約4分の3に上った。

外交政策の変革

トランプ大統領は、就任直後から米国の外交政策を大きく転換し、国際社会に波紋を広げている。

多くの専門家は、トランプ氏の2期目は1期目以上に国際秩序を揺るがす可能性があるとみている。

トランプ大統領は就任前から、グリーンランドの支配やパナマ運河の掌握を通じて、中国共産党の影響力拡大に対抗する構想を示していた。

さらに、カナダを「51番目の州」にするという大胆な提案まで行った。

就任後、最初の大きな動きの一つが、フェンタニルの密売と不法移民の流入阻止に十分な対策を講じていないとして、カナダとメキシコに25%の関税を課す方針を示した。

その後、関税適用は30日間延期されたものの、鉄鋼とアルミニウムへの新たな25%関税が導入され、両国に大きな影響を与えると予測されている。

また、中国からの輸入品にはすでに追加の10%関税を課し、習近平との対話にも「急いでいない」と明言した。

ウクライナ戦争の停戦交渉

トランプ氏は、2月18日に国務長官のマルコ・ルビオ氏を含む高官をロシア政府関係者と会談させるため、サウジアラビアに派遣した。この会談は、ウクライナ戦争の終戦交渉の第一歩とみられている。

しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は自国が停戦協議の場に招かれなかったとし「独立国家として、我が国抜きの決定は受け入れられない」と強調した。

トランプ氏は18日、フロリダ州の私邸マー・ア・ラゴで記者会見を開き、ウクライナでの選挙実施の必要性を示唆し、ゼレンスキー大統領の交代が和平の鍵になる可能性を指摘した。

「ウクライナでは長らく選挙が行われていない。戒厳令下にある国だ」

さらに「彼(ゼレンスキー大統領)の支持率は4%しかない。言いたくはないが、これが現実だ」と発言し、ウクライナ政権の不安定さを強調した。

ヨーロッパへの圧力

1月23日、トランプ大統領は世界経済フォーラムにオンラインで参加し、欧州各国に対しNATOへの防衛費負担を増やすよう強く要求した。

「アメリカの財政支援が今後も続くとは限らない」と警告し「アメリカ・ファースト」政策の復活を強調した。

さらに、副大統領のJD・バンス氏をミュンヘン安全保障会議に派遣し、欧州連合(EU)内の民主主義と保守的価値観の重要性を訴えた。

しかし、バンス副大統領の発言は一部の欧州指導者にとって厳しすぎると受け止められた。

ドイツの外交官であり、メルケル前首相の外交安全保障政策のアドバイザーであるクリストフ・ホイスゲン氏は、バンス氏のスピーチに不満を表明し、感情をあらわにした。

同氏は「バンス副大統領のスピーチを聞いて、我々の共通の価値観がもはや共有されていないのではないかという懸念を抱いた」と語った。

EUへの追加関税を示唆

トランプ氏は、EUに対する貿易政策も強硬に進める構えを見せている。2月20日、マー・ア・ラゴでの記者会見で、EUからの輸入品に対する新たな関税を導入する方針を示唆した。

トランプ氏は「EUはこれまで米国に対し非常に不公平な対応をしてきた。これを正す必要がある。我々は必ずそうする」と述べた。

DEIの撤廃

選挙戦を通じて社会正義を掲げるアジェンダに対し強く反発し、特にDEIプログラムを批判してきた。そして、就任初日には連邦政府によるDEI推進を即座に停止する措置を講じた。

就任直後に署名された大統領令は、トランプ氏が「違法かつ不道徳な差別プログラム」と呼ぶDEIプログラムに終止符を打った。

1月31日までに政府機関や省庁におけるDEI関連プログラムの予算が10億ドル以上削減され、その約半分は連邦人事管理局の予算だった。

2月14日には、米国教育省が全米の州教育局長宛に通知を発出し「すべてのDEIプログラムを2週間以内に撤廃しなければ、連邦補助金を削減する」と警告した。

さらに、教育省は70のDEI関連研修助成金を廃止し、その額は3億7300万ドルに達した。これには、教師に自身の「偏見や人種差別を認識し、反人種差別的な考え方を持つよう促すプログラム」も含まれていた。

環境保護庁でもDEI関連契約を撤廃

2月14日、環境保護庁のリー・ゼルディン長官は、9件のDEI関連契約を取り消し、税金6千万ドルの節約につながると発表した。

ゼルディン氏はXに「まだ準備段階だ。国民の大切な税金が一銭たりとも無駄にされることは許さない」と投稿した。

「男女二元論」政策の大統領令に署名

トランプ大統領は1月20日に署名した大統領令で、アメリカ政府が認める性別は「男性」と「女性」のみであると明記した。

さらに、2月5日には「男性を女子スポーツから排除する」大統領令に署名し、学校やアマチュア競技において男性が女性と競技することを禁止する方針を打ち出した。

この命令により「女性や女子児童から公平な競技機会を奪い、彼女たちを危険にさらし、屈辱を与え、発言を封じ、プライバシーを侵害する」あらゆる教育プログラムへの資金提供を停止するよう命じられている。

トランプ大統領は署名の場で「女子スポーツに対する戦いは終わった。これから女子スポーツは女性のためだけのものになる」と述べ、数十人の若い女子アスリートに囲まれながらこの政策を発表した。

また「女性アスリートを最前線で危険にさらす急進的なトランスジェンダー思想を排除することで、女子スポーツの尊厳と安全を守る必要がある」と強調した。

政府関係者は今後、女性スポーツを守るための国際規則を推進し、男性アスリートの参加を阻止する取り組みを進める方針だ。

また、女性アスリートが「裸の男性とロッカールームを共有しなければならない」という不適切な規則の見直しも進める。

特に、2028年のロサンゼルス五輪を控え、国務長官はIOC(国際オリンピック委員会)に対し、男性が女子競技に出場することを禁止するようあらゆる外交的手段を講じるよう指示をした。

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、トランプ政権担当記者。 バイデン前政権とトランプ第一次政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。
カリフォルニアを拠点とする熱心な読書家であり、ジャーナリズムである。大紀元の金融、政治、州議会、そして速報ニュースを担当している。