2月3日、中国江蘇省泰州市(たいしゅう‐し)の町中に駐車された十数台の自動車が破壊される事件が起きた。
割られたのはいずれもドイツ系自動車で、その数は少なくとも十数台に上るという。現場を撮影した市民は「大変だ、大変だ!」と青ざめていた。
窓ガラスは派手に割られ、開いた穴には「反ファシズム」のビラが車内へ投入されていた。

そのビラには「9月3日は中国の抗日戦争勝利記念日にして世界反ファシズム戦争勝利記念日だ」との文字と戦場で旗を掲げる兵士の絵が描かれていた。
確かに、9月3日は「世界反ファシズム戦争勝利記念日」であると同時に、中国が定める「抗日戦争勝利記念日」でもある。そのため、毎年この日になると、中国各地で記念活動が行われる。
2023年のこの日、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受けて日中関係が緊張するなか、在中国の日本大使館では厳戒態勢が敷かれた。
しかし、今はまだ9月3日にはまだほど遠い。
今回、襲撃を受けたのはいずれもBMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンといったドイツ系メーカーの車である。そして、一部の車内にはタバコがカートンごと置かれていたにもかかわらず取られていないことなどからして「金目当ての犯行ではなく、やはり一部の排他的なナショナリスト(民族主義者)による犯行だ」と指摘する声が多い。
(当時の様子)
また大規模反日デモに発展しないか
中国共産党は日常的に「愛国主義教育」の名目のもと、日中戦争などを題材に利用して国民に対して反日教育を行い、外国を恨む情緒を国民の脳裏に刷り込んできた。
特定の国への憎しみを煽ることは国民の凝集力を高め、奮起させる上で大変有効な劇薬であることは間違いない。
だが、過度の「投薬」の結果、大規模な反日デモなどにも実際に発展している。
13年前(2012年9月)、日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化したことに抗議する反日デモが北京の日本大使館前で始まった。
その後50以上の都市に飛び火し、日系企業や店舗への放火や略奪行為も起き、日本車に乗った中国人の男性が暴徒化した群衆に殴られて半身不随になった(陝西省西安市)

反日デモは中国国民の不満のガス抜き
当時、重慶市のトップ薄熙来の汚職スキャンダルが明るみに出た際、地方政府の官僚への汚職に対する国民の怒りの感情が高まっていた。沖縄県・尖閣諸島を国有化したのは、2010年に尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた巡視船が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じたが、それを無視して漁船は違法操業を続行した無法行為がきっかけだったが、中国共産党は国民感情を煽り続けた。
常態的に国民を抑圧している中国共産党は、その国民の不安を反日感情に転化させて共産党への不満が増大しないようにコントロールしている。その大きな政策が「反日教育」だ。中国共産党は「反日教育」により中国人の反日感情を醸成し、中国共産党の悪政による国民の怒りの感情を反日感情に転化させ続けている。
1991年、当時の中共党首・江沢民は国家教育委員会などに対し、小学生から大学生まで国情教育を行うべきで、抗日戦争、解放戦争を経験し、中華人民共和国を建国したことを周知させるべきだと要請した。1994年に「愛国主義教育実施要綱」を制定し「抗日戦争勝利50周年」に当たる1995年から、偽りの歴史認識をベースとした「反日教育」を推進している。
しかし「共産党についての九つの論評【第五評】法輪功への迫害における江沢民と中国共産党の相互利用」によると、当時、中国共産党が抗日のスローガンを掲げる中、江沢民は親日政権の汪兆銘政権が1942年に南京で創設した中央大学で、高等教育を受けている。江沢民が反日を叫ぶ資格はないだろう。
江沢民が来日した際、招かれた宮中晩餐会で「痛ましい歴史の教訓を永遠にくみ取らなければならない」と発言した事は、江沢民が主導した反日教育が、いかに内実の伴わないものであるかを示唆している。結果、日中間の国民感情に多大な悪影響を及ぼしている。
中国国内で発生したゼロコロナ政策に反対する活動「白紙革命」に参加した張俊傑氏は「中国人は幼少期から反日や仇日の感情と主義を育成しており、これが中国人の世界観を歪め大きな害をもたらしている。そのため、私たちの新しい世代は、世界を真に客観的かつ理性的に理解することができず、日中間の民間交流や文化、商業の相互作用に悪影響を及ぼしている」と述べている。
カリフォルニア大学中国文学教授の林培瑞氏は、日本人と中国人の対立ではないと述べたうえで、「この事件は中共政府が中国人の感情を利用し、彼らのイデオロギーを操り、高圧的手段で社会を制御することによって引き起こされたものだ。すべての中国人、日本人は団結し、中共に立ち向かうべきだ」と指摘した。
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