9月3日、ニューヨーク州のリンダ・サン（孫雯）前副補佐官とその夫クリス・フー（胡驍）が、連邦捜査局（FBI）により米国ニューヨーク州ロングアイランドのマンハセットにある自宅で逮捕され、中国共産党の秘密代理人として活動していたとして重大な国家安全保障違反で起訴された。

ブルックリンのアメリカ合衆国検察官ブレン・ピース事務所のスポークスマンによると、リンダ・サンは「外国代理人登録法」（FARA）違反の疑いで起訴されており、さらにビザ詐欺、外国人密輸、マネーロンダリングの共謀に関与していたとされている。

告発内容の詳細

アメリカ合衆国司法省の発表によれば、リンダ・サンは表向きはニューヨーク州政府の公務員として働いていたが、実際には中国共産党の指示に従って様々な秘密任務を遂行していたとされる。

リンダ・サンは「外国代理人登録法」に違反し、さらに、次の犯罪で告発されている。

ビザ詐欺　偽の文書や情報を使用してビザを不正取得。

外国人密輸　非法的な手段で外国人をアメリカに密入国させる行為。

マネーロンダリング　不法に得た資金を合法的な資金として扱うための取引。

銀行詐欺　銀行を欺く行為を通じて不正に資金を調達。

身分識別情報の濫用　他人の身分情報を不正に使用。

リンダ・サンは、中国共産党の指示に従ってアメリカ政治に影響を与えるための複数の活動を行っていた。具体的には以下のような行為が含まれていた。

台湾政府の代表との接触阻止　リンダ・サンは、中国共産党の要求に応じて、台湾政府の代表がニューヨーク州の高官と接触するのを阻止していた。これは、中国政府が台湾との公式な外交関係を持たない国との接触を避けるための一環であると見られる。

情報の操作と削除　リンダ・サンは、ニューヨーク州知事の演説から中国共産党によるウイグル人の虐待に関する言及を削除していた。これは、中国政府のイメージを保護し、国際社会の批判から逃れるための試みであったとされている。

非公式な招待状の発行　リンダ・サンは、適切な権限なしに中国政府の官僚にニューヨーク州の公式イベントへの招待状を発行していた。これにより、中国の官僚がアメリカ政府内の重要な人物と接触し、影響を及ぼす機会を得ていた。

中国政府の代表団との会合の手配　リンダ・サンは、ニューヨーク州を訪問する中国政府の代表団とニューヨーク州政府の官僚との会合を手配していた。これにより、中国側はアメリカの政治家と直接対話し、自国の政策や立場を推進する機会を持っていた。

これらの行為は、彼女が外国代理人として活動していた証拠であり、中国共産党がアメリカ国内政治に影響を与えるために彼女を利用していたことを示している。

リンダ・サンの夫であるクリス・フーも重大な告発を受けており、マネーロンダリングや銀行詐欺の共謀、身分識別情報の濫用が挙げられている。彼は、これらの犯罪を通じて妻と共同で非合法な資金を洗浄し、莫大な利益を上げていたとされている。

逮捕後、リンダ・サンは150万ドル（約2億1768万円）、クリス・フーは50万ドル（約7255万円）の保釈金で一時的に釈放された。彼らの次回の出廷日は9月25日に設定されている。

リンダ・サンの経歴と活動

LinkedInのプロフィールによると、40歳のリンダ・サンはニューヨークのバーナード・カレッジで政治学の学士号を取得し、コロンビア大学で教育学の修士号を取得している。リンダ・サンは過去15年以上にわたりニューヨーク州政府で様々な重要な職を歴任し、ニューヨーク州知事のキャシー・ホウクル氏の下で副補佐官を務めるなど、信頼されるポジションにあった。しかし、リンダ・サンが中国共産党の指示に従い、アメリカの政治に介入していた事実が明るみに出たことで、大きな波紋を呼んでいる。

この事件は、アメリカ合衆国下院監視委員会の注目を集めており、同委員会は「共産党はアメリカ政府のすべての部門とコミュニティに対して狙いを定め、影響を与え、浸透しようとしている」と声明を発表した。これが、アメリカ政府が今年初めに共産党の政治戦争運動に対する調査を開始した理由である。