中国 「独裁者習近平を罷免せよ」

政権を真っ向から批判 中国で「第二の四通橋事件」発生

2024/08/02
更新: 2024/08/02

中国湖南省婁底市(ろうてい-し)の陸橋に「北京四通橋事件」を模倣した事件が発生した。

陸橋には「自由が欲しい、民主が欲しい、選挙権が欲しい!」「独裁者習近平を罷免せよ」といった現政権批判の横断幕が掲げられ、そのスローガンを唱える若い男性の声が繰り返し再生されていたが、橋の上には誰もいないのだ。

 

中国湖南省婁底市の陸橋に掲げられた現政権批判の横断幕(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

第二の「四通橋事件」と呼ばれる湖南省の陸橋事件での抗議の様子を映した動画は7月30日、SNSを通じて拡散され、注目を集めた。

「また中国に勇士が現れた」といった称賛の声が広がると同時に、「事件を起こした市民が四通橋事件を起こした市民と同様、当局に逮捕されないか」と不安の声も上がっている。

 

「四通橋事件」

2022年10月13日の正午ごろ、北京市海淀区の「四通橋」の上に、習近平政権を真っ向から批判するとともに、その最高権力者である現国家主席に対して名指しで罵倒する横断幕が掲げられた。

その横断幕には「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」「PCR検査は要らぬ、食べ物が欲しい。封鎖は要らぬ、自由が欲しい。嘘は要らぬ、尊厳が欲しい。文革は要らぬ、改革が欲しい。独裁者は要らぬ、選挙権が欲しい。奴隷になるのは嫌だ 、公民でありたい」と書かれていた。

その言葉の全てが、市民の誰もが心に思っていながら口に出せない「禁じられた本音」であった。またそれは、中国共産党が最も恐れる「民衆の覚醒」でもあると言ってよい。

2022年10月13日正午ごろ、北京市内の陸橋「四通橋」に掲げられた、中国共産党政権へ抗議するスローガン(SNSより)

 

横断幕を掲げ、中共(中国共産党)に単独で立ち向かった「勇士」の名は彭載舟(ほうさいしゅう)氏(本名・彭立發)、彼はその場で取り押さえられ、当局に連行された。

以来、外界との接触を一切断たれ、その安否もふくめて現在も所在は分からない。彭氏の妻子は郷里で軟禁されている。彭氏の姉まで失踪して、行方不明の状態だという。

「四通橋の勇士」は消息不明になったが、まことに悲壮感あふれるワンマンショーはネットで拡散され、人々の記憶に確実に残った。

その不屈の精神に、多くの人が共感した。世界中の人々は、あらゆる場所にこのスローガンと同様の文句を書くなどして連帯を示し、複数の国際組織や人権団体も彭氏の釈放を中国政府に呼び掛けている。

「四通橋事件」は、それに続く中国民衆の示威活動である「白紙革命」や「花火革命」の先駆けとなり、彭載舟氏は「四通橋の勇士」と呼ばれ、以来、中国政府に立ち向かう人々の象徴的存在となった。

彭氏は昨年の「世界で最も影響力のある100人」(米誌「タイム」)のリスト入りし、米議員からも「ノーベル平和賞候補」に推薦されている。

 

昨年10月13日、北京の「四通橋」に習近平政権を批判する横断幕を掲げた彭載舟氏(写真は背景との合成)

 

「革命の恐怖」に慄く中共当局

彭載舟氏が反抗開始の狼煙(のろし)を上げた北京市海淀区にある「四通橋」は、中国当局が検閲する言葉のブラックリスト入りした。

そればかりか、ただの道路標識である「四通橋」のプレートまで現場から撤去された。今では「中国産の地図アプリに、四通橋の地名すら表示されていない」という指摘もあるほどだ。

「四通橋事件」以来、模倣行動を防ぐべく、北京では重要会議が開催されるたび、市内の交差点や陸橋では常時見張りが立つようになった。

 

「四通橋の勇士」に示す連帯のメッセージは、世界のあらゆる場所で見られている(ネットより)

中国の反抗者は増える

「中国経済の悪化につれ、中国の反抗者はどんどん増えていくだろう」と多くのアナリストが口をそろえる。

「もし景気が良い時であれば、例え不公を受けてもまだやり直すチャンスはある。しかし、いまは経済が悪化して完全にチャンスがなくなった。特に中共の鉄拳を受けた若者はVPNなど使って海外の情報と接触すればおのずと反抗するようになる」、米国在住のセルフメディア発信者・黄子茵(こうしいん)氏はそう分析した。

昨年2月、山東省済南市の繁華街にある高層の建物「ワンダ・プラザ」の北側の壁面に「共産党を倒せ、習近平を倒せ(打倒共産党,打倒習近平)」と書かれた赤地に白文字の電子横断幕が現れた。

この抗議活動が実行された時、計画者である柴松(さいしょう)氏は、中国を離れて中米パナマにいた。その後、米国入りした柴氏は海外メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に応じ、「なぜ抗議をするのか」という質問に対して、柴氏は「世界を驚かせた四通橋事件の影響を受けたから」と話した。

画像(左)は体制に異議を唱える活動家の柴松(さいしょう)氏の最近の写真。画像(右)は2023年2月21日夜に山東省済南市ワンダ・プラザの北側の壁に投影された「共産党を倒せ、習近平を倒せ」の文字(受訪者より提供)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!