米国の連邦判事が新しいタイトルIX(タイトルナイン・公的高等教育機関の教育プログラムや活動等での性差別の禁止について定めた教育改正法第9編の通称)をさらに6州で差し止めた。これにより、米教育省(United States Department of Education)が変更を施行できない州は合計21州となった。
新たに規則がブロックされた州はアーカンソー州、アイオワ州、ミズーリ州、ノースダコタ州、ネブラスカ州、サウスダコタ州だ。
7月24日の判決で、ミズーリ州東部地区のロドニー・シッペル米国地区判事は、これらの州に仮差し止め命令を与え、教育省が反差別法の範囲を拡大しようとした試みにおいて、その権限を超えたと主張する州の訴えに「勝利する公正なチャンスがある」と判断した。
8月1日に施行される新しいタイトルIXは、性に基づく差別に反対する既存の連邦法が、性的指向および性同一性に基づく差別も禁止すると宣言している。
この規則は性別が分けられているスポーツチームには対応していないが、トイレ、ロッカールーム、シャワー室に適用され、学校や大学が生徒に生物学的性別に対応する施設の使用を要求する場合、連邦資金を失う可能性がある。
また、新しいタイトルIXは「性的嫌がらせ」の定義を拡大し、性別に沿った代名詞で呼びかけるが、本人の希望する性別と相反する場合を含むようになった。従わない教育者は、たとえ宗教的または道徳的信念に反するとしても、タイトルIXの調査や懲戒処分の対象となる可能性がある。
州は、タイトルIXの元々の意図を覆す新規則が、男女の生物学的区別を示す本来の趣旨を損なうと主張している。
訴えには、「(新規則は)州、学校、大学に対し、 トイレ、ロッカールーム、運動競技、さらには発言に関して、生物学的性別を無視し、自己申告した性同一性を優先させるよう要求している」と記されている。
法的議論
変更を正当化するため、教育省は2020年の米国連邦最高裁がLGBTQ+の職場差別は違法と判断した、ボストック対クレイトン郡判決を指摘した。この事件で米連邦最高裁は、職場での性に基づく差別を禁止する連邦法タイトルVIIに関して、性的指向および性同一性を雇用上の判断要因とすることは違憲であると結論付けた。
しかし、シッペル判事は、このボストックの事件がタイトルIXの保護を拡大する法的根拠を提供するという考えに反対した。
7月24日の判決では、ボストック事件の多数意見を引用して「タイトルIXも性差別を禁止しているが、最高裁は『タイトルVIIとタイトルIXは全く異なる法律だ』と述べている」と述べた。
シッペル判事は「タイトルIXは学校に関するもので、最高裁が指摘したように、学校は成人の職場とは異なる。ボストック事件で最高裁は、他の法律やその条項の意味、あるいはその判断がトイレやロッカールームなどに適用されるかどうかについて明確に言及していなかった」と述べている。
シッペル判事の判決の前には、他の連邦判事も過去数週間にわたり4つの別々のケースで同様の結論に達し、他の15州で新しい規制の実施を差し止めた。
その州はアラスカ州、アイダホ州、インディアナ州、カンザス州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、モンタナ州、オハイオ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、バージニア州、ウェストバージニア州、ワイオミング州である。
7月24日の差し止め命令は、2つの控訴裁判所が以前の要請を却下した後、米司法省が最高裁に、新規則の2つを除くすべての条項を10州で施行するよう要請 した直後に出されたものだ。
現時点では、最高裁は、影響を受ける州でこの規則の一時停止を解除するかどうかを検討している。
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