行きは液体燃料を積載し、荷下ろしした後、帰りは食用油を乗せて帰る。しかも経費と時間がもったいないから、タンク洗浄はしない。石油用のタンクローリーを食用油の輸送にも使っていたことが分かり、中国社会はこの話題で騒然としている。
中国における食品安全問題はいまに始まったことではなく、少々のことにはもはや驚かない中国人。しかし神経の図太い中国人であっても、今回の「タンク車混載」の驚愕実態には衝撃をうける人は少なくなかった。官製メディアでさえ「毒を盛るのに等しい」と世論寄りの発言をしている。
いま、中国では食品安全の問題に対して国民意識がこれほどまでにないほど高まっている。
「国産油は信用できない!」と怒りが収まらない中国の消費者は、より安心な直販の油や輸入品の油を買いあさっている。
事件発覚後、問題のタンク車と関連企業は「弁解声明」に追われ、各大手食用油ブランドも慌てて「弊社は関係ない!」と潔白声明を出した。それでも世論の怒りはすさまじく、中国産大手食用油は各大手販売プラットフォームから下ろされている。
ライブ配信(生放送)を通じて食用油を販売する配信者たちは、世論の怒りを全身で受けた。
配信者の中には「安全だと証明しろ!」という視聴者からの要求に応じるために、ライブ中に何度も油を飲む姿を披露する者。「うちの商品はタンク車を使ってない!工場で直接容器に入れている!」と何度も何度も誓う者。なかには、「あなたが売っている油に問題がないことをどうやって証明するのか」という視聴者に、「こっちに問題があるという証拠はあるのか!」と逆ギレする者など様々で、皆、絶えず寄せられてくる視聴者からの「品質保証要求」に答えるのに必死だった。
消費者側もこれらの弁解には納得がいかなかったようだ。
人々は「タンク車利用の疑いのある」大手ブランドではなく、地域の信頼のおける食用油に目を付けて、売り切れが続出する事態になった。
オンライン上でも輸入の食用油の売れ行きが絶好調だ。「わずか数日で過去の1か月分の売上を達成した」という店も続出。
中国メディアの取材に対して、「マカオで、お持ち帰りが許される範囲内で最大限に外国の食用油を買った!」という観光客も。「3本あれば2か月は持つだろう、使い終わったらまた買いに行くつもりだ」と話している。
また「いっそのこと自分の手で作ったほうが安心」と自宅で油をつくる人も出てきて、「家庭用搾油器」が飛ぶように売れている。中国SNSでは「どうやって自分で油をつくるのか」に関するトピックスが大量にアップされ、「家庭用搾油機」もこのブームに乗じて爆売れしている。
(ピーナッツで油をつくる、「家庭用搾油機」)
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