中共のロケット発射、なぜ西側より危険なのか

2024/07/10
更新: 2024/07/12

近日、中国の「天龍三号」運搬ロケットのテスト失敗とその残骸が山中に落下した事故が国際的な注目を集めている。専門家は、発射失敗自体は珍しくないものの、中国企業が使用する危険な固体燃料と内陸からの発射が住民に危険をもたらしていると指摘している。

6月30日、中国の民間宇宙企業、天兵科技(Space Pioneer)は、新型「天龍三号」運搬ロケットの動力システム静的試験(テスト)を実施した。研究者が推進器を分析している最中、ロケットは発射台に留まるはずだったが、意図せずに飛び立ち、爆発した。ロケットの残骸は河南省鞏義市(きょうぎし)の山中に落下した。燃えるロケットの部品が民間のインフラ近くに落下する映像が次々と公開されている。

この事故は、国内外で大きな話題となった。イギリス「デイリー・テレグラフ」は7月7日の報道で、宇宙研究会社クィルディ分析(Quilty Analytics)の創設者、クリス・クィルディ(Chris Quilty)氏の言葉を引用し、「発射失敗は珍しくないが、彼らが危険な固体推進剤を使用し、内陸から発射していることが驚きだ」と述べた。海岸線から発射すれば、残骸は海に落ちるため「住民に被害が及ぶことはない」という。

発射地点に加え、専門家は中国のロケット燃料が健康に脅威を与えていると指摘する。中国のロケットは、四酸化二窒素(N2O4)、液体ヒドラジン(N2H4)および赤煙硝酸などの危険な燃料に依存してきた。これらの化合物は強力な推進剤を形成する一方で、非常に毒性が高く発がん性がある。燃焼時には独特の汚れた赤褐色の煙を放つ。

中国のロケット燃料技術は、冷戦時代の大陸間弾道ミサイル技術にまでさかのぼる。燃料自体は安定しており保存が容易で、発射前に冷却する必要はない。しかし、その副産物は致命的である。イギリスロケット会社Gravitilabのロブ・アドラー(Rob Adlard)氏は「赤煙硝酸は非常に危険だ。これらの(中国の)写真を見ると『信じられない、彼らがこんなことをするなんて!』と思う」と述べた。

アドラー氏は「天龍三号」の残骸落下事故に触れ、「西側では、硝酸に近づく際には完全な防護服を着用する」と述べた。液体ロケット推進剤の非公式な歴史を紹介する書籍『Ignition』の著者ジョン・D・クラーク(John D. Clark)氏は、赤煙硝酸が「ピラニアのように貪欲に皮膚と肉を攻撃する」と書いている。

1940年代、アメリカのロケット科学者たちはこれらの危険な化学物質を使用して実験を行い、彼らは「自殺隊」と呼ばれた。その中には、中国の宇宙計画を後に指導した若き科学者、銭学森氏も含まれていた。その後、西側の多くのロケット企業は、毒性の低いケロシンと液体酸素を使用する傾向にあり、一部の企業はより環境に優しい燃料を開発している。SpaceXは最新の「ラプター」エンジンでメタンを使用し、他の燃料と比べて排出量が少ない。

Gravitilabは温室効果ガス排出を75%削減することを主張するハイブリッドロケットシステムを開発している。アドラーは中国のロケット計画を「平行宇宙」のようだと表現し、「彼らのやり方は全く受け入れられない」と批判した。

天兵科技は事故後に声明を発表し、試験地点は鞏義市の市街地から遠く離れているとしたが、一部の住民の怒りを鎮めることはできなかった。ネットユーザーは「これが市街地から離れていると言えるのか? 私たちを盲目だとでも思っているのか?」「航天史上こんなに酷いことは起きたことがない!」とコメントした。

この事件と同時に、1996年の長征三号乙ロケット発射事故を思い出した。当時、このロケットは発射後に大きく傾き、22秒後に爆発した。爆発は巨大な火球を生み、残骸と燃焼する燃料が西昌発射センター近くの村に降り注いだ。

公開されたデータによると、この事件の爆発力はTNT爆薬55.6トンに相当し、80以上の民家が損壊した。中国共産党の公式発表では、事故で6人が死亡、57人が負傷したとされているが、「デイリー・テレグラフ」はアメリカ国防当局者の推定では、実際の犠牲者数は数百人に上ると報じている。

この1996年の災難は、アメリカの宇宙企業が、中国との協力から急速に撤退するきっかけとなり、現在に至るまでの厳しい輸出規制制度をもたらした。

張婷
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