社会問題 働けなくなった農民の行き場は

中国養老問題 経済悪化で農村高齢者の老人ホーム退去

2024/06/28
更新: 2024/06/28

中国の経済が悪化する中、2024年以降、農村の老人ホームから退去する高齢者が増加している。中国南方のある都市で老人ホームを運営する担当者によれば、今年上半期、経済的な理由で退去する高齢者の割合は25%に達した。

中国の都市化が進む中、多くの農民工が都市部で働いている。しかし、コロナ後の経済悪化により、多くの農民工が失業し、故郷に戻ってきた。中国国家統計局が発表した「農民工監測調査報告」によると、建設業に従事する農民工の割合は2021年の19.0%から2023年には15.4%に減少し、約975万7千人が建設業を離れた。

経済的な理由での退去増加

6月25日の「経済観察網」報道によると、50代の陳建亮さんは、母親の介護費用を負担できず、3年間老人ホームに入所していた母親を家に連れ帰った。陳さんの母親は2021年に脳梗塞を発症し、自力での生活が困難となっていたため、毎月2600元(約5万7千円)の費用で老人ホームに入所していた。

陳さんと妹が費用を折半して支払っていたが、陳さんは今年上半期、仕事を見つけることができず、老人ホームの費用を支払えなくなった。

報道によれば、今年に入ってから、経済的な理由で老人ホームを退去するケースが増えている。特に農村地域ではその傾向が顕著である。

南方の都市で複数の農村老人ホームを運営する張桐さんによれば、例年、経済的な理由や死亡による退去率は約15%であったが、今年上半期には25%に達している。

農村老人ホームの経営難

農村や郷鎮の老人ホームは、主に周辺の高齢者を対象とした普及型であり、月額2千元(約4万4千円)から5千元(約11万円)の費用がかかる。

張桐さんが運営する老人ホームは、普及型の中でも中高級に位置し、入所者の平均年齢は約80歳で、多くの高齢者が自立生活が困難な状態である。半失能高齢者の月費用は約3千元(6万6千円)である。

張さんは、「老人の養老費用は通常、2、3人の息子や娘が共同で負担しており、各自が毎月1千元から1500元を支払っている。しかし、息子や娘たちは家庭の主要な労働力であり、自分の子供と親の両方を養わなければならない」と語った。

また、「家族の収入が月3千元以下の場合、高齢者を家に連れ帰るケースが多い」と述べている。

老人ホームの空室率の増加

農村老人ホームの退去率の増加により、多くの施設が収益の確保に苦しんでいる。老人ホームの価格は既に非常に競争的であり、これ以上の入居率の向上は見込めない。また、農民の収入に対して普及型老人ホームの費用は高額であり、多くの農民にとって負担が大きい。

中国農村経済形勢分析と予測報告によれば、政府による農民への平均養老金は月額204.7元(約4519円)であり、老人ホームの費用に対して非常に少額である。経済的な理由から、多くの農村高齢者は老人ホームに入所することが難しく、施設の空室率が高くなっている。

中国南方三省で老人ホームを管理する宋濤さんは、「経済的な能力や理念の限界により、農村の高齢者はやむを得ない場合を除いて老人ホームには入所しない。多くの高齢者は前日まで山で働き、翌日に突然寝たきりになることもある。多くの農村老人ホームは空室率が高い」と語る。さん

陳さんは、「我々の世代や親の世代は、自分たちの力で老人ホームに入ることは難しい。一人っ子政策の影響で、将来的には養老の負担がさらに大きくなる」と述べている。

中国第七次人口普査によれば、中国農村の60歳以上の高齢者は約1億2100万人、65歳以上の高齢者は約9033万人であり、中国農村は既に中度の高齢化社会に突入している。

 

李韻
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