米NIHの16億ドルの新型コロナ後遺症影響の研究が目標未達(下)

2024/06/18
更新: 2024/06/18

RECOVERは臨床試験を開始していない

RECOVER計画 のウェブサイトには、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が観察研究の計画(完全な研究プロトコル:full research protocols)を完了したと記載されているが、臨床試験プロトコルは5つの臨床試験のうち、最終的な試験計画が決定されたのは2つにとどまり、臨床試験の募集は完了していない。

呼吸器科医であり集中治療の専門医でもあるミシェル・ハーキンス博士は大紀元に「物事の進み具合が遅いことに皆が不満を抱いていることは分かっているが、良い科学には時間がかかる」と語った。

ハーキンス医師は、臨床試験5件のうち3件に関わっていると語った。

「稼働開始までに思ったより時間がかかってしまったが、いくつかの臨床試験が進行中だ」と述べた。

「VITALの研究では、Paxlovid(パキロビッド)[1]の効果を研究しており、3分の2の登録者が参加している。メキシコ大学で光療法や他の治療法を研究する睡眠研究を行っており、観察コホートから一部の患者を臨床試験に移行する予定である」

[1] ファイザー社が開発したCOVID-19治療薬

2024年6月7日に発表された『JAMA Internal Medicine』のランダム化臨床試験において、スタンフォード大学の研究者たちは、15日間のPaxlovid(パキロビッド)療法が全体的に安全であるものの、コロナ後遺症を患う155人(ほとんどがワクチン接種済み)の参加者に対して顕著な効果を示さなかったことを発見した。

この臨床試験はファイザー社の資金提供を受けており、RECOVER計画の感染後疾病専門家リストに名を連ねる専門家が共同執筆している。

ハーキンス博士は「ENERGIZE研究では、研究者たちは経頭蓋直流電気刺激装置を使って神経成分を評価する予定だ。別の研究ではPOTS(体位性頻脈症候群)とIVIG(静脈注射免疫グロブリン)についても調査する」と付け加えた。

資金の大半が、コロナ後遺症患者の潜在的な治療法を提供できる臨床試験ではなく、データ収集と観察研究に使われているという懸念に対し、ハーキンス博士は、観​​察コホートは具体的な答えを提供するものではないが、科学者や研究者が学ぶことができる「バイオバンキング標本(生物学的サンプル)」を提供するものであり、これは小児コホートにとって特に重要であると述べた。

臨床試験の開始にこれほど長い時間がかかった理由について、ハーキンス博士は、参加者が試験の参加資格を満たしているかどうかを確認するためにスクリーニングを受ける必要があるため、登録手続きに時間がかかった可能性があると述べた。

ハーキンス博士はまた、「ロングCOVIDは非常に複雑で、多くの臓器系に影響を与える。そのため、ロングCOVIDを治すための一つの薬を見つけることはできない。そのため、特定の症状を持つ人々がどのように特定の治療に反応するかを理解しようとしている。ワクチンのように簡単であってほしいと願うが、信じてほしい。時間がかかっており、我々全員にとってもどかしいところだ。もっと早く進むことを願っているが、少しずつ進展している」と説明した。

同時に、ハーキンス博士は、スピードアップのためにできることがいくつかあると述べた。例えば、低用量ナルトレキソンなど、一部の患者や医師がすでにある程度の成功を収めている治療法をテストするために、より迅速な臨床試験を実施できる可能性がある。

「コロナ時にあったような迅速な臨床試験ネットワークを設立できるか、少し手続きが簡略化され、迅速に進めることができるか。別の部門が迅速な臨床試験を調査する必要がある」と述べた。

ハーキンス博士は、自分が関わる臨床試験の登録が完了に近づいているが、試験を実施し、120日後に参加者のフォローアップを行う必要があると述べた。

「いくつかの臨床試験については、今後数か月内にいくつかの答えが得られるだろうと考えている。そして願わくば、それが原因究明の答えとなり、患者を助ける方法がわかるようになる。それまでの間、観察研究は依然として私たちが活用できる有益な情報を与えてくれる」

同氏は「しかし、やらなければならないことすべてをより迅速にこなすことができると私は考えている。パンデミックや健康危機に備えてこうした仕組みを整えておく必要があるため、物事を前進させるために、これを迅速に進め、真剣に研究する中央機関を設ける必要があるかもしれない」と付け加えた。

ハーキンス博士は、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員が「ムーンショット法案」に取り組んでいることを明らかにした。

この法案は、NIHでロングCOVIDの研究プログラムを設立するために、今後10年間で100億ドルの資金提供を行うものである。この資金は、RECOVER試験の継続に向けた最近の資金に追加され、プロセスを加速させる可能性があると述べた。

政治学の背景を持つ弁護士兼調査ジャーナリスト。栄養学と運動科学の追加認定を取得した伝統的な自然療法医でもある。