極少数のエリートに支配される世界政府は実現するのか?

2024/05/18
更新: 2024/05/18

まあ、少なくとも「世界政府」にとっては一つの後退だろう。

イーロン・マスク氏は、オーストラリアのシドニーで起きた襲撃事件を巡り、豪政府のインターネット監視機関「電子安全委員会」がX(旧Twitter)に投稿された映像を削除するよう要求したことに反発し、「アルバニージー首相は地球全体の管轄権を持つと考えているのだろうか」を批判した。

オーストラリアの裁判所は、電子安全委に対し、「 一国が世界に検閲を課すことはできない。Xは、国内法には従わなければならないが、世界法には従わない」とマスク氏の発言を擁護した。

これは本当に深刻な問題を提起している。つまり、世界を牛耳る政府権力はどれほどの脅威なのだろうか?

夢見がちで、おっちょこちょいで、時に恐ろしい知識人たちは、何世紀にもわたって世界政府を夢見てきた。もしあなたが十分に裕福で賢いなら、その考えは永遠の誘惑のようだ。擁護者のリストには、アルベルト・アインシュタイン、アイザック・アシモフ、ウォルター・クロンカイト、バックミンスター・フラーが名を連ねている。

多くの場合、戦争や不況といった大きな動乱の後、あるいは私たちが経験したようなパンデミックの時期には、彼らの「夢」が実現する可能性が高まる。グローバルな政府権力の国境を越えたテストケースとしての「偽情報」を利用することは、国家管理を無視して世界管理を優先する目的が背後にある。

世界政府は、エリート階級が時代を問わず追及してきた。歴史上、たとえば第一次世界大戦後、ウッドロー・ウィルソン米国第28代大統領の働きかけにより、国際連合の前身である国際連盟が創設された。国際連合と国際連盟とも、エリートが本当に望んでいるもの、すなわち拘束力のある世界国家を実現するために必要な構成要素であった。

これは陰謀論ではない。彼らが言ったことであり、彼らが望んだことだ。

1919年、SF作家のH.G.ウェルズ(ハーバート・ジョージ・ウェルズ)は国際連盟の構想に興奮し、

人類の発生から現代に至るまでの世界史を大々的に再解釈した。それが『歴史の輪郭』だ。

この著作の目的は、前世紀に流行したホイッグ史観を覆すことであった。ホイッグ史観では、歴史において強大な国家から遠ざかり、個人の自由がますます拡大するようになると捉えている。ウェルズは、民衆の権力はますます矮小化し、独裁者や計画者の権力が強大化することになるというナラティブを構想した。彼の目的は、まさにこれを擁護することにあった。

本が手ごろな値段で手に入るようになり、国民に普遍的な教育を求める熱い情熱があったため、本に対する欲望が旺盛だった当時に『歴史の輪郭』は大ベストセラーとなった。彼の著書は、歴史的に貴重な記述もあるが、ただ奇妙なものであった。彼は、国家的野心、自由企業、伝統、憲法を押しつぶしながら、すべての経済、情報の流れ、移民パターン、統治システムを計画する、最も賢い人々からなる極少数のエリートによって支配される未来の世界政府を構想していた。

彼らの夢は現在叶っていないが、世界政府実現への努力は決して止むことはなかった。第二次世界大戦後にも同様の取り組みが行われたが、国連はその一つに過ぎない。1944年にブレトン=ウッズ体制(第二次大戦後に米国を中心に作られた、為替相場安定のメカニズム)で打ち出された合意では、世界銀行と国際通貨基金(IMF)からなる国際金融体制が成立し、新しい世界通貨制度とともに世界的な計画機関の基礎となるとみなされた。

しかし、どれもうまくいかなかった。IMFと世界銀行は、結局世界政府のための財政基盤になっているとは言えない。国連は、今では機能不全で、市民からの失望の声があまた出ている。貿易をグローバルに管理しようとする努力は、世界貿易機関(WTO)の設立によってようやく実を結んだが、その機関はほぼ無用で、過去5年間に起こった自由貿易の後退を止めることはできなかった。今日、その存在を本当に恐れる国はない。

ヨーロッパを統一しようとする動きは、貿易や旅行に関する協力を促し、経済協力を可能にする自由主義的な動きと称し、推進されたが、それは宣伝文句に過ぎなかった。欧州連合(EU)の実態は、欧州の交差点・ブリュッセルに意地のあくどい官僚機構を創設し、各国の主権を無効にして、歴史的に前例のないヨーロッパの新しい中央国家に恭順することを強要する組織で、地域全体の政府計画の実験だったわけだ。

イギリスはEUに常に消極的な態度を取る加盟国だったが、最悪の事態が現実となったとき、国民はブレグジットに同意した。ボリス・ジョンソンが離脱させた。これは、世界中のエリートたちをパニックに陥れた政治運動だった。数十年にわたる計画が煙に巻かれるのを目の当たりにしたのだから。

COVID-19のパンデミックに対する各国一律の対策をいかに認識するのかにいたっては、それは世界政府の実験であり、エリートたちが望めば世界規模の連携が可能であることを地球全体に発信しているのである。

どの国でも、タイミングやスローガン、対応は似通っていた。ソーシャルディスタンスやマスク、ホームステイ、PCR検査などだ。

特に、呼吸器感染症の蔓延の仕方は北半球と南半球とでは大きく異なると知っていたにもかかわらず、感染が同時多発的だったことを考えると、不気味極まりない。ニューヨークで発生しても、シドニーで発生することはない。

エリートらは誰も言わないのだが、各国のコロナ対応は「常識的な公衆衛生対策」ではなく、むしろ人類史上前例のない実験に等しいということだ。このような馬鹿げたことが実施されたことは、これまでどこにもなかった。クレイジーだったが、すべての裏にはメッセージがあった。つまり、「我々は政府であり、世界を支配している」

その余波として、世界保健機関(WHO)は世界各国を煽り、WHOが要求すればいつでも同じ措置を実施することに同意するよう、主権を放棄させるように仕向けた。彼らはこのパンデミック条約の署名を求めて地球上を駆け巡っている。当初はうまくいくように思えた。しかし、そう簡単ではないことが判明した。

ブラウンストーン研究所の「REPPARE」というグループは、パンデミック条約とIHR改定案を注意深く調べ始め、構想全体が誤った前提、ねじれた考え方、財政浪費の上に成り立っていることを見抜いた。世界中の政府が、国家主権・統制を放棄するという申し出を真っ向から拒否している。世界保健機関(WHO)の企図はどうやら難航しているようだ。2017年にトランプ前大統領が提案したように、WHOから離脱する動きさえ見え始めている。

しかしながら、現在、新興の世界政府が機能していることは間違いない。メディア、テクノロジー、インターネットの運営に大きく影響力を行使している。世界のマネーフローと資産価格を管理しているのだ。その狙いは、国家主権を単なるブランド名に落とし、いかなる政策結果においても有権者の意思が優先されるという民主主義の前提を破棄することだ。公共部門と民間部門の間を泳ぎ、財団や非政府組織を通じて活動する、資金力のある大規模なエリートで構成されている。民主主義のプロセスからはまったく切り離されている。

「国際経済関係の分野で、このような計画が実現することほど悲惨なことはない」と1944年にフリードリヒ・ハイエク(20世紀を代表する自由主義の思想家)の師匠で、オーストリア学派のルートヴィヒ・フォン・ミーゼス(生涯を通して、反社会主義の立場を貫いた経済学者)は書いている。「搾取する側と搾取される側、生産量を制限して独占価格を課す側と独占価格を支払わざるを得ない側だ。それは解決不可能な利害対立を引き起こし、必然的に新たな戦争を引き起こすだろう」

このままでは、平和ではなく戦争、繁栄ではなく貧困、健康ではなく病気、より良い環境ではなくより悪い環境です。それは世界にとって牢獄だ。世界の人々は、何が起きているのかを注視し、機会があればいつでもそれを拒否する必要がある。

このため、検閲のような世界的な政府の押しつけが後退するときは、いつでも加勢しなければならない。単一政府がすべての国を支配することは、文明を破滅させるだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。
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