富士河口湖「富士山コンビニ」、マナー違反で閉鎖危機…海外メディア「日本のおもてなしの限界試した」

2024/05/08
更新: 2024/05/09

山梨県富士河口湖町にあるコンビニエンスストアから望む富士山が、その屋根越しに浮かび上がる絶景が「フォトジェニック(写真映えのする)」なスポットとしてSNSで大人気だ。しかし、国内外から観光客が殺到して、迷惑行為や不法侵入など問題が発生。地元自治体は景観を遮断する壁の設置を決定する事態となった。海外メディアも「日本のおもてなしの限界が試された事案」として取りあげている。

同スポット近くに立地する井ビシ歯科医院は、観光振興に協力する姿勢から当初は私有地の一部での撮影を許可していたが、訪れる外国人観光客のマナー違反が頻発。具体的には、道路への危険な飛び出しや私有地内への無断侵入、ゴミの放置、路上や敷地内での喫煙などだ。

医院の駐車場には患者用スペースを示す表示があるにも関わらず、観光客の違法駐車が後を絶たず、診療に支障をきたすことも。さらには建物屋上への不法侵入まで発生した。外国人観光客に日本語で注意をしても伝わらないことが多く、警察に通報しても抜本的な解決にはならないという。

富士山を望むコンビニエンスストアは、フォトジェニック(写真映えする)なスポットとして国内外の観光客が殺到する(Getty Images)

医院関係者は「我々も観光振興に協力したいと考えているが、地域住民の生活や医院の運営に重大な支障をきたす事態には断固として対処せざるを得ない」と話す。富士河口湖町に対し、私有地を含めた景観の遮蔽を要請。町は5月中旬までに、高さ2.5メートル、長さ20メートルに及ぶ黒色の壁を設置する計画だ。

マナー違反はさらに深刻化しているという。違法駐車車両のナンバープレートを見ると、県外からの観光客が大半を占める。彼らに移動を求めると、逆に罵声を浴びせられるケースも珍しくない。タバコの投げ捨ても日常茶飯事だ。警備員を配置し、英語や中国語で注意喚起しているが、観光客の入れ替わりが激しく、なかなか改善しないのが実情だ。

こうした措置に海外メディアも注目する。「富士河口湖町の事例は、まさに日本のおもてなしが試される典型例と言える」(チャンネルニュースアジア)、「マナーの悪い観光客に憤慨する(富士河口湖町)当局は景色をブロック」(BBC)などと伝えた。

米ロサンゼルス・タイムズは米国からの観光客の声をひろう。「観光客で溢れる日本を見てきた。ここで生活し、働く人々が何らかの対策を取りたいと考えるのもわかる気がする」

一方、急増する観光需要を背景に、ホテルの客室価格は昨年比20%上昇。一部の外国人ビジネス客からは、宿泊施設の確保に苦労するとの声も聞かれる。サービス産業の人手不足が深刻化するなか、ホテル側は比較的容易に価格転嫁に踏み切れている。観光需要の恩恵を受けにくい他産業からは、賃上げの遅れに対する不満も根強い。

世界文化遺産である富士山では、環境破壊や事故の多発を受け、山梨・静岡両県が入山規制や入山料の徴収に乗り出すなど、各地で「オーバーツーリズム」が深刻化。政府は2030年に訪日外国人旅行者数を6千万人に増やす目標を掲げているが、マナー啓発や受け入れ態勢の整備は急務の課題となっている。富士山における1千円の入山税導入など、より踏み込んだ対策の検討も求められそうだ。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。