ポップソングからみる中国人女性の心理…「恋愛」より「自由」求める傾向

2024/04/16
更新: 2024/04/16

中国の女性人気アーティストが歌う歌詞に、近年劇的な変化がみられる。ロマンティックな愛に焦点を当てることが少なくなり、個人の自由と充実感に重点を置くようになってきているという。香港科技大学の研究者が指摘した。

王文博助教授率いる研究チームは、中国語圏の若い女性の間で何が共感を呼んでいるかを理解するために行われた。人工知能のChatGPTを用いて歌詞を分析し、その変化を追跡。1990年代から現在までの人気曲の歌詞を対象に、テーマや感情、価値観などを抽出し、比較分析を行った。

その結果、中国の女性、特に若者世代の間で「自己実現」や「自立」「自由」といった価値観を重視するようになってきていることがわかった。

たとえば、1990年代のヒット曲「雨蝶」では、「あなたに不満がなければ、私に後悔はない…愛されている感覚に酔いしれる」と歌われる典型的なラブソングだ。同時代のヒット曲「囚鳥」では、歌手は自分を「あなたに閉じ込められた鳥」と表現していた。

しかし、今世代の女性歌手は、「自分を信じて」と訴えている。香港の女性歌手、鄧紫棋(タン・チーケイ)による『差不多小姐』では、最新の広告や美容トレンドに盲目的に従うのではなく、「あなたらしさ」、つまり個性を探求し尊重すべきだと唄われている。

袁泉(ユアン・チュアン)が歌う今年の流行歌『今天、我們』では、「今日はどこにも行かない… 幸せになる方法を知っている人は まだ知らぬ美しさを受け入れられる」、「今日は自分を責めない 自分に休息を与えよう」と歌っている。

この研究は、10年前と比べて結婚や出産をする可能性がはるかに低くなった中国の若者の環境変化に着目している。 経済的困窮、競争的な文化、親からのキャリア要求、結婚、住宅ローン、出産や養育など、従来からある人生の節目を避ける傾向が強まっているという。

恋愛の歌は少なくなっている。現代の人々は恋愛を望まず、お金を稼ぎ、キャリアを築くことを望んでいる」という。「今日の女性は、自由、独立、合理性、勇気の理想を追求する傾向がある」と研究著者の王文博氏は述べている。

このほか、研究チームは、各時代の人気テレビドラマの女性キャラクターについても調査を行った。1990年代に人気だった女性キャラクターは「親孝行」や「美徳」といった言葉で表現されることが多かったが、近年は「強い」「自信がある」といった言葉で表現される傾向を指摘。これらの分析結果から、中国語圏の女性の価値観の変化が浮き彫りとなった。

大紀元日本 STAFF