中国、モルディブに1500トンのチベット産氷河水を寄贈 影響力拡大を画策

2024/04/03
更新: 2024/04/03

モルディブ政府が3月26日に発表したところによると、モルディブは中国から1500トンのチベット産氷河水の寄贈を受けた。3月初旬には両国間で軍事援助協定が締結され、両国間の結びつきが強まる中での寄贈である。

専門家は、中国の寄贈は外交戦術であると同時に、島国の水需要市場を獲得しようとする試みだと指摘している。国内総生産の25%を観光業が占めるモルディブの真水の供給は不安定だ。島で利用可能な天然水資源は雨と地下水だけで深刻な状況だ。

モルディブのメディア「ザ・エディション」が3月27日に報じたところによると、中国共産党が任命したチベット自治区の厳金海主席は昨年、モルディブの首都マレでモハメド・ムイズ大統領と会談し、群島国に水を提供する意向を表明した。

その際、「氷河地域から調達した凍結水から生成される、非常に清浄で透明度が高く、ミネラルを豊富に含む水を寄贈することが検討された」と同メディアは伝えている。

ムイズ氏が1月に北京を訪問し、中国と20の協定を結んで以来、中国への傾斜を一段と強めている。中国によるモルディブへの水援助のニュースは、ソーシャルメディア上で議論され、水はムイズ氏の消費用ではないかとの憶測まで飛び交った。

しかし、「タイムズ・オブ・インディア」の報道によれば、モルディブの外相は声明でこうした疑惑を否定した。

「モルディブ政府は、水不足の際に島々を支援するためにこの水を利用することを決定した」と声明で述べている。

水と外交

モルディブの水不足は長年に渡って深刻化しており、低地である群島の海面上昇に関係している。モルディブの地下水の埋蔵量はほとんど枯渇しており、一般消費の水は海水淡水化施設に頼っている。

インド在住の地球科学者で作家のK・シッダールタ氏はエポックタイムズに対し、中国共産党はモルディブへの水援助を、チベットや新疆ウイグル自治区での抑圧的な政策の支持を得るための外交戦術として利用していると指摘した。

「中国(共産党)は倫理、法律、コンセンサス、環境を完全に無視しており、これは中国のアイデンティティを象徴している」

人口約51万8千人のイスラム教徒が大多数を占めるモルディブは、最近、中国とその隣国であるインドとの綱引きの舞台となっている。モルディブへの前回の緊急水支援は、2014年に中国とインドの両国が行った。当時、マレにある淡水化施設が火災に見舞われ、モルディブは水不足が深刻化していた。

しかし、今回の援助以前にそのような事故は報告されていない。それどころか、チベットからの海上コンテナ90個分の水輸送は、単なる贈り物と言える。モルディブ外務省の声明によれば、「チベット自治区の主席は、11月にモルディブを公式訪問した際、1500トンの飲料水を寄贈したいと表明した」という。

モルディブと中国の関係がますます緊密化し、両国間で軍事援助協定が締結された直後の出来事であったため、この寄贈は多くの議論を呼んだ。

さらに、軍事援助協定は、インド軍がムイズ氏の執拗な撤去要求に従って群島から撤退した直後の出来事であった。

シッダールタ氏によれば、中国はモルディブに対して複数の計画を練っていると分析する。

「インド洋におけるインドへの防波堤としてモルディブを支配すること。モルディブが(中国共産党による)ウイグルへの残虐行為に対して一言も発しないようにすること。今後数年で増えるであろうほかの残虐行為に対して、後ろ盾となってもらうこと」だと、チベット人に対する迫害とチベットの資源の搾取について言及した。

プレミアム・ボトル入り飲料水の市場を勝ち取る

あるチベット出身の専門家は、中国がモルディブに「透明度が高く、ミネラルの豊富な水」を寄贈するのは、チベットを主な拠点とする中国のミネラルウォーター会社の市場を創出する手段でもあると考えている。モルディブは人口だけでなく、高級観光産業のためにも質の高い水を必要としている。

チベット政策研究所の環境・開発デスクのデチェン・パルモ研究員は、エポックタイムズに、チベット自治区は2014年に「チベットの河川を世界と共有する」というイニシアチブを開始し、水のボトル製造業を拡大するために16の大手企業と契約を結んだと語った。

チベットを拠点とする中国のボトルウォーター産業に関する報道は、チベット自治区政府が10年計画 である「チベット自治区天然飲料水産業発展計画」を発表した2015年10月以降に出始めた。

中国国営通信の新華社によると、この計画は、「高原の生物資源に頼り、高原の特産飲料の開発に注力する」一方で、「中高級者用の消費水」を開発することを目的としている。

この計画では、2020年までに生産量500万トンを目指している。チベットの越境河川を研究しているパルモ氏によれば、モルディブに寄贈された水の水源に関する具体的な情報はないという。

「しかし、モルディブ外務省はチベットの高価な高級ブランド水について話していた。つまり5100の水ボトルのことだと推測する」

パルモ氏は、チベット・ウォーター・リソース社が製造しているプレミアムミネラルウォーターブランド、「チベット5100」のことを指している。同社は、以前はチベット5100ウォーター・リソーシズ・ホールディングス・リミテッドとして知られ、香港証券取引所に上場している。

チベットの山からの湧き水の寄贈は、チベット市場を拡大するための戦略の可能性がある、とパルモ氏は指摘した。

インドと南アジアの地政学を専門とする記者。不安定なインド・パキスタン国境から報道を行なっており、インドの主流メディアに約10年にわたり寄稿してきた。主要な関心分野は地域に立脚したメディア、持続可能な開発、リーダーシップ。扱う問題は多岐にわたる。